2012年10月 6日 (土)

日本史上に燦然と輝き、シビれる「弁護士弁論」の備忘録(4) 『極東国際軍事裁判(東京裁判)一般最終弁論』 日本側弁護人・高柳賢三弁護士 1948.3.4

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 (Illust ACより)

 

 東京裁判。
 太平洋戦争当時の内閣総理大臣・東条英機などの首脳陣が、アメリカなどの戦勝国などから招集された裁判官により、「戦犯」としてことごとく死刑判決を言い渡されたアレです。

 その罪名が「人道に関する罪」という、どこから引っ張り出してきたのか不明なシロモノ。少なくとも、戦争が始まった時点では存在しない罪であり、そんな守りようのないルールで人を裁けないことは、法学部の1年生でも理解できます。

 

 仮に戦争責任というものがあるとすれば、その国内において、国民一人ひとりの自省なども踏まえて問われるべき概念。 せめて、戦争で何らかの被害に遭った国の人々が追及するのなら、まだ理解の範囲内です。

 ただ、戦勝国が「日本が起こした戦争が違法なので、それによる殺害行為も違法」とし、当時の政府首脳に対し、一般的な殺人の罪を着せようというのは、無茶な企みでしょう。

 

 確かに戦争は良くない。軍人・民間人問わず、おびただしい数の人命が犠牲となった。

 ただ、勝った国による殺害を棚に上げて、敗けた国の殺害ばかりを犯罪として裁く行為を、公正な裁判と呼ぶことは不可能です。
 裁判のやり直しを求めたくても、今では法廷そのものが存在しない。 力に物を言わせた理不尽なリンチなのです。

 少なくとも、民間人を狙って焼夷弾や原爆を落としたような国に責められたくありません。

 

 というわけで、日本側弁護団のひとりである高柳氏は、一国の首相らを殺人罪に問う「裁判」に鋭い異議を唱え、次のような弁論を行いました。

 

 

 

 「兎の手品」の比喩は、今日の流行であるようだ。

 イギリス国会において国内輸送機関の国有に関する政府の計量を批判するにあたって、レディング卿は、政府は比較的短い期間に「国有という帽子の中から社会主義の兎」を取り出すことに、すこぶる堪能であることを示したと言った。

 また、全印議会において、アチャリア・クリバラニ
(原文ママ)氏は、イギリス側の提示した憲法草案を批判して、ヒンドスタン語で、イギリス人は都合の好いときにいつでも帽子の中から兎や卵を取り出すと言った。

 私もこの世界的流行を真似て、検察側の議論を特徴づける精巧に編み上げられた詭弁の網を一気に解消せしむるために、兎の手品にたとえることを許されたい。

 手品師は通常の帽子を借りてきて、これをテーブルの上に置く。そして、これに向かって何やら呪文を唱える。

 さて、帽子を取りあげる。すると、テーブルには小さな兎がうようよ走り回っている。帽子の中にもともと兎がいたのではない。手品師が兎をその中に入れたまでである。

 検察側の議論は、まさにこれと同様である。
 検察側は普通の帽子、すなわち国家国民を拘束する国際法という綺麗な、そして上品な周知のシルクハットを持ってきて、これをテーブルの上に載せる。そして、これに向かって呪文を唱える。

 その呪文の中から「違法」とか「犯罪的」とか「殺人」とかいう言葉が次第に大きく響いてくる。

 そして、帽子を取りあげると、たちまち裁判所の中には国内法のここかしこから借りてきた新生の国際法理論が現れて観衆を驚かせる。

 どこからそれらを持ってきたかは重要ではない。もともとそれらの理論がシルクハットの中に無かったことだけは確かである。検察側において、それらをシルクハットの中に入れたのである。

(『東京裁判却下未提出弁護側資料 第7巻』 国書刊行会 P.49~50)

 

 

 ……うーん、ウマイたとえなのかどうかは微妙ですが、なかなかユニークな展開の主張ですので、個人的には気になりました。

 参考資料名は「却下未提出」となっていますけど、この最終弁論は実際に法廷で行われています。

 ちなみに、「アチャリア・クリバラニ」は速記者の誤記らしいのですが、正しい氏名は不明です。

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2012年10月 2日 (火)

東電OL再審と小沢一郎控訴審で注目! 東京高裁・小川正持裁判長って、どんな人?

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小川正持 (おがわ・しょうじ)
1949(昭和24)年7月25日生まれ(63歳) しし座

 

■ 逸話 ■
 
・ オウム真理教の元教祖に関する一審、初公判から全257回の審理に一貫して関わった唯一の裁判官。途中で阿部文洋裁判長(当時)の異動に伴って、裁判長に就任。死刑判決を言い渡した。

・ 最高裁図書館長時代は、同図書館を研究者以外にも積極的に使ってもらおうと、インターネット上での書誌情報の公開に取り組んだ。

・ 東電OL殺害事件の犯人とされ、無期懲役が確定し服役していたネパール人男性につき、無期懲役判決が取り消され無罪が示される見込みの やり直し裁判(再審)の裁判長を務める。今年10月29日に初公判が行われる。

・ 陸山会事件(新党「国民の生活が第一」代表の小沢一郎被告人にかけられている政治資金規正法違反容疑/一審無罪)の控訴審裁判長を務める。今年11月12日に判決。

■ プロフィール ■

 岐阜県出身。小学校からは名古屋で暮らした。
 
 明治文学が好きで、小さいころから、父親の書棚にあるさまざまな本を引っ張り出しては読んでいたそう。現在でも、どんなに忙しかろうと週に1冊は読む。2010年、前橋地裁所長に就任した際は、地元群馬ゆかりの文豪・萩原朔太郎の詩集を買い込んだという。

 その他の趣味は、植物観賞や庭いじり、囲碁。家族は妻と一男一女。
 ラブラドールレトリーバーを1頭飼っているらしい。

 「頭から決めつけず、かといって鵜呑みにせず、いろいろな人の話を、できる限り聴く」のが自らの信条だと語ったことも。

 ※以上のプロフィールは、前橋地裁所長就任会見での回答を再構成。
 

 名古屋大学法学部卒
 名古屋修習 29期(1974年司法試験合格・1977年任官)

1977年4月(27歳) 東京地方裁判所 判事補
1983年6月(33歳) 新潟地方・家庭裁判所 判事補
1986年4月(36歳) 千葉地方・家庭裁判所 木更津支部 判事補
1987年4月(37歳) 判事に任命される。
1990年4月(40歳) 東京家庭裁判所 判事
1991年4月(41歳) <最高裁判所 調査官>
1995年4月(45歳) 東京地方裁判所 判事
1998年4月(48歳) 東京地方裁判所 部総括判事(裁判長)
2005年11月(56歳) <司法研修所 教官>
2007年1月(57歳) <最高裁判所 刑事局長・図書館長>
2010年1月(60歳) <前橋地方裁判所 所長> (前橋簡易裁判所判事)
2011年5月(61歳) 東京高等裁判所 部総括判事(裁判長)

※ <>内は、裁判の現場から離れていた時期

 

 

 

 ……いやあ、かなり凄い経歴です。

 定年まで後2年足らずなので難しいですが、あと一歩、もし今ごろ東京高裁の長官に任命されていたら、次は最高裁へ入れたぐらいの方でしょうね。

 2~3年ごとの全国的な転勤が宿命といわれる日本の裁判官にあって、東京からほとんど離れていません。若い頃の新潟を含めても、全て関東甲信越地方でまとまっていますし、東京地裁で連続的に10年以上いられる裁判官もなかなかいません。

 また、東京高裁のヒラ判事でいた時代をすっ飛ばして、いきなり部総括判事に就任するというのも、異例というほどではありませんが珍しいことです。
 法廷から離れて、司法行政という内部的な調整部門でも必要とされた人材ということで、最高裁の人事部から高い評価があったのではないかと思われます。
 
 プロフィールや逸話などからしても、すごく地に足の着いた質実剛健な人柄が窺えますしね。

 事件は入ってきた順に、各刑事部へ“自動的に”振り分けられるといわれていますが、現役の国会議員が起訴されているわけですから、やっぱり地裁の大善文男さんも含め、「無茶な裁判官には任せられないな」と、実績ある裁判長のいる刑事部へ意識的に回しているのではないかな……? と推測されます。

 ほぼ刑事事件専門で裁判官キャリアを渡り歩いてこられたようで、判決遍歴は壮絶です。誰でも名前ぐらいは知っているような有名事件を次々と担当し、死刑・無罪・無期懲役にいくつも関わった経験があります。控訴審の裁判長として、逆転無罪と逆転有罪、両方出しています。

 陸山会事件の控訴審。一回のみで結審したのはどういう意図があるのかは、なかなか読み切れませんが、小川さんが昨年に言い渡した裁判員裁判を破棄しての逆転有罪判決は、いちおうそれなりの理由があるようですしね。
 だから、一審で出てきた材料で判決を出す自信があるとの意図を前提にすれば、小沢さんについて、指定弁護士側の控訴が棄却される可能性はかなり高く、70~80%ぐらいあると思っています。いや、もっとかな。

 

■ 判決実績 ■

 

■ 東京地裁 判事補時代 ■ 1977~83年

○ 被告人18名に対して無罪判決を言い渡すという異例の経過をたどり、新左翼メンバーに対する警察の誤認逮捕や拷問的取調べが明らかになった「土田邸・日石・ピース缶事件」では、左陪席を務めていた。

 

