2012年6月11日 (月)

東日本大震災の不安に付け込んだリフォーム詐欺(さいたま地裁)

 昨年3月11日、日本だけでなく世界を震撼させた大震災の爪痕は、人々の不安感に付け込む犯罪という形で、まだまだ尾を引いているようです。

 今日は、埼玉県南部一帯で発生し、リフォーム詐欺を行った男2人組に関する裁き(審理)が行われました。
 過去にリフォーム工事を行ったことがあるご年配家族が住む一軒家リストを握っている主犯格と、実際に各家庭へ「飛び込み営業」をかけて、面と向かって騙しをする実行犯との2人組。
 すでに懲役の実刑が確定し、主犯格に先立って服役しちゃっている実行犯(子分?)の側が、証人として呼ばれ、2時間以上にわたるノンストップの尋問が行われました。

 ご年配の方は我が家の床下まで潜れないことを良いことに、「この間の地震で、床下の配水管が壊れちゃってますよ」「このままでは水漏れがひどくて、家も傾いてしまうかもしれません」などと、ありもしない適当なことを説明しつつ……
 
 
 「修繕する場合、本来の相場は50万ぐらいなのですが……」と、勿体をつけて、主犯格に電話で連絡を取り「お客様は特別に30万で修理いたします」とサービスしたふりをし、床下でリフォームを行ったふりをして時間をつぶし、お金を騙し取るという手口です。

 未遂に終わったケースを含めて、50軒以上のお宅に乗り込み、約15件から計300万円近くをせしめたといいます。
 
 この件で被害に遭ったお年寄りの中には「床下で傷みが進んでいるという箇所を、写真に撮って見せてほしい」と求めた方もいたようです。かなりいいところまで彼らを追い詰めたわけですが、最終的には30万円程度を騙し取られてしまったようです。……惜しい。
 
 とはいえ、主犯格と実行犯(親分と子分)は、拘置所の中で知り合った当時の「先輩・後輩」の関係を引きずり、事実上の力の差が生じていたようで、分け前はおよそ「9:1」。
 
 それにしても、差が大きすぎるため、弁護人や検察官から実情を相当突っ込まれていました。たとえ親分の「リスト」に基づいて訪問をかけているとはいえ、子分は自分の手足や口を動かしているわけですから、対等でもいいんじゃないか? というわけです。
 でも、子分である実行犯は、出所直後で職を探している状況であり、ある程度の「収入」が得られただけでも満足で、その分け前にいちおう納得していた模様でした。
 
 
 再来週の次回、主犯格の被告人質問が行われます。 東日本大震災、まだまだ水面下で尾を引いています。

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2010年10月 1日 (金)

JASRACは独占禁止法違反? 音楽著作権の管理をめぐる闘い イーライセンス社長とNHK職員が証言

 

【まずは、おさらい】

 
2009年7月27日(月) 14:00 
中央合同庁舎6号館B棟19階
公正取引委員会審判廷

 JASRACの独占禁止法違反(排除命令)事件
 <第1回審判>

  

JASRACの排除命令に対する公取委審判が開始、JASRACが意見陳述 (日経WinPCオンライン)


 公取委は、JASRACがテレビ・ラジオなどの放送局と締結し運用している包括許諾契約について、イーライセンスなどほかの音楽著作権管理事業者と JASRACとのシェア変動を反映していないなど、使用料の算定方式に問題があると判断、独占禁止法に違反するとして排除措置命令を発した。

 

 

 まずは、報道陣による3分間の写真撮影から始まった。
 廷吏から「30秒前です」との声がかかると同時に、みんな撮影をやめ、カメラマンらは審判廷をあとにした。

 JASRACサイドから提出された準備書面の内容につき、審判長から、「『JASRACのみが音楽著作権を管理している、というのは正確性に欠ける』という部分が、よくわからないので、具体的な内容について釈明を求めたいのですが」と、確認する言葉が出た。

 JASRACサイドからは「ほかに『アジア著作権協会もある』という意味」との回答がなされた。

 また、JASRACから、公取委審査官サイドへの求釈明(確認事項)がいくつかあるようだが、審判官サイドからは、「あと2カ月ぐらいほしい」との回答。

 そして、JASRACサイドの代理人(弁護士)による、意見陳述が行われた。

 

 放送事業者が制作する番組の中に使われる音楽につき著作権使用料を得る事業を独占的に行っているのは、ほかの団体による関与を排除するものとして、独占禁止法違反に問うものであるが、不当である。

 JASRACは、公益的観点から、使用料の変更がある場合は文化庁への届出が必要。

 民放連ほか、各放送事業者との協議で、音楽の使用状況や、諸外国での状況など、すべての事情を基礎として、使用料の額につき合意に至ったもの。

 自由な交渉を前提に、事情変更の原則の適用がある場面など、ごく例外的な場面を除いては、使用料の額に事後的な変更はなされない。

 包括徴収というシステムについては、多くの国で採用されており、音楽使用の数量を詳細に把握するのが事実上困難な状況があることから、合理的な方法として実施されている。

 本排除措置命令は、こうしたグローバルスタンダードの流れを否定するものである。

 JASRACが、不当な契約によって使用料を吊り上げている事実もない。私的自治・契約自由に基づく正当な交渉の結果、決められた使用料に対する介入であり、知的財産の適切な運用に対する脅威でもある。

 本件命令は「木を見て森を見ない」結果として出されたとしか言いようがない。 イーライセンスの管理楽曲を使うかどうかは、各放送事業者の判断に基づく。

 最後に、本件命令主文の違法性について。

 音楽著作物が放送において使用される頻度の算定は、JASRACのみでは不可能で、放送事業者の協力がないとできないし、具体的にどのような協力があれば算定が可能か本命令では明かされていない。 命令の名宛人以外の関与が必要な措置について、名宛人のみに責任を負わせるのは不当である。

 


 

2009年9月14日(月) 14:00 

公取委第2回審判

 

 公取委側 : すでに提出済みの陳述書を、そのとおり陳述する旨を宣言。

 JASRAC側 : 審判官側の求釈明をふまえて、次回提出する。

 審判長 「その認否も踏まえて、全体的な主張をするということですか」

 J 「はい。先方から十分な回答を得られていないということもあり、主張とともに別の求釈明を出す予定もあります」

 公取委側「特にこれ以上、書面で反論することもない」

 審判長 「採否は留保させていただきます」

 14:08に終了

 


