2009年8月28日 (金)

わんぱくでもいい たくましく育ってほしい (古っ)

 皆さま、ごきげんよう。

 「賃貸マンションの更新料」について、京都地裁で無効判決が出たことを受けて、不動産管理に詳しい弁護士さんにインタビューし、こないだプレジデント社に原稿を納めたんですが……。

 昨日になって、大阪高裁でも無効判決が出て、ビックリしちゃいました!

 「地裁レベルの判断なので、まだ流れが決まったわけではない」という論調だったので、さらに上の高裁レベルで判断が出た以上、思いっきり原稿差し替えですよ。

 ただでさえ忙しいのに、仕事増やさんでくれよ~。 もうグチャグチャです。

 でも、弁護士さんが「今日の晩までに、修正コメント出してメールで送りますよ」と、快く応じてくださったので、助かりました。

 素晴らしい! 余裕が感じられる! おれと違って!

 

 まだ未確認なので、今晩にでも図書館で確認してきますが……

 今朝の北海道新聞の朝刊に、最高裁の国民審査について、そして「忘れられた一票」のことについて載っけていただいているみたいです。

 まだ投票所に行っていない有権者の皆さんは、最高裁の審査対象裁判官に関して、私が孤独にシコシコまとめた、こちらをチェックですよ!

 国民審査用紙(3枚目の紙)を渡されて「ナンジャコリャ」と、つぶやかないために、スッキリした気分で投票所を後にできるよう、最高裁の裁判官についても、だいたいのことは知っておきましょうよ。

 


>>>「チームわんぱく」の高校生2人逮捕 殴って重傷負わせた疑い

 埼玉県警上尾署は24日、傷害の疑いで、さいたま市見沼区の県立高校1年生の男子生徒(15)と鴻巣市の県立高校1年生の男子生徒(16)を逮捕した。

 上尾署の調べでは、2人は6月21日午後7時15分ごろから約45分の間、同じグループの少年4人=いずれも傷害容疑で逮捕=と共謀し、桶川市若宮の駐 車場で、同市の県立高校1年生の男子生徒(15)ら少年2人の顔や頭を素手で殴るなどして重軽傷を負わせた疑いが持たれている。

 上尾署によると、6人は「チームわんぱく」と名乗るグループに所属。被害者の2人はグループの悪口を言ったとして呼び出された。当日は6人の他にもグループのメンバー約15人が現場にいたが、暴行はしていなかったという。 2009.8.24 (産経Web)



 「チームわんぱく」て!

 そりゃあ、立派なボケが1コ発生しているわけですから、被害者の2人は、反射的に悪口(ツッコミ)を入れたくなりますよ。

 彼らは何も悪くない。 そこに山があるから登ったにすぎません。

 まぁ、「チームなかよし」とか「チーム温厚」とかだったら、また違ったツッコミができたかも。

 

 その昔、丸大ハムのCMコピーで、「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」というのがありました。

 「チームわんぱく」の彼らは、たしかにわんぱくなのかもしれませんが……

 6人寄ってたかって2人をボコボコにするのは、残念ながら「たくましく育って」いるとは認めがたい。

 わんぱくと、集団リンチは違うがな。

 いくら素手でも、人数の差があったら、凶器を使っているのと一緒。

 その卑怯な事実に、取り巻きの「チームわんぱく」他メンバー15人ほどは、気づいていたんでしょうね。

 まぁ、集団リンチを眺めているだけで何もしないのは、決して「わんぱく」じゃないけどね。むしろ、「チーム淡泊」でしょうか?

 

 そういえば、むかし、卵投会という連中を特集しましたかね。

 当時「やっていることは、どうしようもないけれども、ネーミングセンスは感じる」みたいなことを書きましたが、「チームわんぱく」には、絶妙なボケのセンスを感じます。

 

 

◆ 刑法 第204条(傷害)
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

◆ 刑法 第60条(共同正犯)
 2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

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2008年2月11日 (月)

「キモイ恋ごころ」を、法はどこまで規制できるか?

>>> ドイツの男、性器の画像を携帯で送信して有罪に

 ドイツで自身の性器を写した画像を携帯電話で知らない女性に送りつけた男(21)が、裁判で有罪判決を受けた。当局者らが6日に明らかにした。

 同国東部ゾンデルスハウゼンの法廷で、裁判長は「それを見たときは全員が少し笑った」と語った。

 裁判所によると、被害女性は、画像が添付されたメッセージの送り主を警察に通報。当局は、男が別の複数の女性にも同様の画像を送った可能性を示す証拠を確認した。

 男には150ユーロ(約2万3000円)の罰金が科せられた。男は動機について明らかにしていないが、反省を示しているという。

 [ベルリン 2008年2月6日 ロイター]


 

 このお言葉は、有罪判決より、だいぶキツいっすねぇ。

 さらに… 女性の裁判長が言うと、より効果的といえましょう。

 さらに「全員があざ笑った」「物笑いにした」などの感想を浴びせると、さらに再犯のおそれは低下するかね?

 いや! それで逆に興奮するタイプの人もいるのか……。 難しいのぉ。 そのへんは被告人質問などを工夫して見極めないといけませんかねー。 わたしゃ、ブログになに書いとんだ。

 

 うーむ…… ところで、こういう類の事件が日本で起こると、どうなるんでしょうか?

 

◆ 刑法 第174条(公然わいせつ)
 公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

 

 ここにいう「公然と」とは、不特定多数の人たちを相手にする場合をいいますから、特定の人に対して、わいせつ画像を送った場合は該当しないことになります。

 「それはおかしい!」と思う人もいるかもしれませんが、国民の代表者である国会議員たちが、話し合いの結果として可決した条文にそう書いてあるんですから、仕方がないのです。 法治国家って、そういうモンなんです。

 どうしても問題が生じる場合には、裁判所や刑事法学者が、条文に書いてある意味の拡張について考えていく「法解釈」の出番なんですけどね。

 では、ストーカー規制法ですとか、各都道府県等の迷惑防止条例による規制はどうでしょうか。

 いずれも「懲役6カ月~1カ月」または「罰金50万円~1万円」の範囲が法定刑です。 迷惑防止条例の法定刑に関しては、東京都のモノしか調べてませんが(手抜き)。

 法定刑は同じなんですけども、ただ、両者は機能がビミョーに違うんですね。

 迷惑防止条例における、つきまといの構成要件は「専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で」という始まりとなっています。

 一方、ストーカー規制法のつきまとい行為は「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」とありますね。

 迷惑防止条例は「いやがらせ目的」、ストーカー規制法は「恋愛がらみ目的」というふうに、使い分けられているのです。

 そして、(詳しい説明は、またの機会にさせてもらいますが) 恋愛がらみのストーカー規制法のほうが、犯罪として取り締まるための条件が、より厳しくなっているといえます。

 なぜなら、プライバシーのなかへ、国家がモロに踏み込む場面だからです。

 

子曰く、

人の恋路をジャマするヤツは、馬に蹴られて死んじまえ。


 

 ……おなじみ「論語」より引用させていただきましたが、今に孔子のバチが当たりますが、私たちの恋愛感情に対して国家の規制を発動させる場面は、できるだけ抑制してもらわなければ困ります。

 だって、憧れの女の子が住んでるマンションがね、見える公園に寄ってね、なんとなくボーッと座ってるとか。 暗くなっても部屋の明かりが付かないので、懲りて帰るとか。 留守電に「あのー、今度おもしろそうな映画があるので…… 今度時間があれば観に行かないかなと、思って電話しました」って身勝手に吹き込むとか。

 ……やったことないスか? 皆さん! わたしゃ、キモイっスか?