■ 最高裁 調査官時代 ■ 1991~95年

○ ロッキード事件(丸紅ルート)、丸紅元会長の故・桧山広被告人の上告を棄却し、実刑を確定させた件では、最高裁判事を陰でサポートする調査に関わったという。

 

■ 東京地裁 判事時代 ■ 1995~98年

○ 1997年4月、「東京埼玉連続幼女誘拐殺人事件」の被告人に死刑判決を言い渡したときは、右陪席を務めていた。

 

■ 東京地裁 部総括判事時代 ■ 1998~2005年

 
<2002年~>

○ 1994年頃から6年間にかけ、自治労の関連会社「ユー・ビー・シー」(UBC)で起きた不正経理事件で、約8000万円の業務上横領にかかわった同社部長に執行猶予付き懲役3年。同社係長に執行猶予付き懲役2年6月。共犯とされた元公認会計士と元税理士にも、それぞれ執行猶予付き有罪。
 本件発覚を恐れたUBC側を恐喝し、約4300万円を脅し取った同社の元会社役員については懲役2年6月の実刑。
 

 
<2002年>
○ 女優の松たか子のアルバム中にある1曲が、自分たちが作詞作曲した曲に似ていることを不満だとして、松たか子CD制作会社の社長名で「店頭回収のお願い」と題する偽の文書を作り、都内のCD販売店などにファクスで送信し、偽計業務妨害の容疑で起訴された男女2人組に、執行猶予つきの有罪判決。

 
 
<2003年>
○ 破たんした旧東京相和銀行(現東京スター銀行)の見せ金増資事件で、電磁的公正証書原本不実記録、同供用罪に問われた元会長ら旧経営陣5人全員に、執行猶予つきの有罪。
 「経済の減速傾向の中で、銀行の存続を図り、再建に望みをつなげたいという心情に酌むべきところもある」などと執行猶予の理由を述べた。

○ コンサルタント会社「業際都市開発研究所(業際研)」による口利き事件。当時の茨城県石岡市長が、約9億円の水道関連設備工事の入札で、予定価格を日立製作所に漏らし、落札させ、市長が業際研代表から200万円を受け取るという加重収賄・競売入札妨害事件。
 市長や日立の下請け会社を含めて、起訴された関係者全員に執行猶予つき有罪判決。市長については、「反省の態度を示しており、一度はわいろを断ったことなどから、積極的に収受したとはいえない」と、執行猶予の理由を述べた。

 
<2004年>
○ オウム真理教元教祖に死刑判決。「救済の名の下に日本国を支配して、自らその王となることを空想したもので、犯行の動機・目的はあさましく愚かしい限りというほかなく、極限とも言うべき非難に値する」等と理由を述べた。

○ 東京、千葉、埼玉の3都県で、宅配便業者を装って家へ押し入ったり、通行中の女性を無理やり車に乗せたりする手口で、計12人の女性に暴行を加え、現金計約140万円を奪った強盗強姦などの罪に問われた男に、無期懲役の判決

 
<2005年>
○ 東京港でフリールポライターの染谷悟さん(当時38歳)の遺体が見つかった事件。彼に雑誌記事中で「復讐請負人」だと名指しされた男が、殺人などの罪に問われ、その被告人に懲役16年を言い渡す。「自らの社会的地位を脅かす者を力ずくで排除するという、短絡的で自己中心的な犯行」として。
 また、共犯者の元潜水士にも懲役14年

○ 「よど号」ハイジャック事件(1977年)の犯行グループメンバーと北朝鮮で結婚した妻が、のちに外務大臣から「日本の利益や公安を害する恐れがある」としてパスポート返納を求められたのに応じず、旅券法違反の罪に問われた件。執行猶予つきの懲役1年6か月を言い渡す。
 「テロを支援する恐れがあるとして返納命令を受けながら、長期間旅券を返納しなかった刑事責任は重い」として。
 被告人は、拉致被害者の有本恵子さんの教育係だったとされている。

○ 俳優の萩原健一が、暴力団や国税局、警視庁の名前を出し、途中降板した映画のプロデューサーに出演料1050万円を要求する脅迫電話をかけ、恐喝未遂の罪に問われた件で、執行猶予付き懲役1年6か月を言い渡す。
 「暴力団の力を借りて危害を加えると脅していることから、罪の成立は明らか」とした。

○ 以前勤めていた居酒屋に合鍵で侵入し、18歳のアルバイト店員の男性を包丁で刺して殺害し、売上金15万円を奪ったとして、強盗殺人などの罪に問われた25歳の元店員に、無期懲役判決
 
○ マンションなどのエレベーターに一緒に乗り込み、脅して屋上に連れ出すなどの手口で、当時10~17歳の少女5人に乱暴するなどした強姦致傷事件で、23歳の男に懲役17年の判決。「自分よりかよわい少女ばかりを狙い、卑劣極まりない」と。
 
○ 5月のGW中に宮城県から東京へ遊びに来た19歳の女性に声をかけて金銭を要求するが、断られたので殺害した24歳の男に、無期懲役の判決。「あまりに身勝手で愚かしい限り」と理由を述べた。

 

 
■ 東京高裁 部総括判事時代 ■ 2011年~

<2011年>
○ 大学キャンパス内で、元交際相手の女性を包丁で刺して重傷を負わせ、殺人未遂の罪に問われた21歳の男に対し、甲府地裁で言い渡された懲役3年の判決を支持。

○ メキシコから覚せい剤6キロを密輸した罪に問われたメキシコ人の男について、「荷物の中に覚せい剤が入っていたとは認識していなかった」として、裁判員裁判で無罪判決が言い渡されたが、日本に来る前後で、現地の主犯格からパソコンなどを受け取り、連絡を取り合っていたと認定。「原審は事実誤認がある。被告人には密輸の故意があった」とした。
 逆転有罪で懲役12年、罰金600万円。裁判員裁判で出された無罪判決が高裁で破棄されるのは過去2例目。

 
<2012年>
○ 朝鮮総連中央本部の土地・建物や、現金4億8400万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元公安調査庁長官(緒方重威)と元不動産会社社長に言い渡された執行猶予つき有罪判決を支持。

○ 交際相手の遺体を長野県の別荘地に埋めた男(48歳)に対し、長野地裁上田支部が言い渡した、懲役2年の実刑(殺人の点は嫌疑不十分で不起訴)を支持。「都内から遺体を運び、簡単に発見されないよう購入したスコップで土をかぶせるなど計画性が認められ、量刑が重すぎるとは言えない」とした。

○ 東急田園都市線内での痴漢の容疑がかけられた40代男性に対し、横浜地裁川崎支部が言い渡した有罪判決を破棄。「被告人は当時、酒に酔っていたうえ疲労しており、ふらついた男性の手などが女性に触れた可能性がある。意識的に痴漢を行ったとするには合理的な疑いがある」「女性が被害を誤解したおそれがある」として、逆転の無罪判決

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2012年6月27日 (水)

「特別傍聴券」って、知ってますか?

 いま、被告人が犯行を否認している下関女児殺害事件の裁判員裁判が山口地裁で行われています。判決が出るのが7月下旬で、38日間にも及ぶ審理期間を経る、かなりの長期裁判となります。

 初公判は、傍聴券が抽選となるほどの注目度を集めていたそうです。

 そこへ、ジャーナリストの片岡健さんが取材に行っているのですが、興味深い報告を得ました。

 その法廷の傍聴席に、6人の検察事務官がズラリと座っていたらしいのです。みんな名札をぶら下げていたらしいので、山口地検の者だということはわかったのですが……。

 いったい何の用なのでしょう。彼らが傍聴席を占拠したことで、6人の傍聴希望者が帰らされているはずなのです。


 一般傍聴席を減らす目的、裁判の公開原則に反する目的を疑われても仕方ないでしょう。裁判の進行上、何か知られると都合が悪いことでもあるのか。
 
 ここからが片岡さんのジャーナリスト魂の真骨頂なのですが、休廷中に、何の目的で座っているのか、6人の検察事務官に尋ねたらしいんですね。

 すると、「特別傍聴券」なる紙を見せて、「裁判所から認められてるんだ」「法廷の検事をサポートする目的で待機している」という答えが返ってきたそうなのです。

 普通の傍聴券とは別に、特別傍聴券なるものが存在することを、私は初めて知ったのですが、なんでも、本来は犯罪被害者等の事件関係者が、法廷を優先的に傍聴できるよう、裁判所が気をきかせて配布するものだとのことです。

 もちろん、事件関係者が優先的に審理を傍聴できることは知っていましたが、その身元は身分証などで確認すれば済む問題で、わざわざ「特別傍聴券」という無記名のチケットを配布する必要はないわけです。
 
 そんなことをするから、検察庁から検察事務官へ、まるでダフ屋のように傍聴券が流れるような真似を許してしまうのです。
 
 そもそも、法廷の事務官に検事をサポートする目的が仮にあったとしても、1人で十分でしょう。6人も必要ありますか? タンスか何か運ぶんですか?
 
 もしかすると、犯罪被害者等の事件関係者に配るために、山口地検が特別傍聴券を6枚確保したものの、何かの都合で6人全員来られなくなったのかもしれません。

 でも、途中で急きょ駆け付ける場合も考えられるから、事務官が傍聴席を温めておいてあげた…… のかい?
 