 

 以降の期日も、法技術的なやりとりが続く。

 書面を見ることができない傍聴人の私には、やりとりの具体的な内容がさっぱりわからないため、しばらく審判廷から足が遠のくようになっていた。

 しかし、1年ぶりに……。

 



2010年9月30日(木)13時30分

公正取引委員会・審判廷 (第10回審判)

 

 双方から提出された書証に関する同意の手続きに続いて、

 JASRAC側の代理人 「審判長からの文章提出命令に対して、釈明権を行使したい(説明を求めたい)。イーライセンスの放送分野での著作権管理で、放送局と交わしたはずの覚え書きの存在すら『知らない』というのが驚き。公取委も、JASRACが悪者だと決めつけての審査をしているのではないか」

 そして、イーライセンス社(音楽著作権管理の新規参入会社)代表取締役、三野明洋氏が参考人として証言台に。

 

 CD会社やミュージシャンの音楽著作権を管理しているJASRACが、テレビやラジオなどの放送で音楽を使用させる際、使用料を個別徴収(ある音楽を1回使うごとの徴収)でなく、包括徴収(月単位や年単位などで定額徴収する)をしているのは、

  ・ どの音楽がどれだけかけられたのか把握する必要がなく、著作権使用料の分配が不明瞭である。

  ・ CD発売に際してのプロモーション(タイアップ)に不便である。 [※CMやテーマソングなどのタイアップでは、著作権使用料が免除となる契約となっているが、使用料を包括徴収しているため、特に2つ同時(3つ同時)タイアップなどの場合にJASRACは対応できておらず、免除されるべき額が免除されていない]

 ……という2つの点で問題を有すると考えると、最初に証言の方針を示した。


 

 【どんな事案なのかをザックリと】

 イーライセンスが放送分野に進出したのは、2006年10月。 文化庁から2月に認可をもらったので、4月から始めたかったが、結局は10月にずれ込んだ。

 9月28日、大手音楽出版会社エイベックスとの協議で、67曲の管理委託契約が成立した。倖田來未、大塚愛、hitomiなど、ビッグアーティストの楽曲の管理を任されることになった。
 もともとは60曲のリストを作成し、各放送局にも配っていたが、5曲を撤回して12曲を追加し、結局は67曲となった。

 その翌月は、大塚愛の新曲(当時)『恋愛写真』の発売が控えており、エイベックスにとってもプロモーションに力を入れる時期で、各テレビ局やラジオ局に楽曲使用を申し入れた。

 後日、「各局で『恋愛写真』の放送使用が自粛されている」との報告を受けて、驚いた。私は首都圏と関西圏の各放送局に挨拶に回ったが、

 各ラジオ局からは「イーライセンスの管理楽曲は使えない」「もともとのJASRACの定額使用料に加えての追加負担になるのが痛い」という説明を受けた。

 埼玉のFM局・NACK5では、大塚愛さんの番組ゲスト出演の予定がキャンセルされるという情報も入ったため、その局へも出向いて担当者と話した。キャンセルはなんとかして食い止めたかった。

 そこで、エイベックス側から、「10月から12月までの3カ月間は、『恋愛写真』の楽曲を無料で使ってもらう」という打開策の提案を受けて、10月中旬以降は無料使用とすることにした。

 そして、エイベックス側から「プロモーションに大きなマイナスとなった」として、契約解除が申し入れられた。著作権管理事業社としての責任を果たせていないと思ったが、仕方ないとも思った。

 現在は、インディーズ系の楽曲を中心に3000曲を管理しているが、放送で流されることが大いに期待できる大手とは契約を結べていない。インディーズ系の楽曲は、放送されるチャンスが少なく、年に20~30万円ほどの使用料収益しかない状況。

 
 

■ JASRAC代理人からの反対尋問 (抜粋)

――――― 放送分野への進出は、どの程度の時間をかけて決断しましたか。

 参考人 「長い間、皆さまの意見を聞き、事前に準備をしてきました」

――――― その程度の答えしかできませんか。

 参考人 「民放連との協議で、各局に『使用曲目報告書』を提出していただくことにしましたが、これは全曲報告(放送された楽曲を全部知らせてもらうこと)を前提としたものです。全曲報告は難しいという意見もありました」

――――― どこから、そういう意見が出ましたか。

 参考人 「特にAMラジオ局ですね。全曲報告のシステム化が遅れているようでした。当社としても、自動的に放送された楽曲を把握するシステムを構築するのは発展途上でした」

――――― 民放連からは、包括許諾・包括徴収を受け入れてもらえましたが、NHKは拒否し、包括許諾・個別徴収となりました。

 参考人 「はい」

――――― なぜ、包括を拒まれたのでしょうか。

 参考人 「覚えてません」

――――― NHK職員の供述調書によると「管理する楽曲も決まってないのに、イーライセンスと包括徴収の契約をするのは難しい。楽曲の数と比べて著しく過大な使用料を払わなければならなくなる」という話がありますが。

 参考人 「覚えてません。この場で考えられることは、まず、十分な楽曲を管理できる状態にするため、権利者からまず楽曲をお預かりするようにしなければならなかったということです」

――――― 民放連と9月中に調印できなかったのは、なぜですか。

 参考人 「調印を遅らせてほしいという申し入れがあったからです」

――――― ラジオについては、10月に入っても交渉が継続していたようですが。

 参考人 「その認識はありません」

――――― 合意書の7条には、「覚え書」の存在が書かれていますが、10月の時点でできていましたか。

 参考人 「10月31日よりは遅れたと思います」

――――― 実際には2007年2月ではないですか。

 参考人 「ハッキリ覚えてませんが、そこまでではないと思います」

――――― 『使用曲目報告書』については、統一のフォーマットを送ると、各局に知らせていたようですが、各放送局の供述では『フォーマットの提案はなかったし、問い合わせてもイーライセンスから返事は返ってこなかった』『(2006年)12月になっても暫定版を使っていた』という話が出てきますが。

 参考人 「そんなことはありません」

――――― あなたの供述調書には『フォーマットと契約書は同時に送った』とありますが、本当に同時に送ったのですか。

 参考人 「同時ではなかったかもしれません。添付はしてなかったです」

――――― 調書のこの部分は違うということで、撤回しますか。

 参考人 「はい」

――――― 静岡朝日放送の方の話では「民放連から『イーライセンスとの契約締結は各局の判断に任せる』と言われたが、イーライセンスからは何の働きかけもなかった」とあります。この局には行かなかったのですか。