 いーや! オレは誰にも謝らん。 たしかに極めてヘタクソだったのは認めるが。

 異性の目から見て、ちょっと「キモイ」言動があったからといって、いちいち110番に通報するような風潮がはびこれば、まぁ、潔癖な人々にとってはキレイキレイな理想郷なんでしょうが、そんなもん、究極につまらん、生き甲斐の欠落した社会だと断言します。

 そのことを前提に、条文をご覧ください。

 

 

◆ ストーカー行為等の規制等に関する法律 第2条(定義)
1 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
  一  つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
  二  その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  三  面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
  四  著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
  五  電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。
  六  汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
  七  その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  八  その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。
2  この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。

 

◆ 東京都 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 第5条の2 (つきまとい行為等の禁止)
 何人も、正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、不安を覚えさせるような行為であつて、次の各号のいずれかに掲げるもの(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第二条第一項に規定するつきまとい等及び同条第二項に規定するストーカー行為を除く。)を反復して行つてはならない。この場合において、第一号及び第二号に掲げる行為については、身体の安全、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下この項において「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限るものとする。
  一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
  二 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
  三 連続して電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。
  四 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
2 警視総監又は警察署長は、前項の規定に違反する行為により被害を受けた者又はその保護者から、当該違反行為の再発の防止を図るため、援助を受けたい旨の申出があつたときは、東京都公安委員会規則で定めるところにより、当該申出をした者に対し、必要な援助を行うことができる。
3 本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

 


 いずれも「電話をかけて」とか「ファクシミリ」としか書かれてませんねぇ。 メールはどうよ。

 もし、「『電話をかけて』には、メールを出す行為をも含むんだぜ」などという勝手な類推解釈をほどこして取り締まることが起これば、ふつうに生活している国民にとって不意打ちとなり、気軽にメールなんて出せなくなります。

 「じゃあ、チャットは? 手旗信号は? 気になるあのコに毎晩送ってる熱いテレパシーは?(←キモイ) どれぐらいの頻度までゆるされるの?」と、余計な心配をさせられ、日常生活が萎縮させられる可能性が無きにしもあらず、なのです。

 この熱い想いを強権的に取り締まりたければ、あらかじめ、ちゃんと書いとけ。

 というより、条文に書けるもんなら書いてみろ、コラ。

 ……これを難しいコトバで「罪刑法定主義」と呼びます。

 

 

◆ 奈良県 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 第10条 (電話等による嫌がらせ行為等の禁止)
 何人も、正当な理由がないのに、電話その他の電気通信の手段、文書又は図画により、他人に対し、反復して、虚偽の事項、卑わいな事項等を告げ、粗野若しくは乱暴な言語を用いて、又は電話で何も告げず、著しく不安又は迷惑を覚えさせるような行為をしてはならない。

 

 あっ、しまったぁ! 奈良県には、まんまと書かれてしまったぁぁ!

 この条文にいう「電気通信の手段」の文言は、まさしく電子メールの添付ファイルも含む!

 一方で、手旗信号やテレパシーは含まないと読み取れます。

 また、添付されたわいせつ画像は、「卑猥な事項等」に含む趣旨なのでしょう。 で、それを送信するのは「告げ」に含むってことでOKなんですかね? そうなんですかね?

 ただ、「反復して」という要件も付いてますね。 1回のみの送信だった場合、「間違いメールだった」という言い訳がありうるのを考慮してのことでしょうか?

 ともかく、失笑しまうような下半身の写メを1回送られただけじゃ、警察は動いてくれないみたいですけど、いちおう交番で相談しておくのは構わないかも。

 こういう条文が備えてある迷惑防止条例って、奈良以外の都道府県にもあるんですかねぇ? だれか、し・ら・べ・て

 

 

 そんな他力本願はともかくとして、本日、東京よりもずっと寒かろう、日本海側の豪雪地帯、富山市に向かいます。

 こないだ「来週、富山に行くけん。さむそー!」と、実家の母にメールしたら、いきなり電話かかってきて、「あんた富士山行くと? ちょっと大丈夫ね?」と……。

 相変わらずお元気そうで、なによりでございます。母上さま。

 

 シロートが、真冬の富士山に登ったら、

  ……いくら楽観的に見積もっても、死にます。

 

 わたしゃ、肉親すらネタにしてますぜ。 ふふふふふ

 

 この母親の遺伝子を受け継いでいるので、きっと私が弁護士になってたら……、つまらんミスを連発してたんでしょうなぁ。 それを思えば、結果オーライだったのかも。

 半面、このオッチョコチョイの女性から育てられて影響を受けているからこそ、少しは他人様に「おもしろいですね」と言ってもらえるコトが書けるのかなぁ……とも思ってます。

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2007年8月 2日 (木)

参院選の妨害犯は、正直すぎた

 総理大臣って、そんなにしがみついていたい地位なんですかねぇ? ようするに、国民から叩きまくられるサンドバッグ役じゃないですか。

 不思議です。 しこたま叩かれても、なお余りある旨味があるんでしょう。 いったい総理っていうのは、どんだけオイシイ汁を吸えちゃうんでしょうか。 チューチュー。

 さぁ、小沢さん。 司法試験に叩かれた挫折者から、今度は世論に叩かれる総理大臣まで登りつめられるかどうか、これからが正念場ですねぇ。

 「衆議院解散・総選挙」なんて気の早い話もありますけど、安倍さんが自分から解散を宣言するなんて、今の情勢ではありえないでしょうから、本筋としては、野党が不信任決議を突き付けることになるわけですよね。

 

◆ 日本国憲法 第69条
 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。


 野党が過半数を占める参議院でも、内閣不信任を出すことはもちろん可能ですが、その決議には、内閣に解散のプレッシャーをかけられるような憲法上の強制力はありません。

 本気で解散を迫るには、自公で絶対多数を占めている衆議院での不信任決議を可決する必要があるのです。 それを思うと、まだまだ一筋縄ではいかなさそうですね。

 大穴としては、前回の衆院選(2005/09/11)における議員定数の不均衡が争われている訴訟で、最高裁が「違憲無効」の判決を言い渡し、衆院議員に「全員失職・再選挙」を命じる……という、思いがけない方向からの総選挙スタートもいちおうありえます。

 ただ、そんな大胆で正しすぎる判決を言い渡す勇気など、今の最高裁は持ち合わせてません。 自公の皆さま、ご安心くださいませ。

 

>>> 選挙カー妨害で男逮捕=「うるさい」と窓たたく-札幌

 参院選立候補者の選挙カーの窓ガラスをたたくなどして、活動を妨害したとして、札幌中央署は12日、公選法違反(自由妨害)の現行犯で、札幌市中央区北一条西、自称グラフィックデザイナー(43)を逮捕した。今回の選挙での逮捕は全国初。
 調べによると容疑者は12日午後6時20分ごろ、札幌市中央区の自宅近くの路上で、運動中の比例代表に立候補した女性候補者の選挙カーに、「うるさいんだ、この野郎」などと怒鳴り、窓ガラスを手でたたくなどして、走行を妨害した。 (2007年7月12日 時事通信)


 うるさいものに「うるさい」と言える正直さを、いつも心に持っていたいものです。 なにかと周りの空気を読みすぎる私たちは、遠慮しすぎ、縮こまりすぎでもあるのです。

 闇を切り裂き珍走する改造バイクの群れに、ローン組ませてイルカの絵を買わせようと密室へ誘うキャッチセールスの女に、やたら浮気を疑ってくる彼女の小言に、ひとこと「うるっせぇ」と一喝できれば、もっと楽に生きられるのに。

 ああ、今日もストレスを溜め込んでしまったニッポン人。 溜め込みすぎて、そろそろストレスに利息が付きそう。

 