 公正な裁判が行われているかどうかを、主権者である国民が監視することが建前である裁判公開制度ですが、結果的に一般傍聴人の入廷が制限されているとしたら、これは問題ですよ。
 
 しかも、検察事務官6人だと思われていた傍聴席占拠組の1人が、山口地検の次席検事(ナンバー2)だったとのことです。
 
 地検にどういう事情があるのか知りませんが、少なくとも、事実を公表せずにコソコソやることではない。何が「公益の代表者」だ。

 片岡さんは、法廷の取材と並行して、検察庁への抗議も行っているとのこと。お疲れ様です。気を付けて取材を続けていただきたいです。

 
 
 個人的には、そういった注目裁判の模様は、くじ引きを外してしまった傍聴希望者に向けて、特別に裁判所のロビーにあるモニターに映し出してサテライト生中継すべきだと考えています。 そうすれば傍聴席の数を気にする必要がないので。

 
 
 

※追記※ 2012/07/02

この投稿に一部不正確な面がございました。

片岡さんによると、「特別傍聴券」と書いてあるのを横から確認して、傍聴席を6席も占拠している目的を質しましたところ、「裁判所の訴訟指揮にかかわることなので、回答できない」という答えしか返ってこなかったのだそうです。

片岡さんが公判中に彼らの様子を観察していて、「法廷の検事をサポート」する目的で待機しているような印象を受けたとのことですので、その目的を検察から説明されたわけではないそうです。

現在の片岡さんは、傍聴取材と並行し、この問題について報じようとしない記者クラブに対し、取材を申し込んでいる最中だそうです。

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2012年6月 8日 (金)

石巻に乗り込んだ、ボランティア偽医者のお言葉集

>>> 被災地で活動の自称医師の男に懲役3年

 東日本大震災の被災地、宮城県石巻市で偽造した認定証を使って医師を自称したなどとして、医師法違反(名称の使用制限、無資格医業)などの罪に問われた住所不定、無職米田吉誉被告(42)に仙台地裁(須田雄一裁判官)は8日、懲役3年の判決を言い渡した。求刑は懲役3年6月。

 検察側は論告で「医師を詐称して得ていた信用を失うのを恐れ、医療行為に及んだ」と指摘。弁護側は「詐称は、被告が医者であるとの周りの誤解が発端だ」と寛大な判決を求めていた。

 起訴状によると、米田被告は石巻市で昨年6月ごろ、医師国家資格認定証の写しを偽造して社会福祉法人に提出。昨年4~7月、1歳男児ら3人に、医師資格がないのに薬の塗布の指示や鎮痛剤の投薬といった医療行為をしたとしている。

 米田被告は石巻市でボランティア活動をしていたが、医師と報道されたことなどで不正が発覚した。(共同)

 [2012年6月8日12時11分]
 

 今日は仙台地裁におりました。

 昨年から東日本大震災に乗じた各地の犯罪を追いかけている一環で、この件は初公判から観続けてきたわけですが、単なるカネ目当てでない犯行です。

 こういう表現がふさわしいかわかりませんが、「新鮮」に感じました。

 震災発生直後から、特に何の縁もない石巻へ飛び込み、海外からの医師団に同行して、いろいろと身体を動かして手伝いをしているうちに、彼も医師だと勘違いされ……

 詐欺師の前科があって、なかなか話を信じてもらえない自分だって、「医師を名乗れば周囲が頼ってくれる」という事実に快感をおぼえたのでしょう。

 義侠心や見栄、自尊心やボランティア批判など、人間の様々な感情がごちゃまぜになった、様々な意味で興味深い事件でした。

 

 もちろん、医師でもないのに、知ったかぶりの治療をして被災者やボランティアメンバーの健康を危険にさらした罪は重いし、日本財団に100万円の支援金を申請して騙し取っているわけですから、途中からカネ目当てに切り替わっていることは非難されるべきです。

 詐欺の罪で起訴されている人の言動は、話半分で聞かなければならないのかもしれません。

 でも、3月12日の時点で南相馬に入り、さらに縁もゆかりもない石巻へ飛び込んで、炊き出しや物資調達などに奔走した行動力と勇気は現実にあったわけで。

 そのうえで、彼の法廷における数々の発言を振り返ってみます。

◆第1回被告人質問(2012/02/10) 弁護側

 「テレビやインターネットで、大震災の深刻な被災状況を知った。(私が当時いた)福井は何ともないが、『これは日本が引っくり返る』と思った。過去に結婚をしていたこともあり、子供たちの将来の為にも、このままじゃいけないと」

 「経験上、今までもらっていたものと同じ薬をもらうと患者は安心すると知っていた。同じ薬が無かったら、似たものを処方していた」

 「本来、メディカル面の支援は日赤がやるべきなんです。災害支援協議会がすべきではない。具体的ニーズを日赤が拾い上げないんです」

 (具体的に、石巻で何をすればいいと考えていましたか?)
 「とにかく『役に立てればいい』という状態でした」 

 (薬やマスクも持って行ったのは、何のためですか?)
 「人の役に立つんじゃないかと思い、手当たり次第に調達した。大阪の西成界隈で安く手に入れました。西成では処方箋が必要な薬を普通に売っているんです。薬は自分たちの為に使うつもりで、あとはもともと車の中に常備してあったもの」

 (過去にも医師の肩書きを名乗ったことがあったそうですが、別に医療知識があったわけではないんじゃありませんか?)
 「勉強は、ずっとやってました。でも、医師になれるはずないと思ってましたし、お金を取って医療行為をしたこともありません。仮に国家試験に受かったとしても、前科があるので」

 (医師でなくても、がれきをどけることでも、石巻の人の役には立てたんじゃないですか)
 「正直、医師の肩書きがあったほうが、より役に立てるのでは、とは思いました」

 (では『医師』として、被災地で何を達成したいと思っていたんですか?)
 「特に具体的に…… やりたいことはなかったです」

 

◆第2回被告人質問(2012/03/16) 弁護側

  
 (あなたの当初の所持金、10万円は何に使ったんですか?)
 「炊き出しや移動のための費用です。炊き出しにはガスを使いますし、自分たちは炊き出しの素人なので、どうしてもガスを使いすぎる。また、電気は発電機から供給するので、そのガソリン代がかかる。1日7000円ぐらい。それと車のガソリン代。 でも、ボランティアに対して寄付で支援してくれる人がいて、手持ちのお金はあまり減らなかった」

 (そういった費用は、あなたたちの持ち出しなのか?)
 「ボランティアは『自己責任・自己消化』といわれてます。本来は自分たちで用意しているし、大きなボランティア団体はかわるがわる物資を被災地にもってきていた。 私たちは、たまに支援物資で腐りそうになっているものを許可を得て炊き出しに使ったりしていた。1日1回、夜に300人以上を相手に食事を配った」

 (医師を名乗って日本財団から詐取した100万円の助成金を何に使ったか)
 「45万円は炊き出しや移動のガソリン代・ガス代、25万円は車の修理・パーツ代、25万円は彼女に渡した。競艇に5万円ぐらい使った。パチンコに1万円ぐらい。スナックで10万円以上は使った」

 (それを合計したら100万円以上になるが、それは自己資金も含めてのことか)
 「はい」

 (あなたは100万円のうち、どれくらいを被災地のために使ったという認識か)
 「炊き出しの45万円と、車の修理25万円」

 (あなたが実際に行っていた医療行為について尋ねますが、まったく的外れということではない。以前にも医師を名乗っていたときに勉強したのか)
 「はい」

 (どうやって勉強したのか)
 「インターネットで」
 
 (なぜ、医師を名乗りたかったのか)
 「昔から、何でも知識を吸収したいということがあって、そのひとつ」

 (そこまであなたを駆り立てたものとは何なのか?)
 「………わかりません」

 (石巻にはいつまでいたのか?)
 「8月初旬ぐらいまで」

 (そのあと、秋湯温泉に行っていたのはなぜか)
 「このままじゃ、自分が壊れちゃうんじゃないかと思いまして。社会が騒ぎ出していることと、自分のやってきたことの間に温度差があって。今回起訴されている内容は、検察が調べてきたことであって、私はもっと多岐にわたって活動してきた」

 (それで?)
 「…………。」

 (自分を偽って活動してきたことが、自分の重荷になってきたということか?)
 「(涙声で) 実際に被災地の現実を見て、現実ってこうなんだなと。震災から何カ月も経って、テレビとかで『私はこういう活動をしてきました』とか『自衛隊の活躍』とか報道されてますが、私のやってきたことは、そんな綺麗なことではなく、街で会った人に対して責務を果たす、ボランティアはそれだけです。それを給料をもらいながらやっている人とは……」
 
 (どういうことか?)
 「あんまりオフィシャルには言えないかもしれませんが、被災地に医師が早い段階で入っていれば、救えた命があった。医師がいないから亡くなった方もたくさんいた。茶番だなと正直思った。もっと困っている人はたくさんいた」

 (そのあと、北海道に行っていますね)
 「はい、育った場所なので」

 (なぜ、育った場所へ行ったのか?)
 「………頭を切り替えたかったから。いずれ、警察にぱくられることはわかっていたので、そろそろメディアが騒ぎ始めた頃だったので」

 (北海道のどこにいたのか)
 「湖です」

 (湖で何をしていたのか)
 「昔から、フライフィッシングが好きで、釣りをやっていました。そういうフィールドが好きで」
 
 (どうして釣りをやりたかったのか)
 「ストレスが当時は物凄かったんです。いろんな人からいろんなことを言われて、自分の心を違う方向へ向けたかった。警察が、日赤とかそういう病院に調べをかければ『そんな医者は知らない』と言うでしょう。でも、私は石巻の人たちから治療依頼の電話をガンガン受けていて、でも、行きたくないんですよ、正直」

