>>> 在外投票権、初の憲法判断へ 最高裁大法廷で双方が弁論
「海外に住む日本人の国政選挙での投票が制限されているのは参政権を保障した憲法や国際条約に違反する」として、在外邦人らが国を相手に、違法確認と損害賠償を求めた訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・町田顕最高裁長官)は13日、双方から意見を聴く弁論を開いた。原告の1人、若尾龍彦さん(64)は「大勢の国民が海外に住むようになった現状に適切な法改正を行ってこなかった国会は怠慢だったといえるのではないか」と主張。国側代理人の大竹たかし・法務省訟務総括審議官は「海外の有権者が当分の間、選挙区選挙について選挙権を行使できないことは、必要かつやむを得ない制約であり、立法府の裁量の範囲内にある」と反論した。
大法廷は秋にも判決を言い渡し、在外邦人の選挙権を巡る初の憲法判断を示す見通しだ。
在外邦人の選挙権行使については長年、衆院選と参院選のすべてで認められていなかった。98年の公選法改正で衆院と参院の比例区についてだけ認められたが、選挙区については認められていない。
一審・東京地裁は99年、違法確認の訴えについては「法律上の争いに当たらない」として却下。賠償請求も棄却した。二審・東京高裁も00年、原告側の控訴を棄却した。 (朝日新聞)
書いても特に問題がないと思われますので書きますけれども、私の隣の傍聴席に、偶然、辻元清美元衆議院議員が座ってらっしゃいました。とはいえ、閉廷して間もなくしてから、中年男性が「辻元さん!」と声を掛けるまで、私はまったく気づかなかったのですが。
奇しくも今日、2003年の衆院選に関する議員定数不均衡訴訟の審理が、大法廷へ回付されたと発表されました。この選挙も、鈴木宗男元議員が立候補したり、福岡2区で山拓と古賀氏が激戦を繰り広げたりと話題になりました。
また、翌年7月の参院選に関する不均衡訴訟についても、「そのうち必ず(最高裁へ)上がってくる」と町田長官は憲法記念日の会見でおっしゃってます。執行猶予中の辻元候補が『おわび選挙戦』を繰り広げた大阪選挙区で71万票を獲得したものの落選し、別の鳥取か島根の候補者が15万票あまりで当選した選挙。記憶にも新しいところです。
昨年は1回しか判決が出されなかった大法廷ですが、にわかにヒートアップしてきましたね。
【傍聴録】
14時に最高裁判事14名が勢揃いし、厳粛な雰囲気の中で審理開始。新任の堀籠判事など、私が初めて拝見する裁判官もいらっしゃいます。
まずは、お決まりの手続きとして、両当事者から提出された書面を陳述するかの確認をする町田裁判長。途中、セリフを少しとちり気味でした。大法廷以外では裁判現場にタッチしない長官ですので、ひさびさの舞台に緊張しておられるご様子、などと書いては失礼か。
【意見陳述】
■上告代理人・北村氏
まず、最高裁判事に向けて、大法廷弁論の機会を与えていただき感謝する旨を述べて始まりました。
相手方の国が主張する「在外日本人の把握の困難」については、実務上特に問題はないことを詳細に述べておられました。その詳細部分については、私のメモが付いていけませんでしたが(恥)
また、「在外日本人の、選挙に関する情報不足」という主張に対して、衛星テレビやインターネットなどで、日本に居ながらに得られるものと同等の水準の情報が入手可能であると反論。
さらに、在外邦人に十全な選挙権を認めないのには「選挙権行使の公正を確保し、投票の混乱を回避する」という目的があるという主張に対しては、このような抽象的な理由で、憲法が認めた選挙権をすべて制約することはできないとしました。
そして、憲法15条1項では、公務員の選定罷免権が認められているが、司法的救済が与えられなければ、それを「権利」と呼ぶことはできない、としました。続けて、原審や第一審が、本件の提訴を「却下」したことについて、立法措置の違法確認の訴えも、行訴法上の実質的当事者訴訟に含まれると主張していました。
次に、在外邦人の選挙権剥奪は、重大な人権侵害であるだけでなく、社会的に大きな損失であると、以下の統計データを提示。
敗戦直後の在外邦人 約24万人
1996年(当訴訟の提起当時) 約76万人 (うち有権者 約61万人)
2003年(最新統計) 約91万人 (うち有権者 約72万人)
これは最小選挙区で換算すれば、衆議院議員3人を選びうるだけの人数であると付け加えておられました。
「ふるさとは とおきにありて おもうもの」 この想いは、現代においても決して変わるものではなく、彼らが外国で働き学びしたことを持ち帰ってきたからこそ、今の日本の発展があるのだと。現代では日本に戻らない場合も多いかもしれないが、彼らにも選挙権を認める道を模索することが最高裁の崇高な理念であると締めくくりました。
■上告代理人・二関氏
若手弁護士らしき方。まず憲法15条や43条といった選挙権の一般論や、数々の判例について言及。国民の選挙権は、表現の自由と並んで民主政プロセスの中核を成すもので、その制約については、いわゆる厳格な基準によるべきと、最高裁判事に向けて、判例・通説をあらためて説明。
次に本件の選挙権制約の特徴について。たとえば、定数不均衡訴訟では、「一票の価値」の格差はあるが、選挙権がまったく奪われているわけではない。しかし、在外邦人はたとえ投票所へ行っても投票できないのであって、いわば「定数不均衡の極限的状態」であると主張しておられました。