 黄色い帽子をかぶった学校帰りの小学1年生たちが、通りかかった選挙カーに向かって「うるさーい!」ってカジュアルに叫んでますよね。

 「うるさーい!」 「うるさいって言うおまえが、うるさーい!」 なかなか可愛らしいです。

 ただ、43歳の自称グラフィックデザイナー男が同じように叫んでも、逮捕されるんですね。

 なぜかというと、理由は簡単。 可愛くないからです。

 可愛さは、チカラなのです。



>>> 公選法違反:候補者ポスターに落書きの男、自由妨害容疑で逮捕--鎌倉 /神奈川

 13日午後10時ごろ、鎌倉市稲村ガ崎2の路上で、参院選の掲示板に張られた候補者ポスターに落書きした男を警戒中の鎌倉署員が発見し、公職選挙法違反(自由妨害)容疑で現行犯逮捕した。

 県警捜査2課と同署の調べでは、男は同市稲村ガ崎4の会社員(59)。容疑者はポスターに黒色マジックで「何年前の写真だ」と落書きした疑い。調べに「もっと年をとっているのに、こんな写真が選挙で許されるのかと腹が立った」と供述しているという。(2007年7月15日 毎日新聞)


 黄色い帽子をかぶった学校帰りの小学1年生たちが、通学路の候補者ポスターを見つけては、せっせと鼻の穴に画びょうを刺してますよね。

 ただ、59歳の会社員が「このポスター、若づくりしすぎじゃ! きさまに恥じらいってモンは無いのか?」という正直な怒りをぶつけると、逮捕されるのです。

 理由は簡単です。 隠された真実を暴露したからです。 こりゃ国策逮捕ですな。

 ウソばかりの政治に腹を立てるのは、結構なことでしょう。 なにも、政治のウソは年金がらみだけじゃありません。 小さいことからコツコツと。 大切な心構えですよ。

 

◆ 公職選挙法 第225条(選挙の自由妨害罪)
 選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

 

1.選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき。
 2.交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。
 3.選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき。

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2006年8月 1日 (火)

新勢力! 歩く暴走族

【北の事件ファイル】
>>> バイクに乗らない「徒歩暴走族」
 札幌西署は今月、札幌市内の無職の少女(16)と女子高校生(15)を傷害の疑いで逮捕した。 2人は6月24日午後8時半ごろ、石狩支庁管内の女子中学生(13)と一緒に、同市内の友人宅で、顔見知りの同市西区の女子高校生(17)の顔を殴るけるなどして、12日間のケガをさせたという。
 2人は、派手な刺繍(ししゅう)が入った特攻服を着て、大声を出しながら街を闊歩(かっぽ)する「徒歩暴走族」のメンバー。 10代の少女が集まるグループにいる。  2006年07月27日(マイタウン朝日)

 ぬぉぉ! 歩く暴走族!!   すっげぇ、斬新です。

 街をふらふら練り歩いて、大声を張り上げながら、人や物に危害を加えるのでは、夜中の酔っぱらいと見分けが付きませんので、服装で区別するようにしたんですか。 賢いお嬢さん方です。

 彼女たちは、まさしく、やたら突起物の多い単車のシートから舞い降りた天使。 地球環境に優しい、エコな悪ガキたち。

 歩いているのに「暴走」とは、これいかに。 ……きっと、生きざまが暴走しているってことなんでしょうね。 

 

 徒歩暴走族とはそもそも、積雪のためバイクや車に乗ることができない冬場でも、暴走族が勢力を誇示するためにやり出した手法。 ただ、そのうち、バイクや車に乗らず、もっぱら歩くだけのグループも出始めた。 (同上)

 雪が積もったから、バイクに乗れませんだと?

 ……あのなぁ、 ドサンコなら、もっと根性見せろや。 除雪車でも改造すりゃ、吹雪の中だろうが問題なく走れるやろうもん。

 ふざけるんなら、もっと真面目にふざけてください。

 

 札幌市内には数団体。 狸小路や大通り周辺に現れる。運転免許証を取ることができない年齢の少年少女たちも参加してくるそうだ。 (同上)

 たぶん、運転免許を取れる年齢かどうかは、あんまり関係ないようにも思えます。 その気になれば、盗んだバイクにまたがって、走り出すこともできる。 それが、自由になれた気がした15の夜です。

 

 道は03年、暴走族の根絶に関する条例を制定した。 ただ徒歩暴走族は車両による暴走はしないので、この条例では摘発できないという。 (同上)

 
◆ 北海道暴走族の根絶等に関する条例 第2条 (定義)

 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 

  (1) 暴走族 暴走行為をすることを目的として結成された集団をいう。

  (2) 暴走行為 次に掲げる行為をいう。
    ア  道路交通法(昭和35年法律第105号。以下「法」という。)第68条(※共同危険行為の禁止)の規定に違反する行為又は共同して2台以上の自動車等を連ねて通行させ、若しくは並進させる場合において、法第7条(※信号に従う義務)、第17条(※通行区分)、第22条第1項(※最高速度)、第55条第1項若しくは第2項(乗車に係る部分に限る。)(※乗車に関する方法)、第57条第1項(乗車に係る部分に限る。)(※乗車の制限等)若しくは第62条(※整備不良車両の運転禁止)の規定に違反して運転する行為(※以下略)

 

 ついつい、条例の中に「自動車等」「運転」と書き入れてしまったがために、徒歩暴走族をみすみす取り逃がす結果になってしまいました。 取り締まりの網をかいくぐって、スタスタと歩き去っていった彼ら。 たいしたものです。

 その悪知恵は、北海道のお偉いさんの想定を超えているんですね。

 どうしても、「徒歩暴走行為」を取り締まり、彼ら彼女らを逮捕・補導したいのだとしたら、以下の条文を適用できる可能性はありそうですが。

  

◆ 刑法 第208条の3(凶器準備集合及び結集)
1 2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、3年以下の懲役に処する。

 

 刑法には、こういう規定もあるんですけど、もし、徒歩暴走族が“手ぶら”で活動しているとなると、この凶器準備集合罪も無力です。

  

◆ 刑法 第106条(騒乱)
 多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
  1.首謀者は、1年以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。
  2.他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。
  3.付和随行した者は、10万円以下の罰金に処する。

  

 ますますマニアックな条文、騒乱罪です。

 一見するとイケそうなのですが、この刑法106条にいう「多衆」とは、「一地方における公共の平和、静謐を害するに足る暴行・脅迫をなすに適当な多人数」であるというのが判例です。

 もともとは、デモ行進とか、いろんな反対運動などがエスカレートしないようにするための規定ですからね。 「何百人」とか、そういうオーダーでの大騒ぎを想定している犯罪類型なのです。

 

◆ 暴力行為等処罰ニ関スル法律 第1条
 団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法第二百八条(※暴行)、第二百二十二条(※脅迫)又ハ第二百六十一条(※器物損壊)ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス

 

 行きつくところ、この法律が、一番適用しやすそうではありますね。 唯一の弱点は、カタカナ条文のため、読む気が失せることです。

 いずれにしても、「徒歩暴走行為」そのものを処罰することは難しそうな印象。 彼らの天下は当分の間、安泰なのでしょうか。

 
 

>>>>>>>>>> みそしるオススメ本 <<<<<<<<<<
 

 いわゆる「ポスト小泉」争いが本格化してくる、この時期だからこそ改めて考えておきたい。

 アメリカ合衆国と日本国。 もはや「主従関係」すら通り越している?