 参考人 「行きませんでした」

――――― JASRAC独自の自動集計データベースによると、大塚愛の『恋愛写真』は、2006年10月から12月末まで、少なくとも729回、無料化を始めた10月17日までに限っても、少なくとも128回放送されています。『まったくかかっていない』という認識は間違いではないですか。

 参考人 「その数字については、確認していないので答えられません。

――――― これから確認すると、以前におっしゃってましたが、今でも確認してないですか。

 参考人 「まだです」

――――― 最初に各局に「未定」「予定」と書かれたタイトルも含む60曲リストを送付しておいて、10月末に67曲リストを送るというのは、ビジネスとして信頼できず、契約を躊躇するのも当然じゃないですか。

 

※ 要するに、JASRACの独占状態いかんとは関係なく、イーライセンスの経営判断がマズかったから上手くいかなかったのだ、との証言を引き出したい方針のようだった。

 


 

 4時からは、石井さんという、NHKの契約部門担当の方が、JASRAC側の参考人として出廷した。

 

■ 主尋問の要旨

・ イーライセンスが放送分野への進出するということで、最初にお会いした際、「単に放送で流すだけでなく、番組の海外販売、DVD化など、様々な展開もありうる」と、イーライセンスには説明した。

・ 使用料を包括でなく個別徴収の契約としたのは、イーライセンスの管理楽曲が、JASRACのそれと比べてレパートリーが圧倒的に少なく、包括でお支払いするほどではないと考えたから。

・ だが、使用料の点で、イーライセンスの管理楽曲の使用を避けていたことはない。番組制作サイドに確認したわけではないが、少なくとも私個人はそう把握していない。

・ JASRACに未登録の「ノーメンバー楽曲」と同様に、イーライセンスの管理楽曲も使用できるという認識であった。ノーメンバー楽曲とイーライセンス管理楽曲の数の差についてはわからないが、感覚的には、同数あるいはイーライセンスのほうが少ないか、といった感じ。

・ 全曲報告は、大変と言えば大変だが、放送局としては当然のことだと受け止めていた。用紙に記入するなり、電子的記録なり、何らかの方法で可能。JASRACのほうへも、全曲報告する方向でいた。

・ 2006年10月以降、JASRACに対し、使用料の包括徴収の見直しを要請したことがあるかどうかは記憶にない。

  ⇒ 「イーライセンスなど新規参入会社との関係で、追加負担がないようにしてほしい」とお願いしたと調書にあるが、審査官から『すると、こういうことになりますか』と聞かれて『はい』と答えたので、そう記録されたのだろう。

・ どういう場合に包括徴収を見直すべきか、難しいが、イーライセンスへの支払いがある程度の額に達し、さらには社会状況の変化などがあれば、見直されていいと思う。JASRACとの契約書の中にも「特段の事情がある場合」に内容を見直すと明記されているから。

  ⇒ NHK全体での決定事項ではないが、包括の見直しは、個人的にはまだ必要ないと思う。イーライセンスに対しては誠意を持って対応してきた。


 

■ 公取委審査官からの反対尋問

――――― 放送法7条では、NHKの目的として「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行い」とあり、32条では受信料の徴収も定められています。楽曲の使用についても公共性が確保されなければならないのではないですか。

 参考人 「質問の意味がわかりませんが」

――――― 公共放送として、どの会社・団体の楽曲を使用するか、公共性を考慮し無ければならないと思うのですが、いかがですか。

 参考人 「一般に電波は公共物だとされていますので、民間の放送局も同様に公共性を確保しなければならないと思います」

――――― 電波の公共性とともに、NHKは放送法に定められた公共性も確保し、偏らないということが大切ではないですか。

 参考人 「私は番組制作に携わっていないのでわかりませんが、イーライセンスの管理楽曲も公共性をもって使用していると認識しています」

――――― この楽曲は放送するが、この楽曲は放送しないと、管理団体によって区別することはないですか。

 参考人 「法律や公序良俗に反しない限りは、それ以上の判断はありません。放送基準については、私は責任を持って答えられる立場にはないですが、プロモーション目的で放送することはありえません。広告放送の禁止ということですので」

 

■ 審判官からの補充質問

――――― JASRACの包括徴収には、デメリットと同時にメリットもあると思うのですが、どちらが大きいでしょうか。

 参考人 「現時点では、メリットのほうが大きく上回っていると思います」

 

 

※ 次回の参考人審尋は、今月27日です。 公取委の審判は、もうすぐ廃止されるという話もありますし、今のうちに見ておこうと思います。

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2010年3月12日 (金)

はじめての特許審判傍聴

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 虎ノ門のJTビル!

 ひたすらタバコを売り続けて、これだけ立派な塔を建てられれば大したもんだと思うわけですが、ここには、なぜか特許庁の審判部が入っています。

 JTビルの斜向かいに、特許庁そのものの庁舎がありますけれども、どうやら知的財産がらみのトラブルに関しては、ここへ審理機能が移されているようです。

 審判廷は、16階にあるとのこと。

 今日は14時から、アースvs金鳥、因縁の対決。

 両者は、家庭用殺虫剤の国内シェアで、それぞれ1位と2位。 熾烈な争いです。

 

 特許の審判。 初めて覗きますよ。 ドキドキ。

 まぁ、まだ今年の確定申告を終えてないので、こんなところで傍聴取材なんてしとる場合じゃないのですが……。

 今週ようやく重い腰をあげて、会計ソフトに触り始め、これでもけっこう頑張ったので、残すは領収書(現金払いの経費)の入力作業のみ。

 明日じゅうには、ひととおり申告書類はできあがるだろうと目論んでおります。 だから、まぁいいかと。

 細かいお金の計算が大の苦手で、延ばしに延ばしたあげく、相変わらず最終日の3月15日(月)に申告せんとする、かなりガキっぽく恥ずかしい私ですが、

 それでも、いちおう申告するだけ、どこぞの脳科学者さんよかマシやろうと、自分をなぐさめています。

 

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 地震が来たら、ワイヤーが切れて2,3本落っこちてきそうな、不思議なオブジェをくぐって、ビル内部へGO。

