2005年6月11日 (土)

おすすめ本「放送禁止歌」

放送禁止歌
4759254102森 達也

おすすめ平均
starsノンフィクションの星
starsいい本だけど せつないね
stars最近の大収穫
stars哀悼 山平和彦さま
stars放送禁止歌

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 放送法第1条第2号「放送の不偏不党、真実および自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」……

 私が「放送禁止歌」と聞いて真っ先に連想してしまうのが、つぼいのりお氏の「金太の大冒険」だったりするのが恥ずかしいですが、たとえば「金太の大冒険」が、リリース後わずか2,3週間でラジオ放送禁止になったり、梅宮辰夫兄貴の「シンボルロック」も放送禁止扱いになった理由は、だいぶわかりやすいと思います。単純に、当時の価値観で「品が無かった」からです。
 この本は、「闘うエンターテイメント」が規制されていく様子を通して、同和や反体制という時代背景を浮き彫りにしようとする、非常に興味深い構成で展開されています。放送の世界にある「政治」が見えてきます。

 それに、意外な曲が民放連によって「要注意歌謡曲」に指定されているのも目を引きます。ピンクレディーの「SOS」も、「不適当な箇所を削除・改訂すれば可」という取り扱いだったらしいです。それは「♪男は狼なのっよー」の歌詞が眉をひそめられたわけではなく、イントロ部分にあるSOSを表すモールス信号が、災害や緊急事態が発生したとの誤解を生みかねないからだとのウワサ。
 ただ、モロに公共の電波に乗せられなかった「イムジン河」や「自衛隊に入ろう」は、要注意歌謡曲としてリストアップされていないのが不思議です。こちらは本当に自主規制で、現場の判断だということなんでしょうね。きっと。
 

放送禁止歌
4334782256森 達也

おすすめ平均
starsノンフィクションの星
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stars哀悼 山平和彦さま
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2005年5月23日 (月)

5月のオススメ本

詭弁論理学
4121004485野崎 昭弘

おすすめ平均
starsだまされないために、そしてだまさないために
stars強弁・詭弁を弄すること
starsどんな本か一度は見ておくべき本ですが
stars新書とはこうあるべし
stars時代を超えるロングセラー

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 ご存じの方も多いかと思いますが、たしか40万部の売り上げを誇る本書。論理記号が出てこず、具体例がふんだんに盛り込まれています。文科系に優しい論理学の解説が素晴らしいですね。個人的に興味深いのは「本質的」という言葉の怪しさについての記述です。説得的な文章を書きたいときに、私もつい「本質的」を多用してしまいますので、気を付けたいものです。


逆説論理学
4121005937野崎 昭弘

おすすめ平均
stars読んで楽しむ、パラドックス。
starsトートロジーの面白さ!!

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 「男の子を欲しがる家庭が多いと仮定したとき、女の子が産まれれば、もう一人、またもう一人と、男の子が産まれるまで頑張るため、必然的に女の子の人口が多くなる」……この文章を読んで、「そりゃそうだ」と思ってしまった方は、ぜひ「逆説論理学」をお手に取ってみてください。

 巻末の「マイナスとマイナスをかけたら、なぜプラスになるか」を解説した部分は、中学1年次に、まさしくその疑問でつまづいた私としては、すごく興味深いものでした。それでも、まだ半分ぐらいは釈然としないままですが。
 「そういうものとして憶えればいい」と割り切れる人たちを、今でもうらやましく思う私です。

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2005年4月29日 (金)

4月のオススメ本

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学
山田 真哉

おすすめ平均
さおだけ屋は商売になる
入門書の入門書としては良書だと思う。
お薦めしない
入門書として。
痛快で愉快、納得でお得なベストセラー。

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 会計という分野の面白さを感じるというより、『読ませ方』の巧さが際だっている本だと思います。章の最初に「ミステリー」を持ってきて、「謎解き」をしながら、経済の仕組みを説明していく。
 この手法は、法律本でも十分に使えそうですよね。私に書けるかどうかは別として。