 

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2006年7月30日 (日)

地面あっての飛行

>>> 滑空場の騒音に腹立て … 重機で滑走路掘り返した男逮捕 静岡
 29日午後0時20分ごろ、静岡県浜松市上島の天竜川河川敷にある「天竜川浜北滑空場」の近くの住民から「滑空場を建設用重機で掘り起こしている人がいる」と110番があった。
 駆けつけた浜北署員が航空危険行為処罰法違反の現行犯で、浜松市の無職の男(62)を逮捕した。
 同署によると、滑空場は軽飛行機などが離着陸するための草地で、長さ約1キロ、幅約100メートル。容疑者は29日、滑空場の地面を幅約35メートル、深さ約50センチ掘り起こし、航空機の危険を生じさせた疑い。滑空場の騒音などに腹を立てていたらしい。
 同日は、3人乗りの軽飛行機が着陸できずに他の離着陸場へ向かったという。 (07/29 23:15) 産経新聞

 この方は、先日の大雨で激流が押し寄せた天竜川が、これ以上氾濫しないよう、人工的な「支流」でも造ろうとしたのでしょうか。 気の効く方ですが、場所は選ばなければなりません。

 被疑者の男性は、たびたび「飛行機の音がうるさい」と訴え、滑空場の利用者と昨年もトラブルになっていたとのこと。 ただ、天竜川浜北滑空場は、「滑空場」の名のごとく、グライダーを趣味にする人たちが集うところのようです。

 グライダーには動力がありませんから、うるさい音も出ません。 音を出すとしたら、離陸時にグライダーを引っ張る小型飛行機(いわゆるセスナ機)でしょうか。

 また、同滑空場には、ヘリコプターも離着陸するそうですから。 パラパラパラパラやかましくてガマンならなかった気持ちも理解できます。 被疑者の自宅と滑空場は、約1.5キロ離れていたといいますがね。

 それを思うと、在日アメリカ空軍基地の周辺住民が、同じような事件を起こさないのが、むしろ不思議なくらいですよ。 ガマン強いですね、日本人は。

 

 昨日、なんとなくラジオニュースを聴いていたところ、本件が報じられていて、さらに「航空危険行為処罰法」という聞きなれぬ言葉が飛び込んできました。 家に帰りついて調べてみたところ、そんなにマイナーな法律ではないみたいですね。 単に私が知らなかっただけです。

 
◆ 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 第1条 (航空の危険を生じさせる罪)
 飛行場の設備若しくは航空保安施設を損壊し、又はその他の方法で航空の危険を生じさせた者は、3年以上の有期懲役に処する。

◆ 刑法 第12条(懲役)
1 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。
 

 
 重い……。 どうやら本件は、かなり重い犯罪のようですね。

 なにしろ「3年以上20年以下の懲役」なる法定刑が設けられています。 強姦や傷害致死と同等に捉えられている犯罪だ、ということになりますね。

 他人の所有地を勝手に掘り起こす行為は、ふつうは器物損壊罪という扱いです。 しかし、滑走路を掘り起こすのは、航空機に対する危険な影響が直接に生じてきますよね。

 ですから、そういう犯行に対する法定刑を格段に引き上げることによって、航行の安全が担保されているのでしょう。

 
 
◆ 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 第4条 (業務中の航空機内に爆発物等を持ち込む罪)
 不法に業務中の航空機内に、爆発物を持ち込んだ者は3年以上の有期懲役に処し、銃砲、刀剣類又は火炎びんその他航空の危険を生じさせるおそれのある物件を持ち込んだ者は2年以上の有期懲役に処する。
 

 
 可愛い子には声をかけよ。 ……じゃなくて、旅をさせよ。

 といいますが、最近、ひとり旅(?)していた小学生が「子供用携帯電話(キッズケータイ)」を機内に持ち込んで、離陸が10分以上遅れたというニュースが報じられていましたよね。

 保護者がわが子の位置を捕捉できるよう、キッズケータイの端末からは常に電波が発信されています。 犯罪被害を未然に防ぎ、被害に遭ってからも速やかな事件解決につながりうる強い味方には違いありません。

 しかし、キッズケータイの電波は、端末の電源を切ってからも出されつづけるといいます。 ですから、営業中の機内に持ち込まれれば、この便利な道具も、「その他航空の危険を生じさせるおそれのある物件」に該当する、単なる妨害電波の発生装置になってしまいます。

 子供の位置を捕捉するための電波まで完全に止めるためには、暗証番号を入力しなければならないそうです。 その暗証番号を探り出すのに乗員が手間どって、結局、離陸が予定よりも大幅に遅れてしまいました。

 航空各社は、このキッズケータイの存在に警戒しているといいます。 「警戒すべきもんが違うだろ」と言いたくもなる、なんとも皮肉な出来事ですけれけど、便利な道具には、便利なぶんだけの落とし穴があるものですね。

 できるだけ早い解決策の提示が待たれます。 携帯電話会社か航空会社、どっちからでもいいですから。

 

◆ 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 第6条 (過失犯)
1 過失により、航空の危険を生じさせ、又は航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、若しくは破壊した者は、10万円以下の罰金に処する。
2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、3年以下の禁錮又は20万円以下の罰金に処する。
 

 
 1条が「わざと」起こされた犯行なら、この6条は、人の「うっかり」で発生した航空危険行為を処罰する規定になります。

 整備士による整備不良によって、航空機に不具合が生じたり、管制官の指示間違いによって航空機同士のニアミスが発生したりすれば、まずは、この「航空危険行為処罰法6条違反」容疑で、捜査が行われるようです。

 もちろん、乗員や乗客にケガ人が出れば、刑法犯である「業務上過失致傷」容疑に切り替わることになりますね。

 
 

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 ご近所の息子さん(幼稚園児)を好意で預かったら、水難事故で死なせてしまった。

 その損害賠償請求裁判の行方は? そして、判決が報じられてから、国民が見せた反応とは……?
 

 日本人は、本当に裁判による解決を望んでいないのか?
 アメリカ人も、裁判より調停での解決を望ましいと考えている?

 東洋と西洋の法文化の違いが、しばしば一面的に誇張されてしまう現状を、厳しくいましめる一冊。

「大岡裁き」の法意識 西洋法と日本人
「大岡裁き」の法意識 西洋法と日本人 青木 人志

おすすめ平均
stars謙虚に、そして前向きに法と日本人を語った好著
stars「西洋法と日本人 ~『大岡裁き』からLED裁判まで~」
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stars日本人の法意識について考えました
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2006年6月16日 (金)

「呪いのエレベーター」の受難

>>> シンドラー社製エレベーター、壊されて停止
 14日午前5時40分ごろ、兵庫県西宮市西宮浜の市営住宅の「西宮浜4丁目住宅」2号棟で、2基あるエレベーターのうち1基が7階で扉が開いたまま止まっているのを、入居者が見付けた。入居者がボタン操作をしても動かなかったため、管理会社に連絡した。
 「シンドラーエレベータ」社製で、同社の担当者が調べたところ、建物4階のエレベーター乗り場にあるドアスイッチが押しつぶされたように変形していた。さらに4階のエレベーター乗り場ドアに激しくけったような靴跡が残っていた。(2006/06/14 17:19) 産経新聞・関西

 もぉー、ダメでしょう? もともと壊れてるものを壊しちゃあ。

 エレベーターって、なにかとイタズラされやすい装置ですよね。 タバコの火で、ボタンを黒く溶かされたり。 たまに、何者かがツバでも床に吐きかけたのか、むちゃくちゃクッサいエレベーターに遭遇することもありますよね。

 誰もが抱え込む現代社会へのルサンチマンが、一部、行くあてを失い、やがて、エレベーターや公衆トイレなど、密室の空間へと終着してしまうのでしょうか。

 ただ、本件は、時期的にみて、「シンドラー社製」という属性を持つ、特定のエレベーターが攻撃されたと考えるのが自然でしょうか。 「今のうちなら、こいつらは、やっつけてかまわない連中だ」と、無法者のストレスを解消する格好の標的となったシンドラーエレベーター(株)。

 先日、ヤミ金融業者を襲った若者らが被告人となっている、強盗被疑事件の初公判を傍聴しました。 「違法なことで儲けているヤツらを襲撃するのなら、こちらも後ろめたさが薄らぐ」と思いついたらしき彼らと、本件犯行に及んだ輩は、根っこで通ずる発想を持っているとみられます。

 どうせなら、シンドラーの日本支社に乗りこんで、その建物のエレベーターにイタズラしてやったほうが、より先方へメッセージが伝わったかもしれませんね。

 ただ、当のシンドラー社内に備え付けられたエレベーターのゴンドラに、「MITSUBISHI」とか「HITACHI」なんて刻印されてたとしたら……  笑えませんね。 すいません。