 玄関脇には、「携帯灰皿博物館」なんてモノが……。

 珍ミュージアムに興味が湧きつつある昨今の私ですが、ここは単なる灰皿の売店のようにも見えます。

 エレベーターで、まったく人気のない16階に上がると、ドアの前に控える警備員に手荷物検査を求められました。

 もっとも、カバンのファスナーを開けて一瞥される程度ですが。

 さらに、受付の女性に氏名と所属と用件を尋ねられます。

 「審判の傍聴です」と答えると、傍聴人待合所というところで、いすに座って待機するように言われました。

 所属に関しては、正直に「フリーランスです」と答えても、何の問題もなく。

 ただ、開廷の5分前まで審判廷には入れてもらえません。 暇つぶしが大変。

 公正取引委員会の場合、建物に入る前に身分証明書の提示を求められるものの、いったん中に入ってしまえば、裁判所と同じく、けっこう自由に17階の審判廷へ出入りできます。

 なので、特許庁の対応には、いささかの戸惑いが。

 審判廷には傍聴席が24席。 傍聴席と審判の場を区切る柵は存在しません。

 ほかに傍聴人も10名ほどいましたが、私以外は全員、アースか金鳥の関係者のようです。

 午後2時、審判官の3名が入廷し、場にいた全員が起立・礼。

 まずは中央の審判長が名を名乗り、さらに陪席審判員と書記の女性の名前も紹介していました。 ここは、裁判所と大きく違う点。

 ただ、いったん審理に入ると、両者は何のことを話しているのやら、さっぱりわかりません。

 なぜなら肝心な内容は、双方が審判官に提出した書面にすべて書かれているからです。

 このへんのもどかしさ、モヤモヤ感は、民事裁判を傍聴しているときに似ています。

 

 1時間ぐらい、じっくりやりとりを聞きながら話を総合して、

 「アース側が、金鳥の特許の無効を申し立てていること」

 「金鳥の特許は、どうやら液体蚊取り器の装置の材質にあるらしいこと」

 ……が、ようやく、なんとなく読み取れました。

 殺虫有効成分が染みこまない材質のプラスチックを使って、装置のケースを作っているっぽい話をしているので、そのへんに金鳥の特許が認められたのでしょう。

 それに対して、アースは「そのプラスチックは既存のモノだし、大して試行錯誤せずに選んでいるだろう」と言いたげです。

 数年前には、アースが持っていた「電池で殺虫成分を空気中に拡散させる」という、電池式蚊取りの特許を、金鳥が侵害したとして訴訟になり、話題になりましたが、東京地裁は、金鳥の主張を一部認めて、最終的にアースの特許を無効だと判断しました。

 それを苦々しく思ったアースが、今度は金鳥の持つ特許を無効だと訴えて反撃に打って出たのかもしれません。

 

 ……今回は推測が多くて、歯切れが悪く、すみません。

 だって、手元に何の資料もないんですし。

 かえって、刑事裁判のやりとりの親切さ(?)が身に浸みました。

 帰りがけ、受付のお姉さんに「ありがとうございました」とお礼をいわれた私。

 なんとなく嬉しいけれども、不思議な感覚の残る特許審判傍聴でした。

 
 
 

( おしらせ )

 おかげさまで、新たな連載が決まりそうです。

 『会社法務A2Z』(第一法規)という月刊誌に書かせていただきます。

 「堅い話題の“箸休め”になりそうな内容」という方針は明確なのですが、具体的に何について書くかは、まだカッチリ固まっていません。 いずれ改めてお知らせしますね。

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2009年7月29日 (水)

「逆援助交際サイト」の利用料が欲しくて、ひったくり?

 きのう傍聴した裁判から。

 

 アルバイトで月25万円を得ていたという22歳の被告人は、たいしたもの。 仕事先でも一目置かれていたようです。

 しかし、女性の歩行者を狙って、ひったくりを4件犯し、窃盗の罪で裁判を受けるハメに。

 独身で、実家で両親と同居し、お金に困っているワケではないはずなのに、ナゼ?

 

 被告人は、携帯電話のネットサーフィン機能を使って、あるサイトを見つけた。

 それは、女性と交際すると、相手から援助(お金)がもらえるという「逆援交サイト」だ。

 被告人によると「数百万円ぐらいもらえると思っていた」そうである。

 しかし、逆援交サイトを介して、女性にメールを送るのはポイント制で、実質的には1通送るのに約500円かかるとのこと。

 そういうやりとりを何百通もやっているうちに、ひったくりで得たお金を数十万円つぎこんでいたという。

 

 裁判官は尋ねる。

 「そういうのってさ、おばさんじゃないの?」

 
 被告人は答える。

 「今思えば、架空の女性とメール交換していたと思います」

 
 裁判官 「彼女はいたの?」

 被告人 「当時はいませんでした」

 

 「当時は」と限定しておいて、まるで「今は彼女がいる」かのように見栄を張るところは、22歳の男子っぽい。

 

 裁判官 「彼女がほしかったの?」

 被告人 「というよりは、とりあえず、お金がほしかったです」

 裁判官 「そうなのか。 具体的に、いつ、どこで会いましょう、みたいな話に至ったことはあったの?」

 被告人 「……いえ」

 裁判官 「何百回もメールして、1回も女性と会えたことないの?」

 被告人 「ないです」

 裁判官 「ふつうは、たとえばワナでも1回会うことができて、それで引っかかって、お金を取られていくのかもしれないけれど、そういうこともないのに、信憑性がある話だと思ってたわけ?」

 被告人 「……そうですね」

 裁判官 「どうして、本当にお金がもらえると信じられたの?」

 被告人 「もしかしたら、という気持ちがありまして。 自分だけは幸運が起きるような気になりまして、続けてしまいました」

 裁判官 「そういうのって…… まぁ、キミがバカだということなんだろうけど」

 

 被告人を「バカ」呼ばわりした裁判官は、以前にもこちらでご紹介しましたけど、まさか東京にもいらっしゃるとは!