 (被災地で医師と呼ばれて、気分は良かったか?)
 「気持ちよくはない。今思えば、なぜそんな流れになってしまったのか」
 
 (身の丈以上に、自分を大きく見せたいという願望はあったか?)
 「あったと思う。これからは、身の丈に合った生き方をしていきたい」
 
 (あなたの活動は石巻の役に立ったと思うか)
 「役に立ったとか……。こんなところ(法廷)に来てまで、いろいろ役に立ったと言えるような立場ではないです」

 

 

 ……ほかにも、いろいろと発言はありますが、ブログの投稿がやたら長くなって、それで一人で潰れて3日坊主になるのが私の癖なので、今日はこれくらいで抑えさせていただきます。

 まだどうなるかわかりませんが、今後、ある媒体で記事になるかもしれません。良くも悪くも「こういう人間がいた」という事実を、私なりに残したいと思います。

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2011年2月25日 (金)

このスピード時代に、民事裁判は付いてこられるか? …「民事審判」という試み

 気づいてみたら、すっかり金曜日になってしまいましたが、日曜に大阪で開かれた「日本裁判官ネットワーク」シンポジウムの模様をお送りします。

 テーマは「民事紛争解決の新しい試みに向けて」。
 
 この新しい試みとは、主に民間人同士の法律的トラブルを、この高度情報化・ビジネス化時代に即して、いかに“スピーディー”に解決へと導くか、そういう方向への取り組みのようですね。

 民事訴訟法での争点整理と集中審理方式が形骸化していると危惧し、民事裁判の真の集中審理を目指して、京都で積極的な実践に取り組んでいる井垣敏生弁護士(元高裁裁判官)の話もありましたが、それ以降、メモを残しているところを重点的にお送りしたいと思います。
 
 細かいニュアンスの面で、元の発言と違っている可能性がありますが、ご容赦ください。

 
 

■ 中本和洋弁護士 (日弁連 立法対策センター副委員長)

 数年前にできた新しい制度「労働審判」は、労働事件を専門に扱う制度であるが、平均七十数日で、ほとんどが解決している。迅速な紛争処理に貢献し、実際に成功しているといえる。
 これをもとにして、「民事審判」というものを創設したい。

 「民事審判」で想定しているのは、それほど複雑な事案解決がいらないものを類型化して取り上げるようにしたい。あまり専門的な知識がいらないのではないか。
 それほど多額でない紛争。私は1000万円程度まで、という想定をしている。そうすれば3ヶ月ぐらいの間で解決できるのではないか。
 そこで力をつけた弁護士が、ゆくゆくは何千万、何億という「重装備」の民事紛争の解決に乗り出して欲しい。

 「一審の審理は2年以内で終わらせる」という法律ができて、裁判官は忠実に守り、迅速化が図られている。

 そもそも裁判というものは、時間とお金がかかる。8割の国民がそう思っているというアンケート結果もあるようだ。
 
 訴額1億円の訴訟に要する印紙代(訴訟費用)は、一審・32万円、二審・48万円、最高裁・64万円。他の先進国と比べて、あまりにも高すぎる。そのわりに認められる賠償金が少ないというアンバランス。
 民事扶助制度という、国が訴訟費用を立て替える制度もある。だが、生活保護受給者以外は償還制となっている。

 収入が低くて、民事訴訟を提起したくても訴訟費用を負担できず、思いとどまっている人のために、裁判保険制度を創設したい。日本ではせいぜい交通事故処理の場面で、自動車保険が活用されているのみ。「権利保護保険」という案もあるが、ネーミングが良くない。「弁護士費用保険」がいい。
 
 ドイツは離婚裁判などにまで広く保険が適用されているようだ。

 日本の民事裁判、約23万件のうち、14万件が過払い関係。一般事件はむしろ減っている。景気は回復しない、正義は実現されない、では、裁判に対する世間の期待が減退してしまうのもムリはない。

 

(会場からの質問)

●私は民事提訴をしたことがあるが、弁護士運が悪い。代理人の行動が間違っている場合には、どれだけ依頼人は修正できるのか。

 ⇒ 一般論としては裁判に臨む権利はある。その場で発言を修正することもできる。ただし、その場でしかできない。自分の名前で追加で証拠を出すこともできる。
 
●録音申請、昔と違って誰にも迷惑をかけない。弁護士は誰も申請しない。弁論の更新は、裁判官が自分の名前を名乗ることすらしない。裁判官は突然結審しようとする。行政訴訟では、被告の国を、思っても見なかった理由で裁判官が勝たせる。これは暗黒裁判。裁判所のコピー代も高すぎる。

 ⇒ 次回期日が2ヶ月後とか、非常に審理の間隔が開きすぎると思う。日本の民事裁判官が忙しすぎることも原因。二回試験で上位100人、のような優秀な人は、昔は渉外事務所へ行っていたが、今は不景気ゆえ裁判官になる。
 突然結審することについて、大阪はマシだが、東京では1回で結審させて和解期日を入れる傾向。

●訴額1000万円の裁判は、すでに高額だと思う。これを迅速化することに国民は納得するだろうか。保険があるためにムダな上訴がなされるのではないか。誰が負担するのか。

 ⇒ 訴額の話は感覚的なもの。60万以下は本人でできる。140万以下は簡裁の管轄。ほとんど代理人は就かない。1000万だと、1年ぐらいかけたら合わないと考える国民が多いのではないか。

 ⇒ 保険は、安い弁護士を保険会社が探して契約する。弁護士費用が低く抑えられるのは、業界にとって弊害かもしれないが、乱訴のおそれというのは、諸外国で意外に例がない。訴訟やること自体が負担。今は訴訟数をボトムアップさせる時期だと思う。
 
●陳述書を「陳述します」と言うだけで裁判が終わってしまう。 傍聴人には何をやっているのかわからない。

 ⇒ 刑事の公判前整理の参考にして、事前に準備をしている。傍聴人に理解できるようにするために、弁論の書面を読み上げることは時間の無駄だと思っている。
 
●日本でも弁護士強制主義を採用してはどうか。

 ⇒ ドイツなど、個人の負担なく弁護士報酬をきっちり確保できるところでないと難しい。日本では国民の理解が得られないと思っている。簡裁代理司法書士については、現状のままでいいと思っている。しかし、士業それぞれの業務は一部重なるところが多いので、いずれ弁護士資格に包含されるのではないかと思っている。

 
 

■ 浅見宣義裁判官 (神戸地裁伊丹支部長)

 
 労働審判手続きで採用されている「L方式」。私はこれを知り、裁判官として非常に感動した。日本人が作った「宝物」であると。これは民事手続きに広く導入したい。
 
 札幌と福岡では、すでに近いものが進めてられている。
 3回の審理で本当に終わるのか危ぶまれていたが、だいたい2回で終わっている。
 
 労働審判は、審理の迅速化により利用者が増え、今まで埋もれていた紛争の「掘り起こし機能」を果たしている。
 平均74.6日間で終わっている。調停委員会方式を採用
 交通事故・不動産取引などで、ある程度主張が予想できるので、計画的に審理でき、迅速化が図られると考えられる。
 証拠書類の「一括提出主義」について、立法者は「迅速化の秘密兵器」だと語っているが、そういう部分もあると思う。

 17条決定では、柔軟な和解的な解決を図れる。
 A類型(ほとんど2回以内で解決) B類型(難しい争点がありそうなもの、訴訟手続きも混じる)
 労働審判の経験者は、「早く導入しましょう」という声が多い。

 
 
 
■ 井土正明さん (元高裁判事→簡裁判事(退官))

 民事調停には2つある。訴訟を進めていた事件を調停に移す場合と、簡裁が調停申し立てを受けて、最初から調停の場に付する場合がある。
 
 民事調停は、容易・安価・柔軟・非強制・当事者尊重など、非常に優れた点がある。しかし、相手が協力的に応じなければ進まない難点もあり、充分に活用されていない。
 
 調停を活用するためには、広報に頼るだけでなく、調停委員の経験や意見をくみ入れて、国民が利用しやすいものになるよう、裁判官が工夫の努力をしていく必要もある。
 
 調停官(パートタイム裁判官)制度、これは非常に成功している。
 
 訴訟上の和解に似ているが、和解の場合、もし成立しなかったら判決へ進むことになる。一方で調停は成立しなければそれまで。強制的要素が少ない。
 
 特に弁護士資格のある調停委員は、まず先に調停室に入って冷暖房をつけて、電気つけて、それから当事者を迎え入れるような態度をとるべきだ。「さぁ、行きましょうか」と、当事者を連れて行くのは、紛争解決を担当する立場としてどうだろう。
 
 人間同士の紛争解決は、芋を洗うようなもの。芋同士をこすりあって、転がして、泥や皮をはがしていくように、当事者主導で進めなければならない。お上が解決を指示するようではいけない。

 

(会場からの質問)

● 新たな迅速紛争解決手続きを日弁連でも「民事審判」と名付けて推進している。3回以内で審理を終える。交通事故・貸し金・売買代金・金利紛争など、訴訟の内容を類型化できるものを想定している。審理手続きも定型化できるし、不意打ち主張防止の手続き保障にも資する。浅見さんに質問だが、もしL方式が導入され成功すれば、われわれが検討している民事審判は必要ないのではないか。調停委員を活用するのがL方式の特色だが、福岡の例では活用が想定されていない。また、B類型で訴訟からL方式に移行するのなら、最初からそのまま和解に進めばいいのではないか。
 
 ⇒ なるほどなと思いました。B類型について、迅速化ということを重視すれば、裁判官がやればいいが、法曹とは違う知恵も入れるのであれば調停委員の活用が有効だと思う。しかし、二者択一という問題ではないので、札幌や福岡の事例も尊重されるべきだ。(浅見氏)

● 「このへんで折り合わんか」と案を出すなどして、当事者をリードした何十年か前の調停委員と違って、今の調停委員は自分の意見というものを持たない。まるで、双方の意見を2で割るような解決策しか出せない。調停委員は、良識的で穏和な人というだけでは足りず、専門的な知識も求められるので、裁判官の経験者に任せたい。また、本人訴訟の経験者だが、あれは勝てないようになっているのか。裁判官は、相手方弁護士の顔をつぶさないように、弁護士の就いている側を勝たせているのでは?