 私の自宅は、某ボロアパートの3階なので、エレベーターなんて設置されちゃおりません。  自分の足で階段を1段1段確かめ、踏みしめて、毎日上り下りしておるわけです。 が、福岡の実家でお勉強してたころは、エレベーターの点検がしょっちゅう、多いときは月に2回あったりで、あれにはうっとうしい思いをしていました。

 でも、エレベーターの不具合(プログラムミス?)が原因で、ああいうふうに利用者の死亡事故が起こってしまうとなると、やっぱり点検はしっかりしていただかなきゃな、と思わずにいられませんね。

 ちまたには、航空機が墜落すれば、空港から足が遠のき、通勤電車がマンションに衝突すれば、マイカー通勤になり……、というデリケートな感覚の持ち主が多くいらっしゃいます。 彼らは、今回のような事故が生じたことをきっかけに、エレベーターにも乗れなくなったものと思われます。 不便を強いられますね。

 そういう面に関しては、私はかなり鈍感というか、平和ボケしてますので、おかげさまで今日も明日もエレベーターを利用し続けますが。

 

住民の女性は「7階のドアが開いたまんま(だった)。すぐにシンドラーに電話した」と話しています。エレベーターは、壊された装置を交換し午前中には復旧しましたが、警察では、悪質ないたずらとみて器物損壊の疑いで調べを進めています。(ABC朝日放送 6/14 19:09)

 直接、シンドラー社へ連絡したので、その日のうちに復旧したのでしょう。 もし、この修理を、エレベーターの保守点検業者に依頼していたら、どうにもならなかった可能性が高いのです。

 先週のTBS「報道特集」で、独立系のメンテナンス業者が、エレベーターのメーカー側から“嫌がらせ”を受けている構図が伝えられていました。 TBSいわく、この構図は、なにもシンドラー社に限った話ではなく、国内メーカーとの関係でも同様だとのことですね。

 かつては、メーカーが言い値でメンテナンスも行っていて、エレベーター業界にとっての“ドル箱業務”となっていたそうです。 しかし、メンテナンス業が自由化された昨今、安く請け負う保守点検の専門業者に、仕事を奪われる形となり、やがて、メーカーは点検業者に対し、無言のプレッシャーをかけ始めるようになったといいます。

 たとえば、ゴンドラに備え付けられた階数のボタンが、イタズラで焼け焦げたとして、オーナーがボタンの交換を依頼したとしますよね。 それを受けて、点検業者はボタン1個を発注するわけですが、肝心のメーカーからは「1ヶ月待ってくれ」との、つれない返事が返ってくるのみ。

 しかし、メーカーが、替えのボタンを在庫として持っていないわけがないんです。 現に、今回の通報を受けて、シンドラー社はボタンの交換も含めて数時間で対応できているじゃありませんか。 ……やればできる。 必ずできるのです。

 例の死亡事故で、エレベーターの点検業者が「原因がわからない」とコメントしていたのを、フシギに思った方も多いでしょう。 私もそのひとりです。

 じつは、エレベーター各メーカーは点検業者に、エレベーターの設計図や修理マニュアルなどの資料を、1ページたりとも渡していません。 また、点検業者が別の会社に代わった際にも、エレベーターの不具合などの情報が伝えられておらず、業者相互間でも満足な引き継ぎが行われていない実態も明らかになっています。

 それでも、長年の経験や勘(?)で、現場の修理担当者は、エレベーターの安全を維持してきた実績があります。 それを、「一流の職人技」として喝采を贈るべきなのか。 それとも、国内製のエレベーターについては、たまたま無事という“奇跡”が続いている最中なのか。 私たちは、いまだ見ぬけないままでいます。

◆ 刑法 第261条(器物損壊等)
 前3条に規定するもの(※文書・建造物)のほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 
◆ 建築基準法施行令 第129条の10(エレベーターの安全装置)
1 エレベーターには、制動装置を設けなければならない。
2 前項のエレベーターの制動装置の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
  一 かごが昇降路の頂部又は底部に衝突するおそれがある場合に、自動的かつ段階的に作動し、これにより、かごに生ずる垂直方向の加速度が9・8メートル毎秒毎秒を、水平方向の加速度が5・0メートル毎秒毎秒を超えることなく安全にかごを制止させることができるものであること。
  二 保守点検をかごの上に人が乗り行うエレベーターにあつては、点検を行う者が昇降路の頂部とかごの間に挟まれることのないよう自動的にかごを制止させることができるものであること。
3 エレベーターには、前項に定める制動装置のほか、次に掲げる安全装置を設けなければならない。
  一 かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じていなければ、かごを昇降させることができない装置
  二 昇降路の出入口の戸は、かごがその戸の位置に停止していない場合においては、かぎを用いなければ外から開くことができない装置
  三 停電等の非常の場合においてかご内からかご外に連絡することができる装置
  四 乗用エレベーター又は寝台用エレベーターにあつては、次に掲げる安全装置
   イ 積載荷重を著しく超えた場合において警報を発し、かつ、出入口の戸の閉鎖を自動的に制止する装置
   ロ 停電の場合においても、床面で1ルクス以上の照度を確保することができる照明装置

 
 

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■ 6月第1週 【刑事】覚せい剤取締法違反(所持・使用)

 元「ドリカム」キーボード 西川隆宏メンバーの薬物再犯

 ニーヒャが違法薬物に手を付けはじめた理由(仮説)
 

■ 6月第2週 【刑事】殺人

 母親にベッタリ 44歳息子の尊属殺

 病気で苦しむ母親が「殺してくれ」と頼んだ?
 

http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/41/P0004187.html

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2006年6月 5日 (月)

音楽を止めないなら

>>> 強要逮捕:「店内のBGM変えぬと殺害」 埼玉
 埼玉県警川越署は4日、同県日高市、派遣社員の男(34)を強要容疑で逮捕した。
 調べでは、容疑者は5月14日、川越市脇田本町の生活雑貨販売店内に設置された意見箱に「曲を改善しろと何度言っても聞かないなら、店の1人を殺害する」と書いた脅迫文を入れ、同月15~29日の間、店内のBGMを止めさせた疑い。
 容疑を認め「本気ではなかった」などと供述しているという。
 同店は、様子をみるためBGMを一時止めた。容疑者は4月下旬から数回、「音楽なんて流すな」と意見箱に投かんしたり、従業員に苦情を言っており、4日午後3時ごろ来店したため従業員が交番に届け出た。 (毎日新聞) 2006/06/05 11:56

 

 なるほど。 「殺す」と脅せば、どんな願いごともひとつだけ叶えてくれるらしいです。 ドラゴンボールを7つ集める手間も省けて、便利ですね。

 一方で、「殺すぞ」と、国家が国民を脅すことの上に、死刑制度が成り立っていることも事実です。  問題は、その脅しから「何が生まれるのか」というところでしょうか。 昨今では、「死刑は脅しになっていない」という声も出てきているようですが。

 それはともかく、記事によると、店側はBGMをいったん止めたものの、5月30日から6月4日にかけては、また流し始めたということのようです。

 理不尽な客の要求に、いつまでも付き合っていられるほど、店側もお人好しじゃないでしょうし、ほとぼりが冷めたと判断したのでしょう。

 そうして、「呪い」の効き目が、わずか半月で減退してしまったことを知り、店側の「ナメた対応」を許せなくなった彼が、またネチネチと訪問してきたと。

 イヤなら行かなきゃ済む話だろうと、普通は思ってしまうわけですが、そうはまいりません。 彼はよほど、その生活雑貨店を愛してやまないのでしょう。 ときに愛は、憎しみに変わることもあるのです。

 

 お客様は神様です。 小売店に意見箱を設置すると、的を射たご指摘の中に紛れて、なかなかファンキーでアナーキーなご意見をお寄せくださる方もいます。 これも、匿名だからこその強気なのでしょうか。 それとも、“素”なのでしょうか。