憲法の常識常識の憲法
百地 章

おすすめ平均
憲法が分かる1冊

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 今は無きサイト「司法試験に呑まれるな!」に、「人権にモノ申す!」という長文を公開したことがありました。当時は「人が人であるゆえに当然に……」なる、あの決まり文句から漂うスカスカした違和感を、受験生時代の私なりに、なんとかして拭い去りたかったんです。今では、あんな論理的に破綻しきっている文章を大々的に書いて、心底恥ずかしいという気持ちしか残ってませんが。

 いわゆる「人権論」の虚しさは、権力の行きすぎを防ぐためのシステムや法技術を、「人間性」という定義不明の抽象論から導こうとしている点にあると思います。別に抽象論が問題なのではありません。歴史の積み重ねでできている現代社会を、そこから人工的に切り離された実体の見えない概念で動かそうとする姿勢を問題にしているんです。

 もちろん、王が民を支配し搾取し……という時代は、そういった抽象的スローガンを連呼することにも、それなりの意味があったのかもしれませんけどね。
 憲法とは、国民と公権力の関係を規律する法であり、その関係にトラブルが生じた場合に、裁判所が裁定するための基準です。にもかかわらず、『個人の尊重』という重みづけばかりを強調して、国民という一方当事者ばかりに肩入れしては、そんな人権スローガンそのものが『法の下の平等』に反するといわれても仕方がないでしょう。
 公的機関は、国民の基本的人権という目的を達成するための手段なんでしょうか。私はそんな主張を聞くたびに、「人権も手段じゃないのか」とツッコミを入れたくなります。

 行政訴訟で、公権力側ばっかりが勝つのは、『個人の尊重』が浸透していないというよりも、裁判所の『事なかれ主義』体質のせい。つまり、憲法以前の問題だと私は考えています。


憲法とはなにか
櫻井 よしこ

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わかりやすい!

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 当の安部英氏は、先日お亡くなりになりましたが、法律上、損害賠償請求権は相続の対象ですので、故人のご遺族に引き継がれて、名誉毀損裁判はまだ続くはずです。

 それで、“櫻井よしこさん逆転勝訴祈願”……というわけでもないのですが、発売当時、某司法試験塾の塾長が内容を批判なさって話題となった、この本をご紹介。国民の権利と同列に、義務も憲法上に列挙すべきという意見には、私も「うーん」と考え込んでしまいます。そういう義務は、法律でさんざん規定してあるから、それでいいんじゃないの?というのが私の「憲法感覚」です。
 とはいえ、難しいはずのことを歯切れよく、明快に書きつづってある、お勧めの憲法本です。

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2005年3月28日 (月)

安易にアンケートを採りたがる人たちへ

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ
谷岡 一郎

おすすめ平均
ないものねだりかも知れませんが・・・
世界が広がる
マスコミ・学者のいい加減さを次々に暴く
方法論を学ぶ必要性
「ゴミ」社会調査への痛烈な批判と、判断能力向上への貢献

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 私も、ある原稿を書くときに、世間でアンケートを採ってみようかと思ったことがあったんですが、この本を読んで「やっぱりやめとこう」と考え直しました。素人が統計に手を出すのは危険かもしれません。

 「反社会学講座」のマッツァリーノ氏も、「この本をヒントにして書いた」とおっしゃるほどの、社会学スピリッツあふれる作品。これを読んだ後は、マスコミの世論調査をますます信用できなくなります。「これは、どうイジってあるのかな?」と考えながら、アンケート結果を話半分に聞いてしまうようになる副作用も。マスコミを疑いたくない方は、服用をお控えください。

 文章の端々に、著者の知的誠実さが垣間見え、電車に揺られながら楽しく読みとおせる逸品。

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2005年2月14日 (月)

僭越ながら、方向性が私と似ている2冊

日本の裁判史を読む事典
野村 二郎


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 後で知ったんですが、たまたま発売日に手にとって買った本です。歴代最高裁判事のプロフィールに、ほぼ半分を割いている本なんて初めてです。
 残り半分は、戦前の大審院時代も含めた日本裁判史で埋められているんですが、とにかく資料としての素晴らしさは一級品ですね。著者は喜寿を迎えられた司法ジャーナリストとのことで、まさに年の功、「積み重ね型」の面白さがあります。