 ただ、こうした一問一答の流れからすると、文脈上「バカ」という言葉も、比較的しっくりきてしまうような感じを覚えてしまいますね……。

 

 裁判官 「そんな動機でひったくりされたなんて知ったら、被害者もあきれてると思うんだよね。 まぁ、すでに知ってると思うけど」

 被告人 「はい」

 裁判官 「そういうサイトを使うにしても、自分の所得の範囲内でやるとかさ」

 被告人 「はい」

 裁判官 「キミって、計画性というか、金銭感覚ないんじゃないの?」

 被告人 「はい」

 裁判官 「そこは、『はい』って返事をするトコじゃないよね」


 

 まるで、よくできた漫才のネタのような補充質問でした。

 被告人の受け答えが、やたらハキハキしているのが、会話の空回りっぷりをますます浮き彫りにしていて、傍聴席で観ながら、だんだん悲しくなってきましたね。

 こんな、しょーもない動機でひったくりをやろうと思える、人間ってフシギだな。

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2009年7月 3日 (金)

裁判官だって、テレビでドキュメンタリー番組を観るのだ、の巻

【 裁判傍聴録 】
 東京簡易裁判所
 6月**日   罪名:窃盗 

 

 被告人の男は、住居不定無職の47歳。

 ギャンブルで作った借金を、家族の協力も得て完済したところ、生活が立ちゆかなくなったことをきっかけに、10年以上もホームレスを続けているという。

 そして、自販機荒らしの常連でもあり、過去にも窃盗罪で検挙されたことがある。結局は不起訴になったそうだが。

 今回も、路上に設置されている自動販売機の釣り銭(約2万円)を盗んだとして逮捕・
起訴された。 初めての法廷に、要領を得ない感じ。

 

 弁護人は、住むところがない被告人を、更生保護施設に収容する手配をしており、そこを足場にしながら、じっくりと腰を据えて仕事を探していく支援をしたいと主張。

 「ガマンができない自分の性格を直す努力をしますね」と、被告人に質問を投げかけ、意識改革の様子を確認した。

 検察官は、職を失って仕方なく、という事情もなく、10年以上もダラダラとホームレス生活を続けてきた被告人に「ガマンができないんですね。堪え性がないというか」と責め立てる。

 さらに、「あなたが裁判所に来たという意味はわかりますか? これから罰を受けるという意味なんですよ」と、口を酸っぱくして注意を喚起した。

 

 この裁判は、即決裁判手続きで行われていたため、法律上、被告人に言いわたされる懲役刑には必ず執行猶予が付く。

 そのため、被告人が自らの犯行を甘く見ないよう、厳しく叱責して、今後の更生をうながしていく、検察官としての“親心”もあるのかもしれない。

 

 そして、江波戸直行判事による補充質問。

 この方は、いつも「自分の言葉」で、被告人に話を投げかけようと努力しておられるので、質問手続きというより、ほとんど助言か説教のような時間となる。

 

裁判官 「私も、テレビでドキュメンタリー番組とか観ていると、ホームレスになった人々の特集なんかやっててね、私も詳しい事情はわからないんだけれども、自分をいったんホームレスだと認めちゃうと、そこから抜け出せなくなってしまう、というようなことを言ってましたが」

被告人 「はい」 

裁判官 「あなたも、そういうふうにホームレス生活から抜け出せなくなったうちの、ひとりなんですか?」 

被告人 「いえ、抜け出せなくなってしまうのは、年齢的な事情もあると思います」

裁判官 「そうですか、あなたは47歳で、まだ若いですが、もっと年上の人が、抜け出せなくなるということですか」 

被告人 「そうだと思います。 60歳とか、そういう人たちです」

裁判官 「あなたの周りにも、そういうお年寄りのホームレスがいたりしたんですか?」 

被告人 「はい」

裁判官 「しかし、あなたもね、今まで10年以上もホームレスを続けてきたんだから、何か居心地がよかったりしたんではないですか?」 

被告人 「そんなことはありません」 

裁判官
 「10年前は、今ほど職を探すのは難しくなかったでしょう」 

被告人 「……はい」

裁判官 「今までできなかったことが、これから、ちゃんとできるんですか?」 

被告人 「はい、こうして裁判を受けて、目が覚めました。これからは心を入れ替えて頑張ります」

 

 結審して5分後、被告人には懲役1年6カ月(3年間の執行猶予)が言いわたされた。

 江波戸裁判官は最後に「さきほど言ったことを守って、生き方を立て直してくださいね」
と説諭した。

 

 私の気のせいかもしれないが、窃盗に関する刑事裁判の半分近くは、被告人が「住居不定無職」だ。

 そして、ホームレスの「ベテラン」が、「新入り」に対して、盗みをそそのかすような話も聞く。

 ホームレスにもコミュニティがあって、その中でも、要領や力関係の差というのが如実に出ていたり、そうしたコミュニティのわずらわしさを嫌って、今回の被告人のような「一匹狼型」のホームレスが周辺にいたりする。

 やはり人間社会の縮図のような思惑が渦巻いているのかもしれない。

 

(※ 以上、メールマガジン「ウィークリーながみね」今週号に掲載した記事に、加筆してエントリしました)

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2009年5月17日 (日)

詐欺師にだまされた?強盗犯

~ 過去の法廷傍聴席より ~

5月11日(月) 大阪地裁

 罪名:強盗致傷

 

 被告人は、トラック運転手だった33歳の男。22万円の月収があったが、複数の消費者金融から金を借りていた。

 その借金は、パチンコなどの遊びで負けてしまったぶんの穴埋めでできたほか、ある女性に貢いだりしていたためだ。その女性には、目の見えない小さな男の子がいて、被告人と仲良くなったことから、援助などを求められていた。

 ほかにも、女性からブランド物のバッグや時計などをねだられ、借金して買っていたようだ。肉体関係もあった。

 しかし、あるとき、「故郷に帰る」といわれ、女性と連絡が取れなくなってしまった。あとには借金だけが残った。いったん、両親に相談し、返済を立て替えてもらったころ、女性が再び現れた。

 「自分はだまされているのか?」という思いが、頭をよぎったものの、結婚を考えるぐらい惚れて、信じていたので、同じような流れで貢ぎ続け、再び借金が100万円以上にふくらんでいった。

 母親に相談し、1万円をもらった。「この金を元手に、パチンコで増やそう」と考えたが、あっさりパーにしてしまう。

 彼なりに追いつめられ、「強盗をするしかない」と決意。100円ショップで、くだものナイフを購入。愛車のエスティマに乗り、駅前のロータリーで、女性の一人歩きを物色。

 しかし、人目につくのが気になって、人目があまりない、近所にある消費者金融の無人契約機のブースが集まる駐車場へ、愛車で移動した。ここが犯行現場となる。

 強盗をする前に、
  そのエスティマを売れよ!