 どうしても、家事やレジャーを優先させるパートさんが多くなる週末、出てこれる少ない従業員のみで、店の回転を支えなければなりません。 レジ係も、1人で2人ぶん以上動いて、延々伸びるお客さんの列をさばいていくことになります。

 ま、お客さんの99%以上は、気持ちよくお会計を済ませてくださる『神様』です。 変なのが占める割合は、誤差の範囲内とはいえ、それでも、どうしても「早くしろよ!」と、自身の都合とこちらの不手際を、誇張しながら主張してくる『怒りの神』はいるものです。

 お怒りの気持ちはわかりますが、「ありがとうございましたー」と、お客さんを送りだし、「いらっしゃいませー」と、次のお客さんを迎える間にも、レジ係には細かい仕事があるんです。

 小銭ジャラジャラでお支払いいただいたら、その小銭を逐一仕分けしてドロアに収納しなきゃいけません。 置いていったレシートは破棄して、万券が入ったらチェックして、領収書を発行したら、控えを紛失しないよう集約して、レジ台が汚れたら拭いて……、ときには10秒ぐらいお待たせするかもしれません。

 そのあたりの事情を読みとっていただけない神様は、なぜか総じて、週末の昼間にお買い物にいらした中年男性ですね。 「オマエ、名前は何だ。『意見箱』に入れておくから」という、ありがたい『神のお告げ』もあったりします。 面倒なので、「承知しました」と、素直に名乗っておくことで、さっさと場を治めておきます。

 その点、本件の被疑者は、独自の見解をゴリ押ししてはおりますけど、意見箱の『匿名性』へ安易に逃げ込んでいません。 店側としては、彼の面は割れているんですから、対応しやすくて助かりますね。

 

 お店が有線放送を導入している場合ですと、きっちり2時間周期でおんなじ曲が流れてきます。
 

「♪あーたし さくらんぼー」

「♪さかなさかなさかなぁーーー」

「♪あーなーたと あーたし さくらんぼー」

「♪たーたーたこやき たーたーたこやき」

「♪さくらんぼーー」
 

 なので、レジを打っていると、最新のチャート曲が強制的に頭に染み付いてきますね。 女の子との話題に最低限食いついていけるようになり、たいへん良い勉強になります。

 個人的には、民生さんやユニコーンが、有線の永久ループに組み込まれると、自然とテンションが上がって、素晴らしい活躍ぶりを見せるようになります。 2時間経つのを、ひそかに心待ちにしていたり。

 それでも、スーパーのBGMは、そこに短期間しか滞在しないお客様にとってすら、ときに耳障りになることもあるでしょうね。

 意見箱にも「音楽のボリュームを、もう少し絞れないか」というツッコミが投入されることだってあります。 「私にとっては不快な音楽だが、楽しみにしている人も中にはいるだろう」と悩み、葛藤した上で出した折衷案でしょう。 こういうお客さんのご意見は尊重したい。

 本件の被疑者も、そんなお客さんと共通の感情を持っていたのでしょう。 ただ、彼の場合は、自らの気持ちのみを純粋に増幅させていったわけです。 その結果、騒々しいBGMにイラついたあげく、店員1人をランダムに殺してみたくもなったのでしょう。

 ただ、BGMを止めたら止めたで、どこぞの古本チェーン店みたいに、あちこちからバイトが『いらっしゃいませー!』『いらっしゃいませぇーー!』と、声を嗄らして叫んでいれば、それはそれで、バイトひとりを殺したくなるんでしょ?

 結局のところ、こういうタイプの人々の脅しに屈してみたところで、それが解決の糸口になることはなかろうと思います。

 

 ま、この件に限らず、小売店に、わけわからん理不尽な要求をしてくるお客さん(ひとことで言えば「クレーマー」ってヤツなんでしょうか)というのは多いのです。 ただ、そういったお客さんは勝手なもので、要求内容の実現・店舗運営の改善なんか、最初から求めていない気もします。
 仕事場や家庭で抱えたストレスを勝手に店に持ち込み、単に解消したいだけのケースが、ほぼ100%のようです。

 お客様が神様扱いされることをイイことに、店から反論される可能性を気にせず、腹いっぱい呪い、縛り、攻撃していけるのです。 自分を安全圏に置かなければ一歩も踏み出せない、ナイーブな方々です。

 その証拠に、私が店員としての立場から、ちょっぴり言い返してみると、いきなりウロたえて、「……あんまり頑張るなよ」などと、よくわからんセリフを吐いてくるオッサンもいます。   アンタこそ、もっと頑張れよ。

 こちらとしても、「あぁ、このオッサン、会社でイヤなことがあったんだな。 かわいそうに」というスタンスでクレーム処理に臨めば、腹も立ちませんしね。 言わせておくのが正解なのでしょう。

 店に八つ当たりしてストレス解消するのは、まぁ、別に構いません。 ただ、あんたのストレス解消をお手伝いしたぶん、割増料金を置いてっていただくのがスジです。

 

 被疑者の職業は、派遣社員だそうです。 派遣社員は、職場で最終的な責任を負わなくて済んで、お気楽なぶん、派遣先の正社員が日々溜め込んでいるストレスの矛先が、モロに向かってきます。

 ただ、派遣先も『お客様』。すなわち『神様』なのですから、神様たちのストレス解消も、すすんで引き受けるようでなければなりません。

 『派遣なんて』『定職に就かないヤツなんか』という彼らの捨て台詞を、広い心で甘んじて受け入れることも、業務のひとつです。

 このギスギスした世の中で、しかも安価で動いてデフレ社会に貢献する、派遣やフリーターの重要性は、確実に高まってきています。

 

◆ 刑法 第223条(強要)
1 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

 

※ 後記 … こんなニュースも見つけました。

  音楽って、フ・シ・ギ

>>> 迷惑な「不良車」撃退にバリー・マニロウ? (ロイター)
 [シドニー 5日 ロイター] オーストラリアのシドニーでは、大音響を鳴り響かせて近隣住民を悩ませている「不良車」を一掃する手段として、米歌手バリー・マニロウの曲が利用されることになった。不良のたまり場になっている駐車場に、スピーカーでバリー・マニロウの曲を流すという。
 オーストラリアでは数年前にもショッピングセンターで「ビング・クロスビー」の曲を使った迷惑ティーン撃退の実績があり、当局職員らは、若者にとって「クールじゃない」マニロウの曲なら今回も成功すると考えている。
 5日付の現地紙で地元議員は「近くにはレストランもあるが、人々は不良たちを恐れて駐車場を利用できなくなっている」と指摘。その上で「流行り物でない音楽」に耐えられなくなって不良は立ち去ることになるだろうと述べた。 [ 2006年6月5日19時7分 ]

 若者にとってクールじゃない、でも「利用価値」のある唄…… こりゃ、日本だと誰に該当するんですかね。

 ……って、ヘタにそんなこと具体的に書けるわけありませんけど。 いちおー私も、毛の生えたオトナですから。

 

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 このところ、いろんな重大事件の犯人として、疑いをかけられた人の摘発が続いています。 いやがおうにも「裁判」「司法」の動きに注目が集まるわけですが、ただ注目しているだけでは、キャスターが言っていることの受け売りで終わってしまいます。

 今、行われている捜査が、本当に正しく機能しているのかどうかを観察するためには、ちょっとした知識が必要です。

 犯人憎しで、警察や検察が突っ走ってしまわないよう、法律は慎重な捜査を求めています。 また、ひとつの方向から光を照らすだけでは、過去に起こった出来事の本当の姿は見えてきません。
 せめて二方向から照らしていく。 そこに、被告人の利益を守る弁護人の役割があります。