 ただ、文字の絶対数が多いからなのか、誤植も多い…。「才口『千春』」とか、「体重1000『キロ』の未熟児」だとか。もちろん、そういう欠点を差し引いてもおすすめなんですけどね。

 
 一方で、「ひらめき型」の面白さが尽きないのは、やっぱりこの本。

反社会学講座
パオロ・マッツァリーノ

おすすめ平均
お笑い風味の鋭い風刺本。笑いながら、あなたの「常識」を再点検しましょう。
まず、表紙が笑える!
マッツァリーノは本名!??
明るい社会学の提案
笑いながら自分で考える事の重要性を学ぶ

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 「おい、2回目かい」と言われそうですが、他にグッとくる本が見当たらないんですよね。「こういうタイプの本が売れるんなら、オレが書いて出しても、そこそこイケるんじゃないか」と勘違いさせてくれる傑作です。

 たぶん、このマッツァリーノ氏とは、イヤミの書き方や笑いの方向性は若干違うものの、志が似ているような気はいたします。とにかく、簡単なことをわざわざ難しく退屈に語りたがる、もったいぶった連中を徹底的にボコボコにしたいんですよ。それだけに、「反社会学講座」が売れれば売れるほど、いっそう私は悔しいんです。(笑)
 
 
  反抗期の大人にもおすすめ 『スタンダード 反社会学講座


 

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2004年9月26日 (日)

オススメ本(4) お前ら、何なんだ

 ただいま、遅々として進まない上京準備の合間を縫いながら、PL(製造物責任)法について少しずつ突っ込んで図書館で調べております。前回の「U字ロック事件」を題材にした私の法律構成に、ウソが無いかどうか確認するためですけども、早くもクリプトナイト社による無償交換が始まったとのご指摘を頂戴し、正直、若干モチベーションが下がってしまいました。
 しかし、言い出しっぺは、この私に違いありませんので、なんとかU字ロック製造会社への請求権だけでもキッチリ検討していこうと思っております。どうか、期待しないでお待ちくださいませ。


へんないきもの
早川 いくを

発売日 2004/07
売り上げランキング 193

おすすめ平均
小中生の良い子にはPG?
残念!! 折角の好企画を生かしきれていない。
文章がね・・・

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 いやぁ~、「へんな いきもの」のチョイスが素晴らしいですね。よくここまで調べ上げたな、と感心しながら一気に読めてしまいます。続編として「へんな くさばな」という企画もアリかもしれませんね。

 ただ、この愛すべき生物たちの魅力を、解説文がまったく引き出せていない。というより、むしろ台無しにしてしまっています。この本の主役は、どう考えても「へんな いきもの」のはずなんですが、その主役を小馬鹿にしながら蹴散らして、書き手が前へ前へ出ようとしている。これはいただけません。

 説明文というのは「もともと退屈なものはなるだけ面白く、もともと面白いものは抑えて淡々と」というのが基本です。その基本を、この文筆家はご存じないはずは無いと思うんですが、そこだけが惜しまれますね。ひょっとしたら、文筆担当の早川氏は、バラエティに富んだ生き物たちの存在を「退屈なもの」として捉えてらっしゃるのかもしれません。それならば、全てがつながってきます。
 これが例えば「へんな さいばんかん」の紹介でしたら、早川氏のようなノリでも問題ないでしょうけども。
 
 しかし、そういう気になる部分を差し引いても、私は皆さんに一度ご覧いただきたい本です。


 


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2004年9月15日 (水)

オススメ本(3) 「競争的共存」の進化論って?

眠れる遺伝子進化論
四方 哲也

発売日 1997/03
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科学としての生物学の真髄

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 近ごろ個人的に気になっていることなんですが、ビジネスに関する本や雑誌などでは、19世紀にダーウィンの唱えた「自然淘汰」「適者適存」の着想に基づく「進化論」を引用することによって、資本主義社会の「勝ち組」を目指して努力することを正当化するような論調の記事がしばしば見受けられます。しかし、これはダーウィンさんのことを少し誤解したうえでの主張のように思われます。