 ⇒ そういう批判があることは承知している。裁判所が決めた期日は変えないと言うことで私は徹底している。弁護士が期日変更の申し立てをすれば、不公平と思われるのが不本意(井土氏)
 
 ⇒ 弁護士不足の「ゼロワン地域」問題、少なくとも本州ではすべて解消された。なのに、最近は大都会で本人訴訟が増えている。みんな、本人訴訟のマニュアル本を読んでやっている。なるべく弁護士を活用して欲しい。弁護士人口は増えているので。(中本氏)
 
 ⇒ 調停に臨む裁判官が、多忙ゆえに減っている。調停委員がどれだけ案を出せるか、限界があると思う。家事調停でも、最後どうなるのかと見極めた上で案を出すとなると難しい。とんちんかんな案は出せないので裁判官のサポートがいる。L方式や調停とよく似たADRとの棲み分けも問題。法律家が解決案を出して関与する点が差別化だと思ってる。(浅見氏)
 
 合意の斡旋をするのが今の調停委員のやり方。すぐには結論がでない。
 
 
● L方式は優先すべきなのか、それとも次善の策か。裁判官が介入することで、チャッチャと進められてしまう危険があるのではないかと思う。

 ⇒ 正直まだきちんと考えてはいない。そうなる危険は肝に銘じているところ。当事者に対し、何か消極的な意見を言いたいときは、時間をかけてタイミングを計ってアドバイスするようにしている。それを権力者の介入と言われるかも知れないが、そうしている。(浅見氏)
 
● レジュメに書いてある「調停官と調停委員の関係が大きな課題」とはどういう意味か。

 ⇒ いずれも民間活力を導入することを念頭に置いていて、非常に優れた制度。しかし調停官が主導して前へ前へ出すぎると、調停委員の活躍する場面が無くなる。そういう意味だ。(井土氏)

● 私は、民事調停やL方式に若干の懸念がある。裁判官は判決も出す存在。調停も判決も行い、証拠の一括提出、3回解決など、事前に積極的に踏み込めば、予断を生んで公正さをそぐ可能性があるのではないか。“重装備”の民事訴訟だけでは柔軟に対応できないというのはわかるが、判決を出す裁判官が調停にも出るのは疑問。別の裁判官(非常勤)が調停に臨むのではどうか。

 ⇒ 労働審判にも同じ問題があって、当事者や代理人から異議が出されたこともある。効率の面からは、同じ裁判官がやったほうがいい。一方で予断排除を重視し、おっしゃるとおり公正さから別の裁判官に、という意見もある。扱いとしては両方あるのではないか。全体としては、どちらかというと公正さ重視の方向に傾いているのではないか。私は伊丹支部で調停官がおらず、調停は自分ひとりでやっているが、重要な視点だと思う。(浅見氏)

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2011年2月 5日 (土)

小沢一郎法廷の裁判長について、今のうちに知っておきたい

>>> 小沢氏公判の裁判長決まる 公判は早ければ9月ごろ

 資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件で、政治資金規正法違反の罪で強制起訴された民主党元代表小沢一郎被告(68)の公判は、東京地裁刑事11部の大善文男裁判長が担当することが4日、分かった。大善裁判長ら裁判官3人の合議で審理する。決定は3日付。

 公判前整理手続きは半年以上かかるとみられ、公判は早ければ9月ごろから始まる見通し。

 大善裁判長は1986年任官。司法研修所教官、高松高裁事務局長などを経て昨年4月から東京地裁の部総括判事となった。高知県出身。

 起訴状によると、小沢元代表は、元私設秘書の衆院議員石川知裕被告(37)らと共謀し、陸山会に貸し付けた4億円を2004年分の報告書に記載しなかったほか、04年分に載せるべき土地購入費約3億5千万円(手数料など含む)を05年分に記入した、などとしている。

 小沢元代表は、東京第5検察審査会が昨年9月、起訴すべきだと議決したのに基づき1月31日に強制起訴された。

2011/02/04 11:44   【共同通信】

 
 

 東京地裁の大善文男裁判長か……。あんまり私の印象に残ってないということは、いかにも裁判官っぽいオーソドックスな審理をする方だってことだろうか。これから傍聴へ行くときは、もっと意識してみることにします。

 最近、裁判傍聴へ出かけるときは、傍聴人が少なくて快適な千葉地裁に行くことが増えたので、よくないな、もっと幅広く動かなきゃいけないなと反省。

 
 

 大善文男(だいぜん・ふみお)
 昭和34(1959)年11月3日生、51歳
 高知県出身 早稲田大学卒、司法修習38期

 昭和61(1986) 任官。東京地裁に赴任
 昭和63(1988) 名古屋地裁
 平成3(1991) 高知地裁
 平成6(1994) 東京地裁
 平成9(1997) 広島高裁(高裁職務代行)
 平成13(2001) <司法研修所教官>
 平成17(2005) 東京地裁
 平成18(2006) <高松高裁事務局長>
 平成22(2010) 東京地裁(刑事11部総括判事)
 
 (参考文献:公人社「全裁判官経歴総覧」、e-hoki「裁判官検索」)

 

 大善さんは、任官していきなり東京に赴任してますし、それ以降も東京地裁の法廷でご活躍の期間が長いですね。

 また、< >で囲った役職は、裁判官でありながら “法廷以外” の場で活躍した期間です。 大善さんの場合は、司法研修所教官と高裁事務局長。

 大都市圏での勤務が長いこと、
 法廷外の役職を何度か任されていること、
 これらは、全国の裁判官の異動を決定する最高裁人事局からの評価が高い、つまり「エリート裁判官」と呼べる有力な指標だと位置づけても過言ではありません。

 今回引用した共同通信の記事でも、< >(法廷外役職)の紹介に重点を置いていることがわかります。

 特に、最高裁判事に指名されるような裁判官のキャリアを見ると、法廷で事件を裁いた期間よりも、むしろ、<  >の期間の方が長かったりします。

 ちなみに、「高裁職務代行」とは、地裁に籍を置きつつ、高裁が多忙を極めて人手が足りない場合に、臨時で呼ばれて応援に行くこと…… だと私は理解しています。(ニュアンスが違っていたらすみません。ご指摘をください)

 司法の序列としてワンランク上の高裁で仕事を任せられるような人材を、地裁から選ぶわけですから、裁判官なら誰だっていい、というわけにはいきません。

 高裁職務代行を任されたということは、やはり大善さんは最高裁人事局からの評価が高いと考えていいと思います。

 

◆ 裁判所法 第19条(裁判官の職務の代行)
1 高等裁判所は、裁判事務の取扱上さし迫つた必要があるときは、その管轄区域内の地方裁判所又は家庭裁判所の判事にその高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。
2 前項の規定により当該高等裁判所のさし迫つた必要をみたすことができない特別の事情があるときは、最高裁判所は、他の高等裁判所又はその管轄区域内の地方裁判所若しくは家庭裁判所の判事に当該高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。

 

 

 また、大善裁判官に関しては「すでにベテランの域なのに、過去に無罪判決を出した経験が無い」という噂がネット上で流れているみたいですね。 そのあたりも継続的に調べてみたいと思います。

 さらに、印象的な発言などが見つかればご紹介しますね。 よって、このテーマは今後も続きます。

 

         ◇

 

 このブログでも去年書きましたし、先日ツイッターでもつぶやきましたが、小沢さんが強制起訴されたというのは、「これから刑事裁判を開く」というだけの話で、意味はそれ以上でも以下でもありません。

 もちろん、被告人として裁判に臨む小沢さんの身辺には、事実上、有形無形の影響が及ぶでしょうが、今後、有罪判決が確定するまでの間は、私たちは小沢さんを何らかの色メガネを通して見てはならないと思います。

 つまり、偏見はダメよ、ってこと。 現時点で偏見を抱くのは、単なる司法軽視の態度です。

 そして、もし無罪判決が出たなら、小沢さんの身にできるだけ「何も起こらなかった」ものとして取り扱うべきだと思います。

 もちろん、完全に何もなかったことにできる、などと、お気楽なことは考えてませんが、できるだけ、なるだけ、ね。

 私は小沢さんシンパではありませんけど、「憲法裁判所の創設」「記者クラブ撤廃」という持論や、現行の憲法9条を保持しつつも自衛隊の役割を明記する条項を付け加える、という発想は、わりと好みですね。

 なんらかの疑惑があるのなら、刑事法廷で最高の証拠を突きつけ合って、白黒ハッキリつけてほしいです。

 
 ちょうど、来週(月曜)には、元秘書3人に関する初公判が行われるという、まるで図ったようなタイミング(冗談)です。 注目したいと思います。

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2011年1月17日 (月)