 また、契約や事故などのトラブルでも、民事訴訟や調停などで、公の強制力を借りるべき場面も出てくるでしょう。

 これだけは知っておきたい裁判手続きを、わかりやすい図解で直感的に解説。 理屈は、二の次で結構です。 最初は。
 

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2006年4月22日 (土)

海で、そして空でも……

>>> 機内で乗客たたく --成田空港署 /千葉
 成田空港署は18日、飛行中の航空機内で乗客をたたいて軽傷を負わせたとして、千葉市若葉区、衣料品販売業(54)を傷害容疑で逮捕した。
 調べでは、容疑者は同日午前9時50分ごろ、オーストラリア上空を飛行中のシドニー発成田行き日本航空第722便の機内で、前の座席の韓国人の男子専門学校生(25)の顔面を数発たたき、軽傷を負わせた疑い。
 客室乗務員やオーストラリア人の乗客などに取り押さえられた。「テーブルのビールをこぼされたが、謝らなかったので腹がたった」と容疑を認めているという。(毎日新聞) 2006年4月20日

 「ワールドカップ」や「韓流ブーム」は、日韓関係を一時的に修復させる(ように見せる?)ためのカンフル剤でしかなかったのでしょうか。 マスメディアが今まで以上に“竹島問題”を大映しにしている一方で、ミクロの視点でみても、この種のトラブルが相次いでいるようです。

 まるで対馬海峡を挟むかのように、椅子の背もたれをひとつ挟んで、お隣同士に座っていた見知らぬ二人。

 もちろん、この韓国人学生は、相手の国籍に関係なく、この程度の粗相じゃあ、もともと謝罪しないキャラなのかもしれません。 この日本人男性だって、話している言語に関係なく、とにかく若輩者から邪険な態度をとられたことにムカッ腹が立って手を出した、とも考えられます。 アルコールも少し入っていたでしょうし。

 それはわかりませんが、「こんな一触即発のご時世じゃなければ、いくら“日韓”だろうが、こういうふうに個人どうしの揉めごとまで、いちいち事件として取り上げんやろうな……」とは、少なくともいえそうです。
 

◆ 刑法 第204条(傷害)
 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

◆ 刑法 第1条(国内犯)
1 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2 日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
 

 たとえ、国際線でオーストラリアの上空を飛んでいようが、JALやANA等の航空機の中は、法律上「日本国」とみなされ、日本の刑法が適用されるのです。

 というよりですね、こんな大きな条文をわざわざ大上段から構えて持ち出さなくても、日本人が他人にケガを負わせた以上は、その現場がどこであろうと日本の刑法に服していただくことになります。 インド洋の上だろうが南極だろうが、ナゾの地底都市だろうが、たとえ火の中水の中、日本の刑法が追いかけてくるわけですけどね。
 

◆ 刑法 第3条(国民の国外犯)
 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
  7.第204条(傷害)及び第205条(傷害致死)の罪
 

 「追いかけてくる」やらと、まるで日本の刑法が迷惑なものみたいな書き方ですけど、別にそんな意図はございません。 セクハラ教師を容赦なく死刑に処してしまうような「某国」の刑法よりは、カワイイものかもしれませんからねぇ……? なんて余計なこと書いている間にも、「某国」に配備されている核弾頭ミサイルの照準は、東京に合わせられているといいます。 ご……ごめんチャイナ。

 
 もちろん、暴力は決して良いものではありませんが、マシンをいじって遠隔操作でミサイル飛ばすよりは、相手の顔を見て自分自身のコブシや平手を振り下ろしてるほうが、よっぽど健全な営みなのかなぁ、と、つい思ってしまいます。

 たしかに、ギスギスしていて、なんとも深刻な日韓関係ですけれども、かろうじて武器でいがみ合うまでの間柄にはなっていません。 まぁ、韓国側が竹島へ、いろいろ物騒なものを持ちこんでいるようですし、今後どうなるかはわからないのですが。

 日本と韓国が、これから物心ともに、政治的にも文化的にも連携していくことが、世界経済にとって大きなメリットになりうる、ということを堂々と提示できれば、互いの仲を取り持ってくれる第三国がどこか名乗り出てくれるでしょうか……?

 んー、世の中そんなに甘かない?

 

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 『 か弱き者よ、汝の名は債権者なり 』
 債権回収のスペシャリスト、富久山さんは、「貸したものが返ってこない風潮」を、こう表現します。

 高率の利息でホイホイ貸した側が悪い?

 安易な破産に走る連中がおかしい?

 金を借りる側を保護する制度や書籍は多々あれど、「貸す側」「取り立てる側」の立場や悩みは、なかなか世間で知られていません。 「うーん、一理あるかなぁ」と、彼らの声に耳を傾けてみる価値はあります。

 あの衝撃の書「裁判の秘密」「司法腐敗」などで著名な、山口宏弁護士との対談形式。 司法権の強制力に頼らずに、人と人で向き合って取り立てる極意や、その難しさ、喜びなどが生々しく語られています。

 読み進めていくうちに、山口弁護士は、こういうアウトロー的な世界に、憧れorコンプレックスでもあるんじゃないの……? とも思えてきます。 そこもまた面白いですけれども。

 2000年に初版が出された新書ですが、安田好弘弁護士の強制執行妨害被疑事件(2003年に一審で無罪)についても厳しくモノ申しており、その点でもタイムリーな興味深い本です。

債権取り立ての法律学
債権取り立ての法律学 富久山 与志雄 山口 宏


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2006年2月12日 (日)

嗚呼…〒…郵便ポストの受難

>>> ポストにアイス投げ入れた男逮捕
 埼玉県警狭山署は3日、狭山市、派遣社員の男(42)を郵便法違反の疑いで逮捕した。調べでは、容疑者は3日午後7時半ごろ、同所の新狭山駅前郵便局前の郵便ポストに棒状のチョコレートアイスクリームを投げ入れ、郵便物を汚そうとした疑い。
 現場周辺では先月から計4回、アイスや液体石けんでポスト内が汚され、同署が余罪を調べている。容疑者は「仕事がうまくいかず、うさ晴らししたかった」と供述しているという。(毎日新聞)2006/02/04

 ヒドい話ですよ。さいわいこの日は寒波が到来して気温が下がっていたので、アイスクリームも溶けず、被害は最小限におさまったようですが。 (※埼玉県所沢方面の2006年2月3日20時の気温は1.2℃、同23時は-0.4℃……気象庁ホームページより)

 この犯罪には「郵便法」という特別法が適用されています。 普通はポストの中の封書やハガキ等に対する器物損壊罪が成立しそうなものですが、料金を徴収して郵便局が預かっている、という郵便物の社会的な重要性から、刑が重く設定されているのです。


◆ 刑法 第261条(器物損壊等)
 (※前略)他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

◆ 郵便法 第78条(郵便用物件を損傷する等の罪)
 郵便専用の物件又は現に郵便の用に供する物件に対し損傷その他郵便の障害となるべき行為をした者は、これを5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

 ポストに入れられた郵便物は「現に郵便の用に供する物件」にあたります。 また、郵便ポストや郵便配達のスーパーカブを蹴り壊したりした場合も、郵便法で刑が加重されると考えられます。 これらは78条にいう「郵便専用の物件」ですからね。

 郵便法って、あまり耳にしない法律ですけど、ニュースの記事をよく読んでいると、たまーに散見されます。

  

>>> 許せない!……年賀状用投かん口に人糞投げ込まれる
 5日午前5時40分ごろ、千葉県船橋市の郵便ポストに汚物が付着しているのを、年賀状を投かんしようとした女性が発見、県警船橋東署に通報した。このポストと、約800メートル離れた別のポストの年賀状用投かん口から 人糞が投げ込まれており、中にあった計147枚の年賀状が汚れていた。
(※中略)
 両ポストを管轄する船橋東郵便局によると、汚れをふき取ってビニール袋に入れた年賀状と、新しい年賀状、おわび用のタオルを持って差出人方を回り、事情を説明するという。同局は「一年に一度の思い出を踏みにじる許せない行為」と憤っている。(毎日新聞)2006/01/05