 

 軽自動車に乗り、ある女性が返済にやってきた。無人契約機を操作している。「ここで行くしかない」と、被告人は決意。くだものナイフのさやを抜き、左脇にかかえて近づいた。すでに緊張で、全身が汗びっちょりだったという。

 女性に大声を上げられ、単に脅すために持っていたナイフで、つい女性の腹部を突き刺してしまった。女性は後ろに転び、尻餅をつく。被告人はクルマで逃走。盗んだ財布から1万3千円を抜き取り、財布は川に捨てた。

 その日の早朝から、普段どおりにトラック運転手の仕事をしていたが、まったく集中できずに上の空だったという。仕事を終え、くだものナイフも同じ川に捨てた。

 盗んだ1万3千円は、ガソリン代と食費で、数日のうちに使ってしまった。

 

 逮捕され、交際していた女について、取り調べで話すと、警察官から「それは関東で有名な詐欺集団の女じゃないか?」といわれたという。

 刃物を使った理由について「怖かったから」、女性に狙いを定めたことについては「最低だと思う」、なぜ消費者金融で金を借りるような、裕福でない人を狙ったのかについては、「それしか思いつかなかった。銀行強盗やコンビニ強盗をする考えはなかった」と供述。

 私と同い年で、いかつい印象のある被告人だったが、実際には、かなりの小心者だったようだ。

 今まで前科前歴がなかったのに、いきなり強盗致傷という重罪を犯してしまったことの短絡性についても考えさせられる。

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2006年6月 4日 (日)

平成18年3月14日 上告審の弁論に弁護人が不出頭 (抜粋再現)

 山口・光市 母子殺害事件 上告審 弁論

 最高裁判所 第三小法廷

 

 【裁判長(主任裁判官)】 濱田邦夫

 【裁判官】 上田豊三

 【裁判官】 藤田宙靖

 【裁判官】 堀籠幸男

 

 ※ 筆記が間に合わなかった個所も多数あります。 せめて、雰囲気だけでも皆様に感じ取っていただければ幸いです。

 
13:05 一般傍聴者が入廷を許可される

13:15 検察官(最高検検事)が、1名入廷

13:30 裁判官が入廷 マスメディア向け撮影許可

13:32 開廷

 

 裁判長 「当法廷に弁護人が出頭しておりません。 本日は、審理を行うことができません」

 検察官(挙手して) 「ひとことだけ申し上げます。 本日は、被害者の遺族の方がご主人を含め7人傍聴席にいらしております。 この弁論期日は、本件で3年数ヶ月ぶりの法廷でありまして、そこに弁護人両名が出頭しないということは、訴訟遅延の目的も考えられ、きわめて遺憾であります。 遺族に成り代わって申し上げます」

 検察官 「平成14年3月27日に、(検察側の)上告が申し立てられ、本日まで反論の機会が十二分にあったにもかかわらず、平成18年3月6日に新弁護人2名が就任し、翌7日には、自己の都合を理由に期日の延期を申し立て、却下されております」

 同 「本件のような必要的弁護事件における弁護人の欠席は、審理を空転させ、判決を可及的に遅らせる目的が明白であることが合理的に推認できるものであります。 弁護人の責めに帰すべき理由によって、必要的弁護事件を正当な理由なく欠席しております」

 同 「他方で、迅速裁判の要請があり、法廷の威信にもかかわる問題であります。国民から付託された裁判権を行使していただき、必要な限度で刑事訴訟法第289条の例外を認め、同341条を類推し、弁護人不在のまま弁論を予定通り進め、結審すべきと考えます」

 

13:37 合議のため、いったん裁判官全員が退廷

13:40 裁判官らが再入廷。 審理が再開

 

 裁判長 「本日の弁論は…… せず、弁論を延期することとします」

 同 「当裁判所の見解を申し上げます。 弁護人両名からは、3月7日に『準備になお時間が必要』という理由で、期日の延期が申し立てられました。 しかし、昨年12月6日に、当裁判所は本日を弁論の期日として指定し、通知をしており、弁護人両名も、それを前提に弁護人を引き受けたはずです」

 同 「本件は、弁護側からの上告はされておらず、また、弁護側はすでに、検察側からの上告に対応した詳細な答弁書も提出されていることから、3月8日付で、当裁判所は申し立てを却下した経緯があります」

 同 「したがって、当法廷に出頭すべき職責を負っているにもかかわらず、なお、正当な理由なく出頭しないという、このような態度は極めて遺憾であります。当裁判所の見解は、以上のとおりです」

 同 「次回期日を、4月18日火曜日 午後3時と指定します。 次回期日には、ぜひとも弁護人らが出頭するよう望みます。 閉廷します」

 

◆ 刑事訴訟法 第289条(必要的弁護事件)
1 死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。

◆ 刑事訴訟法 第341条
 被告人が陳述をせず、許可を受けないで退廷し、又は秩序維持のため裁判長から退廷を命ぜられたときは、その陳述を聴かないで判決をすることができる。

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2006年3月17日 (金)

待てど暮らせど来ぬ人を……

 メールマガジンには書きましたが、私、14日の最高裁口頭弁論に行ってまいりました。あの「山口・光市 母子殺害事件」の上告審です。しかし、皆さんご存知の通りの顛末です。

 弁護側ドタキャン……裁判員模擬裁判のリハーサルが理由?

 せっかく寒い中待って傍聴券を当てたのになぁ……。 来月、弁論がやり直されますが、こうして変な注目のされ方をしてしまったので、今回みたいな61名という傍聴希望者の数じゃ済まないかもしれません。だとしたら、また運よく中に入れるとは限らないし。

 弁護士稼業を一生やっていても、1度あるかないかの貴重な機会だという最高裁の弁論。それを平気ですっぽかしてみせた、安田好弘、足立修一の両弁護人。 言っときますけど、裁判官の心証だけでなく、私の心証も悪くなってますからね。(笑) どんだけ多忙だと思われたいのかね。

 あのですねぇ、私が法廷を傍聴するときの気持ちって、たとえば、元 野球少年がプロ野球の選手を応援しに球場へ通い詰めるのと似てるんじゃないかと思ってるんです。 志半ばに夢を断念した者たちは、晴れの舞台で輝くヒーローを憧れのまなざしで見つめています。 それが、このていたらくですか。

 死刑廃止という高尚な持論も結構です。 しかし、書面審理がポリシーである最高裁が、わざわざ時間や手間をかけて口頭弁論を開くというのは、暗黙の「逆転判決メッセージ」なわけです。 このままでは被告人に逆転死刑判決が出てしまいますよ。 よろしいんですか? 言動不一致な状態のままで。 弁護士って、そういう商売でしたっけ?