2010年、各地の裁判官の「お言葉」を振り返る

>>> カーマニア判事、ランボルギーニのスピード違反事件を裁く 豪州

 オーストラリア・パース(Perth)の裁判所で、英BBCの人気自動車番組「トップギア(Top Gear)」のファンだという判事が担当して、スピード違反に問われた整備士の男性(53)の裁判が行われた。豪AAP通信などが18日、報じた。

 職場に向かう被告が運転していた鮮やかな黄色の伊ランボルギーニ(Lamborghini)のスポーツカー「ガヤルド(Gallardo)」(2006年型)をパトカーで追跡した警察官は、追跡時にパトカーの速度は時速160キロに達したと法廷で証言した。

 しかしAAP通信によると、マイケル・ウィーラー(Michael Wheeler)判事は、「警察の米フォード(Ford)製ファルコン(Falcon)を悪く言うつもりはないが、正直言って、ファルコンではわたしの車にだって追いつけないのではないか。果たして被告のランボルギーニを追跡することができただろうか?」と指摘し、100~200メートルも引き離された状況で、被告の車の速度を正確に把握するのは不可能だったと結論づけた。

 ウィーラー判事は判決を前に法廷で、自分が熱心なカーマニアで、公判の前日にガヤルドを取り上げた「トップギア」を見ていたことを明らかにした。「私はトップギアのファンで、(2006年型ガヤルドについての)どうでもいい知識を山ほど知っていることを認めなければならない。ガヤルドは2006年にトップギアで『今年のドリームカー』に選ばれ、ジェレミー・クラークソン(Jeremy Clarkson、トップギアの司会者)もその年にガヤルドを買ったんだ」

 ウィーラー判事は被告に訴訟費用として1万8000豪ドル(約150万円)の支払いを命じるとともに、証言に立った警察官にもっと速いパトカーが与えられることを望むと述べた。【2010年11月18日 AFP】

 

 拙著『裁判官の人情お言葉集』では、モータースポーツが大嫌いなイタリアの裁判官をご紹介しましたが、この人なんて、逆に自身がカーマニアであることを法廷で告白しています。

 しかも、すごいスポーツカーなのをウンチク混じりで認めた上で、スピード違反は違反として、オーナーをキッチリ裁く。なかなかステキな方です。

 「そんなパトカーじゃ、私のクルマにも追いつけない」って、マニアックな事実認定の裏で、暗に愛車を自慢してますけど、具体的な車種を言わないところも、控えめで好印象です。

 オーストラリアの判事の給与じゃ、ランボルギーニを買うのは非常に難しいんでしょうね。憧れだけでとどめているのでしょう。

 まぁ、日本の判事なら給与水準が高いので、買おうと思えば買える方もいそうですけど、人目につくのがお嫌いな方がほとんどでしょう。そんな派手なクルマに食指は動かないのかなと。

 
 

>>> 裁判長がストップウオッチ、弁護人に時間厳守指示? 鳥取地裁

 鳥取地裁で15日開かれた殺人未遂事件の裁判員裁判で、最終弁論中の弁護人に大崎良信裁判長がストップウオッチを掲げて示し、予定時間厳守を促すような場面があった。

 訴訟関係者によると、弁論時間は事前協議で20分間と決まっていた。弁護人は証言台の前に立ち弁論していたが、十数分経過したころから、大崎裁判長が無言で、用意していたストップウオッチを持ち上げた。自分の腕時計とストップウオッチを交互に見比べるしぐさも見せた。弁論はほぼ予定時間内に終わった。

 これに先立つ検察側の論告求刑も20分前後だったが、大崎裁判長はこうしたしぐさを見せなかった。

 裁判では昨年10月、長男(40)をおので襲ったとして、殺人未遂罪に問われた鳥取県岩美町の無職、辻薫被告(72)について審理。判決は16日に言い渡される。(2010.7.15 産経新聞)

  法廷内でのストップウオッチの呈示に関する会長声明
  (鳥取県弁護士会から鳥取地裁への抗議文)

 
 集中力を途切れさせないよう、裁判員の負担を軽くするために、審理を長引かせないよう、プロ裁判官が配慮するのはわかるのですが、「ストップウォッチ片手に」ってのは、なんともイヤミですね。100分の1秒単位まで計る気だったのでしょうか。

 法廷にだって、時計ぐらいあります。

 20分で済ませる予定なのに、弁護人が30分以上も弁論をしていたら、裁判長が「あとどれくらいかかります?」「適宜省略してください」などと牽制すればいい話ですよね。

 地元の弁護士会が「弁護人への侮辱」だと怒るのもムリはありません。

 ちなみに、懲役5年の求刑に対して、判決は懲役3年6カ月でした。一般的な量刑相場と言われる「求刑八掛け」よりは少し軽くされたようですね。
 
 

 < 大崎良信判事の略歴 >
 (「全裁判官経歴総覧」「e-hoki裁判官検索」「ヨミダス文書館」より)

 1960年1月3日生まれ (51歳)
 京都府出身 早稲田大学卒
 司法修習42期(1990年任官)
 
 赴任地 … 神戸→大分→和歌山(田辺)→福井(武生)→福岡→大津→鳥取 (最高位:福岡高裁判事)

 ★2009年11月、強姦致傷という重罪の事案で、被告人の反省と謝罪の態度を重くみて(保護観察付き懲役刑ながら)、異例の執行猶予判決を示して話題に。
 「罪を許したということではないし、償いが終わったわけではない。判決理由の一つひとつを心に刻んで忘れないように」「保護観察中は酩酊するまで酒を飲まないこと、できれば酒はやめた方がいい」と説諭。

 
 

【そのほか、昨年の「お言葉」ダイジェスト】

 
「お子さんの良いところを3つ言ってください」
「わたしにも同じ年ごろの子どもがいる。自分も反省しながら、この事件に向き合っている」
「『子どもは親の鏡で、子どもを見ればどういう家庭で育ったか分かる』と言われたことがある。愛情を注ぎ、自信を持って『こんな風に育ちました』と言えますか」
「子どもの言動の裏には、そうせざるを得ない理由があったのでは」
「親が2人とも怒ったら、子どもは逃げ場がない」

 (横浜地裁 香川礼子裁判官)2010/10/07

  11歳の長男を木刀で殴ったとして、傷害の罪に問われた父親と同居女の裁判で。「ウソを付くクセがあったので直したかった」などと、長男の欠点を列挙して自らの行為を正当化する被告人の態度に対して、涙ながらに、子育て中の母親としての経験をアドバイス。 被告人らは答えに詰まったといいます。

 
 

「あなたには運転適性が無いと言わざるをえません」

 (横浜地裁 成川洋司裁判官)2010/09/24

  無免許運転で死亡事故を起こして、刑務所で服役した後、再び無免許運転をして、スピード違反の摘発を逃れようとして、信号無視などを繰り返した26歳の男に対し、懲役5カ月の実刑を言いわたして。
 4年前に起こした死亡事故も、坂道でトラックを停車させて離れていたところ、サイドブレーキの利きが甘く、坂道の下で自転車に乗っていた小学2年生に衝突させたというもの。これがもし無免許じゃなかったら、少々気の毒な事故かもしれませんけど……。
 運転の適性というより、もともと他人のことまで考えが及ばない人なのかもしれません。

 
 

「同じ問題で苦しむ家族に、あなたができることがないか考えてほしい」

 (神戸地裁 東尾龍一裁判長)2010/09/06

  アルコール依存症の長男の世話に苦労し、飲酒しないよう注意したところ、口答えされたため立腹し、タオルで首を絞めて殺害した父親に対し、執行猶予つき懲役3年を言いわたして、被告人に何らかの社会貢献を促す東尾さん、相変わらずさすがですね(「爆笑お言葉集」126ページ)。
 裁判員を経験した女性からも「アルコール依存症の壮絶な闘いを目の当たりにして考えさせられた」とコメント。

 
 

「傍聴人、 証人の答えに、いちいち反応しないように」

 (京都地裁 増田耕児裁判長)2010/05/12

  3人の娘の点滴に、水道水やスポーツドリンクを混入して死亡させたなどとして、傷害致死などの罪に問われた母親の裁判員裁判(第3回公判)。病理鑑定医の証人尋問で、専門的なことを絶え間なく話し続ける証人の説明に、その都度うなずいてみせる傍聴人に対して注意を投げかけた。
 裁判員に対して、まるで証人の説明がすべて正しいかのような先入観が入らないようにするための配慮だと思われます。かといって、その傍聴人が医学の専門家だとは限らないわけですが。 いや、むしろ間違いなく素人だと思いますけど。

 
 

「発達障害でもノーベル賞を取った人だっている。自信を持っていいんだ。自分の障害とうまく付き合う方法を考えてください」

 (東京高裁 矢村宏裁判長)2010/04/26

  JR東京駅のホームで、女性を突き落として電車に接触させ、ケガを負わせたとして殺人未遂罪などに問われた25歳の男に対して、懲役9年を言いわたした一審判決を支持して。
 就職先が見つからない不満から、いったんは自殺を考えたが遂げられず、無差別殺人で死刑になるしかないと思っても躊躇し、最終的に本件の実行に至った、発達障害はあるが大きな影響は無いと犯行動機を認定し、判決文読み上げ後「発達障害はダメじゃない」と説諭。
 ちなみに、ノーベル物理学賞受賞者のアインシュタイン氏や益川敏英氏には発達障害があったといわれています。たしかに、対人関係を築くのが苦手な代わりに、興味を持った事柄に向けられる集中力が尋常でないのが特徴とされています。ですが、同じ発達障害でも社会的に活かせる才能のある人と無い人がいるわけで、この種の説諭が不用意に行われてしまえば、特別な才能を持たない障害者を精神的に追い込むだけではないかとも思います。
 一方で「障害とうまく付き合う方法を考えて」との矢村裁判長の語りかけには、被告人の立場への配慮が見られて、なかなか光っているとの印象を受けました。