 私の名推理によると、犯人は、非常に脚の長い人物ですね。 ポストの投入口の高さにお尻の穴が届くぐらいの足長オジサンです。 その夜は新年会で酔っぱらって、ポストと公衆トイレを間違えてしまったのでしょう。

 まったく、いくら郵便事業が民営化されるからって、誰かの人糞を配達するほどのサービス向上は望むべくもありません。 切手はちゃんと貼ったんでしょうか。

 

>>> ポストに火付いた紙入れる 容疑の男逮捕
 郵便ポストに入った郵便物を燃やそうとしたとして、栄署は3日、郵便法違反(郵便用物件損傷など)の現行犯で、鎌倉市の無職(24)を逮捕したと発表した。犯行現場のポストは、県警学校のすぐ前。たまたま通りがかった学校入学中の男性巡査(26)が犯行を目撃し“御用”となった。
 調べでは、清水容疑者は2日午後8時45分ごろ、横浜市栄区桂町の県警学校前の郵便ポストへ、火を付けた紙を投げ込んで郵便物を燃やそうとした疑い。
 紙はポスト内部の受け皿に防がれて郵便物がある下まで落ちず、火もすぐに消えた。容疑者は調べに「火を付けたかった。そこにライターがあったからやった」などと容疑を認めているという。(中日新聞)2005/03/03

 「そこに山があるから登るのだ」という誇り高き名言に比べれば、なんとも涙が止まらない宣言です。

 本件は未遂に終わっているようですが、郵便法の第85条で「第78条……の未遂罪は、これを罰する」とハッキリ書かれちゃってますので、やはり言い逃れはできません。

 また、一見すると放火罪のようにも思えますけれども、金属製のポストの中に火種を入れたとしても、ポストごと燃え上がる可能性は極めて低いので、放火罪までは成立しません。 ポストの上から油を撒いて火を付けたなら、また話は違ってきますけど。
 

◆ 刑法 第110条(建造物等以外放火)
 放火して、前2条に規定する物(※建造物等)以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

 

 それにしても、ポストの内側には「受け皿」があるんですね。 へぇ~。 こういう良からぬ輩の行動に対する、最低限の防波堤としての役割を果たしているんでしょう。

 

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 「どうせ、アメリカ様に命令されてのグローバル大改正だろ?」と、いまさら斜に構えても仕方がありません。変わるものは変わるんです。会社法。

 まぁ、この方は相変わらず書き方が上手いですね。これだけ上手かったら、別にイラストは要らないんじゃ…… とは言わないお約束で。イラスト担当の方も頑張っていらっしゃいます。

 最初から「売れる」と分かっているからできる、この価格設定。 私もこの域まで達したいです。

 

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2005年7月27日 (水)

過ちは繰り返しませぬから

>>> 原爆慰霊碑の碑文に傷 ハンマー持ち自首の男逮捕
 26日午後10時55分ごろ、広島市中区中島町の平和記念公園にある原爆慰霊碑が傷つけられたと警備員から110番があった。約15分後、ハンマーとのみを持った男が「慰霊碑を傷つけた」と広島中央署に自首。同署は27日未明、器物損壊の疑いで広島市安佐南区、右翼団体構成員(27)を逮捕した。

 調べでは、容疑者は、原爆慰霊碑の「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」と書かれた碑文の「過ちは」の部分をハンマー(重さ約1.3キロ)とのみ2本で十数カ所傷をつけた疑い。傷はそれぞれ縦2.5センチ、横1.5センチ程度で、警備員が原爆慰霊碑を激しくたたいている容疑者をモニター室の監視カメラ映像で発見、110番したという。

 同容疑者は「碑文の『過ち』の文言が気に入らなかった」と容疑を認め「タクシーで警察に来た」と供述しているという。(中国新聞)



 思想的・宗教的に自分の行為を正しいと信じて行う犯罪を、刑法学の分類上、「確信犯」と呼びます。

 ただ、世間ではたまに誤用があるようで、事前に計画的に練られた犯行みたいなものを指して「こりゃ確信犯だなぁ」などと言われたりします。そりゃ単なる故意犯です。

 この右翼構成員は27歳。「過ちを犯したのは日本国民ではなくアメリカのはずだ」と供述しているとのことです。おそらく、右翼の先輩から吹き込まれたばかりのウンチクを真に受けてしまった、ということなんでしょうかねぇ。

 ヒロシマの原爆慰霊碑は、惨劇から7年経った1952年8月6日に除幕されました。『安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから』の文言は、石碑等の古典研究に精通し、自身も被爆者だった広島大学教養学部教授(当時)・雑賀忠義氏の手によるものです。
 しかし、その『過ち』を犯したというのは、いったい何者なのか、『過ち』の主語をめぐって議論が巻き起こったのです。雑賀氏ご自身は「広島市民であると共に世界市民であるわれわれが、過ちを繰返さないと誓う」と釈明していました。その一方で、同年11月、極東軍事裁判の弁護人であったインドのパール博士は、この石碑を訪れた際、「原爆を落としたのは日本人ではない。落としたアメリカ人の手は、まだ清められていない」と発言しました。このパール氏は、のちに同裁判の判事として、日本国に唯一無罪判決を出したことで知られますね。

 果たして、誰の『過ち』が繰り返されてはならないというのか。原爆を投下されるまで戦争を止めなかった日本国民、つまりわれわれか。それとも、原子爆弾という負の発明を生んでしまった人類全体を指すのか。あるいは彼の言うように、その負の発明を実際に使用したアメリカ合衆国の過ちを追及しているのか。だとしたら、「繰り返しませぬ」ではなく、「繰り返させませぬ」と書くべきではないのか。

 誓いの言葉に込められた、その文学的・詩的な表現がかえってアダとなった形で、1965年には、石碑にドロ絵の具がかけられる事件も起きます(最近ですと、2002年に赤いペンキがベットリかけられました)。やがて「碑文を正す会」と「碑文を守る会」と呼ばれる両組織が、その文面の解釈や改定をめぐって激しくぶつかり合いました。
 かつての「タマちゃんを見守る会」「救う会」の対立のほうが、はるかに平和祈念的かもしれません。

 くわしくはこちら → http://homepage.mac.com/misaon1/hamayuu/hibunronso.html

 広島市は、趣旨を正確に伝え、不毛な論争に終止符を打つために、1983年11月3日、日本語・英語の説明版を設置しました。「碑文はすべての人びとが原爆犠牲者の冥福を祈り、戦争という過ちを再び繰り返さないことを誓う言葉である。過去の悲しみに耐え憎しみを乗り越えて全人類の共存と繁栄を願い真の世界平和の実現を祈念するヒロシマの心がここに刻まれている」と記されています。

 個人的には、戦争が「過ち」か否かについては結論を保留したいのですが、核兵器の使用という「過ち」を三度繰り返さないという誓い・祈りという解釈で十分ではないのかと思っています。

 今日の平和記念公園には、傷つけられた受難の石碑に手を合わせたり、優しくさすったりする人々が後を絶たなかったようです。平和を祈る言葉に寄ってたかって、いかに裏読みしようが、原爆の犠牲者に向けてその冥福を祈りつづける国民の気持ちは変わりません。石碑の言葉がどう定義されようが、静かな川の流れは絶えず、原爆ドームは骨組みのままそびえ立ち、あいかわらずハトはハトを追いかけ回しています。

 容疑者のキミは、「過ちを繰り返すべきでないのはアメリカだ」と主張していますね。しかし、自分の考えを正しいとして、破壊活動という実力行使に及ぶのであれば、キミが批判している「卑怯で往生際の悪いイエローモンキーは殲滅すべし」という考えを実行に移した当時の「鬼畜米英」と、やっとることは同水準です。

 何が『過ち』なのか、おわかりでしょうか。



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