 私の理解力の限度で説明させていただきますが、ダーウィンは、たとえば「キリンは高い枝の葉を食べようと努力したから、首が長くなったのだ」という見方をキッパリ否定しています。「使用する頻度の高い器官が発達し、それが生物の進化につながる」との、ラマルクという学者の説を発展させて、「ときに生物に起こった突然変異のうち、環境に適さなかったものがどんどん淘汰され、環境に最も適応した種が選択を受けて残った結果が進化なのだ」と、ダーウィンは客観的な因果関係のほうを重視したんです。個人の努力が報われることを売りにするビジネス書には、むしろ向いていない学説なのかもしれませんね。

 さらに、20世紀に入り分子進化学が確立されていく中で、日本の国立遺伝学研究所の木村資生さんは、「生存に有利でも不利でもない突然変異が生じては消える中で、たまたま幸運にめぐまれた変異が生物集団全体に広がって受け継がれていく」と説きました。生物の進化は、特別どこかを目指して「進」んでいっているわけではない。環境への最適化という方向性で選び取られてすらいない。いわゆる「中立説」と呼ばれる、かつての革新的理論です。

 さらに、最新の研究では、ダーウィンの「自然淘汰」「適者適存」の考え方も否定されませんし、それどころか、特殊な環境下では、古典的とされていたはずのラマルクの説を想い起こさせるような現象が見られることも分かってきているみたいです。
 ただ、「適者適存」にいう「適者」とは、必ずしも生物としての性能が高く、敵をうち負かす自慢の武器を有する強いものばかりではないことも判明しています。そういう優秀な個体は、一時は隆盛を誇っても「過ぎたるは及ばざるが如し」とばかりに、ときに客観的性能として「しょうもない」ようにみえる個体にコロッと負かされる場合もあるようです。

 また、このような「適者適存シナリオ」に属する競争グループとは別に、出来は悪いが「とにかく滅びないシナリオ」を優先するグループが存在します。これら複数のグループが競合したときには、自然とお互いに共存していこうとするらしいんですね。
 「優勝劣敗」の旗印のもと、生命としての効率の良さを重視する前者の「ダーウィン派」は、当面のライバルを押しのけて、鮮やかな「勝ち残り」を図ろうとします。この派閥で代表的な生物は、ウイルスの類だといわれているそうですが。
 しかし、性能はイマイチだが「しぶとい生き残り」を目指す生物たちは、「相互作用」というものを利用しながら、他の多くの生物との「競争的共存」を志向します。ここにいう相互作用とは、それぞれの個体がいかんなく能力を発揮して利己的に繁栄しようとしていたのに、そのうち自然と休戦状態のようになって、各グループが干渉し合いながら一定割合で共存しつづけてしまうという、すべての生物が共通して持つ性質をいうらしいです。

 そして、この相互作用の中で、優秀な「ダーウィン派」の種を相手に安定的に生き残るためには、自らを「複雑化」させているほうが都合が良いとのことなんです。外部との多彩なチャンネルを持てるうえ、潜在的に多様性を持っているほうが、自然環境やライバル構成などの様々な変化にも柔軟に対応できるからです。ちなみに、ひとつの種がオスとメスに分かれていて、奪い奪われ、フりフられ、くんずほぐれつ、時に嫉妬や妥協などの思いが渦巻くのも、この複雑化戦略の一環なのだそうです。そうして、私たちのご先祖は、効率化をとりあえず横に置いといて、即効性の薄い種々雑多な部分をたっぷり含み込みながら、数々の絶滅の危機を逃れてきたのだとされています。
 ヒトのDNAの中で、遺伝情報として有効な部分は全体の5%にすぎず、残りは全て使えない「がらくたDNA」であるのは、私たちの先祖が代々「効率・能率を武器にした勝ち残り」よりも、「無駄・複雑で丸め込むしぶとさ」をポリシーにしてきた何よりの証拠とされているようです。

 私は、ここに「不適者適存」の現実を見るのです。自然界における弱い立場の生物が、「勝ち残り」を賭ける列強のライバルたちと影響を及ぼし合いながら、いちおう彼らと足並みを揃えておいて密かに繰り返してきた「複雑化」こそが進化を支えてきた、という考え方は、生半可なビジネス本の「進化論」より、よっぽど私たちに勇気と指針を与えてくれるような強い説得力を感じるんです。