 来月、ちゃんと姿を現して、目の前でプロの技を見せてくださいよ。お待ちしてます。 だいたい、濱田裁判長は再来月で定年なんですから。 たぶん最後の大仕事ですよ。

 そういえば、傍聴席。 私の隣にはなんと、あの佐木隆三先生が座ってこられて、少しビビりました。 この世界の第一人者は、どういうノートを取るのかなぁと、ちょびっと覗き見しちゃいましたけど。えへ。

 最高裁って、驚くほど頻繁に有名人に会えますね。 会えますね、というか、見れますね。

 

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 話題を集める重大事件だけでなく、意外に細かい裁判も積極的に傍聴されておられる、このお方。

 法廷メモが解禁された「レペタ訴訟 最高裁判決」の前時代、確信犯的に高性能の小型テープレコーダーを法廷内へ持ちこんだという、なんとも大胆なエピソードも明かされています。

 第1章 : 少年犯罪という社会的病理
 第2章 : あなたが犯罪者になったら
 第3章 : 裁く側の「人間」が見えるとき
 第4章 : 判決を受ける背中が語る
 第5章 : 裁きの場の深遠を知る

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2006年1月23日 (月)

明日、メルマガ復刊です!

 ただいま休刊中のメルマガですが、それでも私宛てに「相互紹介(相互広告)をしましょう」という、メルマガ発行者の方からの申し出を、しばしばメールでいただきます。そのたびに「そろそろメルマガを復刊させたいなぁ。でも、面白いモノを仕上げようとすると、どうしても時間が足りないし……」と、悶々とするわけです。

 どうすれば、ネタに困らないかを考えた末に、思いついたのが……!

 今までやってきたように、マスコミから流れるニュースについて、手を替え品を替えで解説を加えるのもいいけれども、30歳で偉そうに「高みの見物」もないもんですよね。やはり自分の目で耳で確かめたことを率直に書くのが、物書きの基本。なにより、そのほうが面白いし、楽しい。

 ということで、復刊に際して、内容を完全リニューアルさせることに決めました。今後は【裁判傍聴メルマガ】として方向性を切り替えてお送りします。近いうちに、タイトルを「東京地裁つまみぐい」に変更するよう、まぐまぐさんに申請しようかなと。

 さぁ、明日は早起きだ。9時に霞ヶ関の東京地裁! 間に合うか? 9時40分から、ある損害賠償訴訟の傍聴券をめぐり、さっそくパソコン抽選が行われます。 地球のみんな! オラにクジ運をわけてくれ!(2回目)

<<<<<<<<<<<<< みそしるオススメ本 >>>>>>>>>>>>>>

 ワイドショーの裁判ニュースでのチョイ解説でおなじみ、板倉教授による刑法の解説本です。2色刷・イラストつきで親しみやすい見た目。ひとつの項目が見開き2ページで揃えられているので、文章も端的で、検索のしやすさもバツグンです。

 ただ、ポップなイラストに似つかわしくなく、刑法学の難解な専門用語が、そのまんま使われていることから、あまり一般向けではないような……。学者先生という立場上、おそらく、わかりやすさよりも正確さを優先させてのことでしょう。
 ご専門が法律以外で、かつ、抽象概念に強い方が、「刑法や犯罪について、体系的にザックリ知りたい」という場合ならば、真っ先に推薦したい良書です。

常識としての刑法
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2005年7月14日 (木)

著書廃棄訴訟 「つくる会」側の逆転勝訴の見通し

>>> 「つくる会」関係者著作の図書館蔵書処分は違法 最高裁

 市立図書館の司書が、「新しい歴史教科書をつくる会」や関係者の著作などを処分したことが違法かどうかが争われた訴訟で、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は14日、「公立図書館は住民のほか著者にとっても公的な場で、著者には思想や意見を伝えるという法的に保護される利益がある」との初判断を示した。「職員の独断的な評価や個人的な好みで著書を廃棄することは、著者の利益を不当に損なうものだ」として、つくる会側の主張を退けた二審・東京高裁判決を破棄。審理を同高裁に差し戻した。

 第一小法廷は、著者の思想の自由や表現の自由が憲法で保障された基本的人権であることを重視。「著者が意見などを伝える利益は、法的保護に値する人格的利益だ」と位置づけ、「図書の廃棄は著者の人格的利益を侵害し、違法」と結論づけた。 (朝日新聞)


 千葉・船橋市立西図書館による「つくる会」著書 集中廃棄問題


 【 事実関係 】

 2001年8月、船橋市立西図書館が、「新しい歴史教科書をつくる会」が扶桑社から出版した教科書執筆者の著書を廃棄処分していたことが、翌年4月に一部新聞で報じられた。
 同市教育委員会の調査では、同図書館はこの評論家らの著書を45冊所蔵していたが、このうち44冊を廃棄した。同図書館は毎年9月、蔵書の虫干しをするのに合わせて破損した本や貸し出し回数の少ない本を処分しているという。原告の著書以外で廃棄されたのは、西部邁氏(評論家)の著書43冊と渡部昇一氏(上智大学名誉教授)の著書25冊など。

 

(図書館 臨時記者発表)2002/05/10
 平成13年8月に除籍された541冊(内訳 一般図書170冊、児童図書17冊、雑誌354冊)の除籍理由については、職員からの事情聴取の中で判断しましたが、一般図書170冊のうち63冊、児童図書17冊、雑誌354冊は、船橋市図書館資料除籍基準に基づき除籍したものでありました。

 しかし、一般図書107冊については、利用が低下しているものや、受入れ年月日の古いものなどがありましたが、除籍理由を明確にすることは出来ませんでした。

(除籍の内訳)  (除籍数)  (基準に基づいた除籍) (不 明)
 一般図書     170冊       63冊         107冊
 児童図書      17冊       17冊           0冊
 雑  誌      354冊      354冊           0冊

廃棄書籍リスト (「正論」2002/06)

【 司法判断 】

●2002/08/13 提訴
  原 告 : 著者ら8名 新しい歴史教科書をつくる会
  被 告 : 図書館 担当司書
  請求額 : 一人当たり300万円
  根 拠 : 憲法違反、名誉毀損、著作者人格権の侵害