 

 

「あなたの診断書にあった病気の一つを私も持っている。それに負けないで、会社の事業を頑張ってほしい」

 (東京地裁 片岡理知裁判官)2010/04/09

  3年間で約1億円を脱税した金属卸会社の社長に対して、有罪判決を言いわたして。
 被告人は複数の心臓病を持っていたことから、自身や弁護人は寛大な判決を求めていたが「体調がよろしくないことを酌んだ判例はあるが、今回はあえて理由に挙げなかった。体が悪いから罪が軽いとは言いがたい」と厳しく指摘。
 しかし、同じ病気を持ったふたりが、裁く側と裁かれる側として法廷で向き合うことに。これも何かの縁なのでしょうか。こういう場合に、もし持病を理由とする減刑をしたなら、裁判官はものすごく批判されるんでしょうね。

 
 

「これは人を殺すことで事態を打開することを認める判決ではありません。特にお孫さんたちには、あなたが許されたわけではないということを伝えてください。これが裁判員の思いです」

 (東京地裁 山口裕之裁判長)2010/04/22

  高額な医療負担に悩んでの自殺未遂により、意識不明で入院中だった息子を刺し殺した67歳の母親に対して、執行猶予つきの懲役3年を言いわたして。
 たしかに執行猶予が付くと、被告人自身や世間から「甘い判決だ」と受け取られがちですので、その油断にクギを刺したかたちでしょう。
 健康保険が適用されずに高額な医療費になっていたことについては、その局面を乗り越えるために手段を尽くす余地があったと指摘した一方で、意識が回復する可能性がほとんど望めない息子を哀れに感じ、死ぬことを望んでいるのではないかと考えた経緯には同情の余地があるとしています。
 裁判員経験者からは「自分がこの立場ならどうしただろうと考えたが、結論は出ず難しかった」「保険制度や医療制度の見直しが必要」とのコメントが出ていたようです。

 
 

「下級審が、最高裁判決に、いささか過剰に反応している」 「法律がみなし弁済の可能性を容認しているのに、司法が極端に要件を厳格に設定して、みなし弁済規定を事実上葬り去るのは異常事態で、司法ファッショと批判されかねない」

 (神戸地裁 社(やしろ)支部 山本善平裁判官)2010/03

  ちょっと難しい話ですが、下級審の裁判官が、他の裁判官が流れている方向性を痛烈に批判して、そうしたトレンドとは異なる判断を示した例です。
 大手の消費者金融から、グレーゾーン金利(出資法違反の犯罪にはならないまでも、民事的には返還義務があるような高金利。2010年6月の改正法施行で、現在ではグレーゾーン金利を取ること自体が違法になっている)で借り入れた女性が、過払い金235万円の返還と利息5%の支払いを求めて提訴しました。
 消費者金融サイドは、貸金業法43条の「みなし弁済」(これも現在は廃止)を主張して応戦しています。
 みなし弁済とは、消費者金融が、返済期間や回数を明記した契約書を渡すなど、十分に説明を行っている場合には、借り手側がグレーゾーン金利での返済を認めて、受け入れたものとして扱う例外規定です。
 このみなし弁済は、最高裁が消費者金融側にとって適用条件を厳しく解釈したため、ほかの下級審(地裁など)も、みなし弁済をほとんど認めない運用をしてきたのです。
 しかし、山本裁判官は「被告のような大手が要件を順守し、みなし弁済の適用を目指したのは当然」として、みなし弁済を適用し、借り手側からのグレーゾーン金利ぶんの返還請求を認めない判断をしました。
 消費者金融も、かつてのような猛威はなく弱体化してきていますので、このようなバランスを取った判断もあっていいと思いますね。
 利息制限法もそうですが、この種の事件では、借り手側有利の法解釈がなされて久しいです。いくら立場の弱い借り手を保護するためとはいえ、立法府の国会が民主的に作った法律を、非民主的機関である司法府の裁判所が、どれだけいじっていいのか。三権分立というデッカイ問題とも絡みます。
 そもそも法案を作る段階で、しっかり考えてほしいのですが、いろんな立場の権力者が、各方面からいろんなことを口出ししてきて、とりまとめが大変なんでしょうね……。

 

 

「一世を風靡したアイドルグループの元メンバーに、このような実刑判決を出さなければならないのは残念。しかし2度も覚せい剤に手を染めた事実は変わらない。服役中と出所後、あなたを取り巻く状況が厳しくとも、負けずに地道に努力して、更生することを期待します」

 (千葉地裁 新井紅亜礼裁判官)2010/03/30

  覚せい剤取締法違反の罪の執行猶予期間中に、再び覚せい剤を使用したとして、「光GENJI」の元メンバー、赤坂晃被告人に対し、懲役1年6カ月の実刑を言いわたして。
 過去の栄光を無理に「取り戻そう」と思うと、余計に挫折感が募って薬物に走ってしまうような気がします。今置かれた現状にどれだけ満足できるか、が問われますね。

 
 

「あなたにとってのゴールデンプランは、まじめに服役し、1日も早く出所すること。余生はいいおじいちゃんとして暮らしてほしい」

 (宇都宮地裁 池本寿美子裁判長)2010/03/19

  暴力団抗争にともなって、道路に向かって拳銃を3発発砲して、銃刀法違反の発射罪に問われた66歳の男に関する裁判員裁判で、懲役6年6カ月の実刑を言いわたして。
 そういえば、この池本裁判官は、足利事件の再審開始(やりなおし裁判)請求を退けたことでも知られます。その後、別の裁判官が請求を認めて、菅家さんは刑務所から釈放、やがて無罪になりました。

 
 

「妻の冥福を祈って、暮らしていってほしいと願います。刑の執行は、あなたの健康状態によります」

 (山形地裁 伊東顕裁判長)2010/03/17

  認知症の妻を絞め殺したとして、殺人罪に問われたものの、一貫して殺意を否認し続けた、過去に町議会議員を務めた経歴を持つ78歳の男の裁判員裁判で、懲役8年の実刑を言い渡して。
 かねてより妻の徘徊グセや服薬拒否に腹を立てていたこと、また犯行時の首の圧迫の度合いに基づき、裁判官と裁判員らが殺意を認定したことにより、被告人が殺意を否認し続けた点が「反省なし」とされました。
 法律上「70歳以上ならば刑の執行を停止できる」のですが……

◆ 刑事訴訟法 第482条(自由刑の裁量的執行停止)
 懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者について左の事由があるときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によって執行を停止することができる。
  1. 刑の執行によって、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき。
  2. 年齢70年以上であるとき。
  3. 受胎後150日以上であるとき。
  4. 出産後60日を経過しないとき。
  5. 刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずる虞があるとき。
  6. 祖父母又は父母が年齢70年以上又は重病若しくは不具で、他にこれを保護する親族がないとき。
  7. 子又は孫が幼年で、他にこれを保護する親族がないとき。
  8. その他重大な事由があるとき。

 ……判決理由は、本件を起こした刑事責任は重大で、被告人の年齢を考慮しても、なお猶予可能な範囲を超えると指摘したのです。
 ただし、刑務所生活によって健康状態に問題が生じると判断されるときは、懲役刑の執行を停止する余地を残しました。
 先ほどの条文の2号に加えて、1号の趣旨も加味した、異例の説諭ですね。

 

 

「裁判にかかわった全員が、被告人に生まれ変わってほしいと願っています」

 (東京地裁 後藤真理子裁判長)2010/01/28

  歩いていた女性の胸を触り、顔などを殴ってケガを負わせた路上痴漢の事案で、強制わいせつ致傷に問われた22歳の男に関する裁判員裁判。判決公判で執行猶予つきの懲役3年の刑を言いわたして。
 痴漢といえば「電車の中」というイメージが強いでしょうが、迷惑防止条例や強制わいせつ系の裁判を傍聴していると、路上痴漢も意外と多いことがわかります。
 「生まれ変わってほしい」との説諭に対し、被告人は「わかりました」と述べたようです。

 

 
「判決を決める時に降った雨は、長男の涙が雨になったとも思えた」

 (那覇地裁 吉井広幸裁判長)2010/01/28

  知恵遅れの息子を虐待で死亡させ、傷害致死罪に問われた29歳の父親に対し、懲役6年の実刑を言いわたして。
 個人的には3年前、吉井裁判官の法廷を傍聴するために、自費で沖縄まで行ったことが思い出されますが、その期待にたがわぬ詩的な説諭です。(「人情お言葉集」38ページも参照)

 

 

「保険会社から『被害者に会わない方がいい』と言われたとしても、結果はあなたが負うことになる。これまでの選択が胸を張れるものか、よく考えてほしい」

 (和歌山地裁 杉村鎮右裁判官)2010/01/07

  クルマ運転中の前方不注意で、原付に乗っていた男子高校生に大けがを負わせた交通事故。執行猶予つきの懲役1年を言い渡して。
 交通事故の裁判では、被告人が「被害者や遺族のもとへ謝罪に出向いたかどうか」が、情状面で特に重視されます。
 杉村さんの裁判も、やはり3年前、わざわざ徳島まで行って傍聴したものです(「人情お言葉集」128ページも参照)。こうした傍聴旅行をまたやってみたいなぁと思いますね。今は時間的にも経済的にも余裕ないですが。

 

 
「感受性が豊かになるよう、小説やエッセーを読んで人の感情をもっと勉強してほしい」

 (新潟地裁 山田敏彦裁判長)2010/01/13

  酒に酔った状態で、76歳の母親に執拗な暴行を加えて死亡させた息子に対して、心神耗弱状態を認定して刑を減軽した上で、懲役4年6カ月の実刑を言いわたして。
 特に変なことは言っていないのですが、「感情を勉強する」という言い回しが、いかにも裁判官っぽい感じもします。

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2010年9月 2日 (木)

法廷の証言台、34万円で好評発売中!