それだけに選挙権制約が重大であり、定数不均衡より救済の必要性が高い、ということでした。
■上告代理人・近藤氏
この方はおもに「法の下の平等」の観点から主張を展開してらっしゃいました。
本件は、有権者に日本国籍があるのに、彼・彼女がどこに住んでいるかで差別されるという点で、定数不均衡の問題と基本的に同様の構造だと指摘。
しかし、日本に住んでいるかどうかで選挙権の取り扱いを区別する目的が存在せず、自治体による住民票管理の便宜のために差別されるのは不当であると主張していました。
最高裁の判例では、おおよそ、衆院選では1対3、参院選では1対6の格差までが許容範囲とされているが、本件は、いわば「1対無限大」の格差だと説明。さらに、憲法は「信条」などの後天的要素による差別も許さず、その区別的取り扱いには違憲性の推定が働くが、「住所地」での差別も同様だとしました。
■上告代理人・林氏
この女性弁護士は、国際人権規約25条や、国際人権委員会の一般的勧告・選挙権保障措置について、いろいろ話されていました。これらは「すべての市民に選挙権を与えろ」と言っているらしく、その「市民」には、ホームレスですら除外されていないということでした。いわんや在外邦人をや、という主張なのでしょう。
あとは、条約と法律の関係について、一般論を述べていました。
■上告代理人・古田氏
丸顔にメガネ、蝶ネクタイで、うちわで扇ぎながら開廷を待つ姿から、どんな興味深い理論構成を展開なさるのかと期待しておりましたが、風貌に似合わぬ爽やかな弁舌で、至極まっとうな主張をしておられたので、少し拍子抜けしました。まぁ、弁護士は主張内容で個性を出しても金にはなりませんから、それで結構なのですが。
この方は国家賠償法について重点的に絞って相手方を攻撃。まず、著名な1985年判決(在宅投票制度)での基準について(※国会議員の立法行為であっても、立法内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うような、容易に想定し難いような例外的な場合には国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受ける)、
「では、本件は『例外的な場合』に該当するのでありましょうか。答えはYesであります」
すかさず、選挙権侵害は、『憲法の一義的な文言に違反』しているのが明らかで、公選法に不備、つまり、国会の立法行為に不備があった、はなはだしい憲法違反の状態だと主張。
1984年4月に、在外邦人の投票を認める公選法改正案が提出されたが、86年の衆院解散により廃案となって、その後10年間放置されたという事実関係を指摘しておられました。
「そもそも、昭和60年判決の規範は適切なのでありましょうか。答えはNoであります」
憲法41条は、国会が何の制約もなく活動できることを保障しているものではなく、同98条や99条の制約で、憲法を遵守しなければならない。最高裁が今回も昭和60年判決のような極めて狭い基準を採用するのであれば、立法府の怠慢を追認することになり、最高裁の役割を忘れたものといわざるをえない。三権分立の存在を否定し、「憲法の番人」としての役割を自ら抹殺することであると訴えてらっしゃいました。
■上告人代表・若尾氏
米ロサンゼルスに在住の方。外国に駐在する日本人が急増し、われわれの現地での評価が日本という国の評価につながるような存在である。「日本という国は、外から見たらこう見えるよ」ということを、日本の人たち、また国政にも伝えたいと思っている。
1996年の総選挙に際して、在外邦人が投票できないという事実を確認するための運動をしてきた。
(1)投票用紙を配布するよう要求したが、「選挙人名簿に載っていない」との理由で断られた。
(2)総領事館に出向き、投票用紙の発行を求めたが「そのような事務はしていない」との理由で断られた。
(3)投票日当日に、浦和市の選挙区で直接交渉したが、やはり断られた。
私は法には疎いが、法律は完全無垢なものより、現実に即して移り変わるものがいいと思う。それが「自分の社会は自分で創る」という、民主主義社会にあるべき姿であると思う、と話しておられました。
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■被上告人・大竹氏
基本的には答弁書に書いたとおりだが、2点だけ付け加えたい。
・ 平成10年改正前の公選法は、憲法に違反していない。
一定の期間(3ヶ月間)、一定の住所に居住することを条件とすることは、不正な投票を防止し、混乱をなくすために必要やむを得ない制度である。
選挙人の調査については職権で行えるが、海外に住む者については、わが国の調査が十分に及ばず、かえって不平等な結果を引き起こすことになる。
また、在外邦人の投票を認めようとする場合、郵便投票の是非や、二重投票の回避など、さまざまな問題点が生じる。これは国会の裁量事項である。
・ 改正後の現行公選法は、憲法に違反していない。
選挙区選挙については、候補者の政党や政策などを有権者に十分に周知させる必要がある。選挙運動期間という短い間に、世界中へ散らばる邦人へこれらの情報を知らせるのは難しい。


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