●2003/09/09 第一審判決 東京地裁

 司書による廃棄について、「決して一時の偶発的行為ではなく、周到な準備をした上で計画的に実行された行為であることが明らか」、「市が定めた除籍基準を無視し、個人的な好き嫌いの判断によって大量の図書館の蔵書を除籍し廃棄して船橋市の公的財産を不当に損壊したもの」であると認定し、船橋市に対しても「責任の所在を曖昧
にしたまま幕を引こうとしており、このような被告船橋市の姿勢に原告らが強く反発するのも理解し得ないではない」との見解を示した。

 しかし、損害賠償請求については、「司書によって除籍等がなされた図書は、すべて船橋市が購入して所有し管理していたものであって、原告らの所有・管理に属するものではなく、これらの蔵書をどのように取り扱うかは、原則として被告船橋市の自由裁量にまかされているところであり、仮に、これを除籍するなどした
としても、それが直ちにその著者との関係で違法になることはないと考えられる」として、原告側の訴えを退けている。


●2004/03/03 控訴審判決 東京高裁

 本控訴審判決は、事実認定および原審にて既に争われた論点については原審判決を採用した上で、追加の控訴趣意に対して、
 (1) 検閲とは行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、発表前にその審査をした上、不適当と認めるものの発表を禁止することをいうものと解されるから、本件除籍等はこれに該当しない。
 (2) 不合理な差別的取扱いを受けたとしても、それについて不法行為が成立するためには、控訴人らに侵害されるべき法的権利ないし法的保護に値する利益が存することが前提となるから、取扱いが不合理であることにより直ちに損害賠償請求権が発生するとは解されず、控訴人らの主張は採用できない。
 (3) 公貸権は、控訴人らの主張によれば、書籍が図書館に所蔵され閲覧に供されることにより著作者らが被る経済的不利益に関する議論であり、本件で侵害されたとする控訴人らの利益が法的権利ないし法的に保護されるべきものであることを直接根拠づけるような内容にまでその議論が及んでいるとは理解し難い。
 との判断を下し、控訴棄却を言い渡した。

 (「つくる会」HPより)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

2005/06/02  上告審 口頭弁論 
          (最高裁第一小法廷 横尾和子裁判長)


 13:20 入廷して傍聴席の2列目中央に着席。原告(上告人)席には、すでに西尾幹二氏と井沢元彦氏の姿があった。被上告人席にも、弁護人などの関係者が5名ほどスタンバイしている。

 きょろきょろ見回すと、傍聴席には若い学生さんらしき人も混じっている。最高裁の入り口で金属探知器を通るとき、「今日は、大学生の人も傍聴に来てらっしゃいますけど、授業か何かですか」と警備員さんに聞かれてしまったのを思い出した。「いえ、私ひとりです」と答えたのだが、今年三十路を迎える私が、学生に見られている場合ではない。おそらく、ラフすぎる服装のせいだろう。

 13:30 5人の最高裁判事が入廷し、全員が起立して一礼。裁判長が両当事者に対して、上告趣意書と答弁書の陳述を確認した後、他に陳述することは無いかと促した。

 まずは西尾氏が起立して口を開く。3つの点について述べたいと前置きして弁論を開始。

 
■ 判決についての個人的印象

 日本国の公立図書館から、著書を処分されるというのは計り知れない屈辱。公的機関から差別されたという屈辱である。

■ 歴史的・公的意見として

 廃棄された私の著書9冊のうち7冊は、「つくる会」発足以前のもので、人生論について書いたような内容である。それらを無差別に廃棄されたというのでは、なんらかの組織に属していることが悪いことのようにされる。これは集団の罪や全体主義と質的に同じ。
 

■ 焚書とはなにか

 歴史の抹殺である。一国の人々を抹殺するには、その人々の記憶を消し去り、新しい記憶を植え付ければいい、といわれる。それが本を消す、歴史を消すということにつながっていく。
 少し大げさな話になるが、スペインは「闇の歴史」を背負ってしまったがために、先進国としてなかなか表に出て来られない。スペイン軍によるインディオの侵略については「インディアスの破壊についての簡潔な報告」(岩波書店)に詳しい。イギリスやオランダは、そのことについて世界に広めていったが、スペインは反論の書を書かなかったために、最大級の自虐国家となってしまった。

 敗戦直後の日本で、検閲があったのは知られているが、焚書もされたことはあまり知られていない。なぜ、日本が戦争に突入していかなければならなかったのか、その自己弁護すらできなかったのである。どこか強くつながる問題ではないか。

 本件は、左翼イデオロギーによる、相当犯意の濃い、個人でなく団体の罪である。


 
 次に、西尾氏とは少し主張根拠が違うということで、井沢氏も弁論。
 

 これは、民主主義に対する挑戦である。相手が自分と違う意見を述べても、それを認めるのがルールであり、出版された内容を自由に読めなければ意味がない。
 歴史上、数多くの焚書がなされてきて、ナチスドイツによるそれが最後かと思っていたが、今回の事件である。

 私は船橋市在住で、10年以上住民税を払っている市民である。まさか、そんな身近で焚書が行われるとは思わなかった。市からの謝罪もない。ただ、これは個人的憤懣についてであり、大した問題ではないが。

 これを認めれば、たとえば訴訟の相手方を支持する判決文が気に入らなければ処分することも可能ということになってしまう。この野蛮な行為に対して、厳しく処断されることを望む。右とか左とかではなく、民主主義に基づく最低限のルールを問題としているのだ。

 最後に弁護人から。


 本件は船橋市民の知る権利を侵害しかねない問題。なにも、図書館に対して、ある著書を購入せよと求めているわけではない。もともと図書館員によって広く閲覧に供されていた蔵書を、司書が単なる好き嫌いで処分したことを指摘したい。

 図書館利用者からの「最近、あの本が無いね」という素朴な申し出を不当に無視した。単なる司書一個人の問題ではなく、広く、公立図書館の健全な運営の問題である。また、一公務員の意図で、言論が不当に妨げられてはならないという、民主主義の問題でもある。

 地裁や高裁が、旧来からの意識にとらわれすぎ、高い見識を見せてこなかったのはまことに遺憾である。こうして最高裁が弁論を開いてくださったことに、深く敬意を表するものである。


 被上告人からは、「答弁書の通り」とのことで、特に口頭で述べられることはなかった。

 判決期日は、7月14日午前10時30分と指定され、13:50に閉廷した。

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