 皆さま、大変ご無沙汰しておりました。

 先月、無料メールマガジン『ウィークリーさいばん』を新創刊して毎週書いておりましたら、今度はブログの更新がおろそかになってしまいました……。 すみません。

 

 

Photo

 

 こういうのって、売ってるもんなんですねぇ。

 しかし、大量生産品でないだけあって、かなりご立派なお値段です。

 彼女にウッカリ浮気がバレちゃった、そこのアナタ!

 この証言台に立って、涙ながらに「申し訳ありません」「もう二度としません」「反省しております」と、決まり文句を並べれば、別れ話にも執行猶予が付くかも? フフフ。

 一家に一台、証言台!

 という時代が来たなら、ドンキホーテかニトリあたりで、6800円ぐらいで売り出していただきたいものです。

 オシャレなイケア製のモノトーン調証言台とか、素材感を活かした無印良品のスチールワイヤー証言台なんかもいいですね。

 下のほうに引き出しを付けたら便利でしょう。 「良心に従って真実を述べ…」の宣誓文などを収納できそうです。

 

 

 

Photo_2

 

 法の世界と俗世(傍聴席)とを区切る柵も、1ユニットだけでパソコンの良いヤツが買えちゃう価格設定です。

 これをいくつか買って並べなければ、サマになりませんよね。

 この証言台や法廷柵、本来は、法科大学院(ロースクール)の模擬法廷用に売り出された「家具」なのです。

 買うのに特に資格が問われるわけではないので、カネさえ出せば一般人でも購入できます。

 ちなみに、法廷のメイン要素である、裁判官が着席する「法壇」ですが、6つのユニットに分けられていて、さらに壇上へ上がるためのステップ(階段)を左右両サイドに2つ付けるとすれば、なんと一式250万円以上しますよ。

 模擬法廷をこしらえるのも、なかなか大変ですね。

 裁判沙汰もカネ次第ってか!?

 

 

■ 岡村製作所(オカムラ)製品カタログ

   【2009電子カタログB】

    ⇒ 14.公共・文化施設用家具

     ⇒ 法廷用家具 (803ページ) ……より引用


 そういえば、

 このブログ『法治国家つまみぐい』の開設日は、私が司法試験に挫折したてホヤホヤの、2004年9月1日。 まだ博多の実家にいた頃です。

 今日からなんと7年目に突入です。 この6年間、いろんなコトがあったなぁ~。

 毎日更新したり、最近みたいに1カ月以上更新できなかったり、無責任なスタイルを一貫して保ちつつ、法治国家の各方面を節操なくつまみぐいしてまいりました。

 今回みたいな小ネタもチョコチョコ挟みますが、今後ともよろしくお願いいたします。

 
 

    お知らせ 

 拙著『裁判官の爆笑お言葉集』のオーディオブック版が完成しました。
 アノ問題作の内容を、プロの朗読人によって音声収録してくださいました。

 また、私の声で収録した「後日談」も併せて聴いていただけます。
 ナガミネの滑舌の悪さ(特にサ行)をご堪能ください。

 辛い満員電車でも、立ったままで「読書」を楽しんでいただけますし、種々の理由で文字を読みづらい方にもお勧めします。 どうぞよろしくお願いいたします。

■ 通常版

■ 倍速版

サンプル1
サンプル2

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2009年9月 4日 (金)

裁判所で働いてる「犬」の話

 裁判所で働く犬を育てるプログラムを推進している「Courthouse Dogs」の創設者エレン・オニール・スティーブンスさんは、検察官として米国シアトルで働いています。裁判所で犬が大きな役割を果たしてくれるだろうと思ったきっかけは、脳性麻痺を患っている彼女の息子を補助するサービス・ドッグのジーターと暮らし始めたことだったそうです。

 子供にとって、自らのことを見知らぬ大人に話すことはとてもハードルの高いことだといいます。ですが、大人に話すことをためらう子供たちも、犬に向かってならば突如として話し始めたりすることがあるそうです。実際に、ひどい虐待を受け、貝のように口を閉ざしていた女の子が、ジーターを1時間半にわたって撫で続けた結果、自らの身に起こった出来事を話せるようになったと言います。(ドッグ・アクチュアリー 2009年8月26日


 

 記事のなかにもありますが、証人尋問を待っている間に緊張感に包まれるのは、なにも子どもだけでなく、オトナの証人にだってあてはまるでしょう。

 そんな証人の緊張感を、「裁判所犬」は、優しく癒してくれます。

 緊張させられるのは、裁判所に呼び出された裁判員候補者、あるいは、これから裁判の開始を控えている裁判員だって同様です。

 彼らも「裁判所犬」が優しく癒してくれるはずです。

 また、初仕事の弁護人や検察官、裁判官も、法廷でとんちんかんな発言をやってしまわないか、緊張が抑えきれません。

 ナーバスになった新米法律家も、「裁判員犬」が、その高ぶった神経を和らげてくれます。

 初めて刑事裁判を観る一般の傍聴人も、手錠と腰縄でつながれた被告人を目の当たりにして、緊張に包まれて……

 大丈夫!「裁判所犬」がいますもの。

 

 保釈中で、看守がついていない被告人にも、「裁判所犬」の目が光り、少しでも不審な動きを見せたら、思いっきり頭から噛みついてきます。

 

 こんなんじゃ、働かせすぎで、裁判所犬の精神状態のほうが参ってしまいそうですが。

 

 ジョーダンはさておき、日本でも「裁判所犬」、早期導入が待たれますね。

 ただ、世間には犬が苦手な方もいますからねぇ。

 「裁判所猫」「裁判所アルパカ」「裁判所イグアナ」「裁判所グッピー」「裁判所耳かきお姉さん」など、証人の好みに合わせて、いろんな癒し系の仲間たちが控えていたほうが嬉しいですよね。

 いや、裁判所にいる人間を癒すだけなら、ロボット犬で事足りるのかも。

 だとすれば、「裁判所犬」が生体でなければならない必然性も検討すべきなのでしょう。

 

 ま、ややこしい話はともかく、日本の法廷、 少なくとも観葉植物の1鉢ぐらい置いていただきたいものですよ。

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2009年8月 3日 (月)

誕生日プレゼントは傍聴券?

 
 今日は、史上初の裁判員裁判が行われる日 兼 私の34歳の誕生日ということで、自分への誕生日プレゼントとして、「初公判の傍聴券」を自力でゲットすべく、東京地裁へ。

 すると……!

 

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 ご覧のとおりの大行列です。

 マスコミ取材陣や、裁判員制度反対運動の皆さんもゴチャゴチャ入り乱れて、正門前はゴッタ煮状態。

 ツレにも一緒に並んでもらって、クジ引き当選確率の向上を狙ったのですが……、

 30分行列に並んで、見事にボウズ!!

 あーあ。

 やっぱり誕生日プレゼントは、素直に友人らからもらおうと思います。

 

 そんなドジに引き替え、記者クラブ所属の大マスコミの皆さんや、彼らとコネがある人物は、自動的にしっかりと傍聴券をキープしていますからね。

 最初から傍聴席に座れる確約がある代わりに、書ける内容の自由度や分量は限られるでしょうが、そんな制約に負けず、彼らが責任感をもって伝えてくださる傍聴レポートに期待しています。

 やっぱり「裁判員裁判第1号」というニュース性や話題性は大事で、テレビや新聞としては採り上げないわけにはいかないネタですからね。

 目の色を変えて、たくさんの傍聴席をかっさらっていく。 それは仕方ありません。 「社会の公器」として当然の行動です。

 その点、私にとっては、初めて一般人が法壇にあがる「裁判員裁判第1号」だって、数ある刑事法廷のうちのひとつでしかありませんしね。

 だから、一般のジャーナリストや社会部記者の皆さんとは、やっぱり意気込みの熱さが違うんです。

 正直いって、殺人など凄惨な事件の裁判より、万引きや置き引きの裁判のほうが、人間味があって見応えありますし。

 ただ、司法ライターとして、裁判員裁判を一度でもナマで観ていたほうが、世間様へ向けて裁判員制度についてコメントしやすくなるだろう。 だから、できるだけ早い時期に裁判員法廷に居合わせておきたい。
 ……その程度のことは考えていますが、私にとって今回の裁判、あいにくそれ以上にもそれ以下にも位置づけていません。

 なので、ソコソコのレベルの意気込みで、明日も明後日も行列に並び続けます。

 何十倍もの倍率を乗り越え、自分の持つ「運」だけで引き当てた傍聴券の「味」を、いちおう知っていますから。

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