 ひたすら誰かの目や声を気にしながら、画一化の方向へ進みたがる社会的エリートの発想よりも、複雑や多様性のほうを気に入っておられるすべての方へ。

 



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2004年9月11日 (土)

オススメ本(2) 債権法をつかむ

 皆さんは、民法の入門書と聞いて、どの本を真っ先に思い付かれるでしょうか。内田貴先生の著書とおっしゃる方も少なくないかと思われますが、内田教授のご本には、親しみやすい見た目に反して、かなり高度な内容が紹介されています。分かりやすい記述を心がけておられるのは確かなんですが、入門書と呼ぶにはキツい印象がありますね。

スタートライン債権法
池田 真朗

発売日 2002/03
売り上げランキング 55,545

おすすめ平均
素晴らしい入門書
非常に分かりやすいです。

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 縦書き 黒1色刷

 池田教授は、司法試験委員として、また豊かにたくわえてらっしゃる「ヒゲ」でも有名な方ですが、本書は司法書士や公務員試験等の受験生の皆さんにも推薦できます。もちろん、法学部や法科大学院の1年生にも。また、日常的な法律問題の一問一答式ノウハウ本に、物足りなさとキリの無さを感じはじめた一般の方にも強くお勧めいたします。
 なぜ民法の解説を債権法から始めるのか、について、教授は「おもしろいから」という明快な回答をされています。そして、「おもしろさ」を優先してか、債権法の各論(521-724条)から総論(399-520条)へ、という若干変則的な構造となっています。
 また、ごく基本的な記述から高度な記述までを4段階にランク分けして、それぞれに印を配してありますので、各知識の対象レベルを一見して区別できるようにもしてある気の配りよう。つまり、初学者は、基本的とされている内容だけを拾い読みできる仕掛けです。余白も多いので、適宜、図を書き込みながら読み進めていくこともできます。

 なんといっても、出色は前半部分の「各論」の解説ですね。こういうのを「上手い文章」と呼ぶべきなんでしょう。民法について何らの予備知識が無くても、頭にスッと入ってくる感じがするのではないでしょうか。途中で話が脱線している箇所も多いんですが、どこからどこまでが脱線なのかが枠で囲ってありますので、何のジャマにもなりません。むしろ、法律を学ぶ者へぜひ伝えたいメッセージとして、「計算づくで入れてある脱線」であることが読みとれる形です。

 しかし、惜しむべきは後半の「債権総論」です。内容の抽象度が上がるにしたがって、各論でお見せになっていた歯切れの良さが、残念なことにパッタリと影を潜めてしまうのです。民法で最も説明の難しい分野のひとつなのは確かなんですが、説明が難しい分野だということは、理解するのも難しい分野だということではないでしょうか。「スタートライン」を名乗る以上は、もう少しページ数を増やしてでも平易な記述を貫いていただきたかったな、と思います。
 総論における解説の分かりやすさは、どうしても、各予備校本に軍配が上がるのではないでしょうか。予備校が、初学者への配慮を忘れたら、経営に直接跳ね返ってくるでしょうからね。分かりやすさの追求は死活命題だけに、さすがに余念がありませんよ。

破産から民法がみえる―民法の盲点と破産法入門
小林 秀之

発売日 2003/10
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タコツボから抜け出す第一歩

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 「スタートライン」や予備校本などで、債権法の基礎を大づかみにした後は、本書をお手に取られてみてはいかがでしょうか。本来は、民法の世界に相当程度慣れている読者に向けて、破産法の概説書として書かれているんでしょうけれども、破産の考え方を説明する前提として民法の予備知識にも丁寧に触れられています。非常に面白い本ですから、債権総論の予備校本や法律用語辞典などを傍らに置いてでも、一度目を通していただきたいんです。私の手元には、数年前の初版本しかないんですが、図解や具体例も豊富に採用されています。

 実を申しますと、債権総論での内容というのは、「債務者の誰かが弁済できない」という経済的ピンチに陥ったときにこそ、本領を発揮するものだったりします。ですから、破産という出来事を通して、債権法を真正面からだけでなく、下からも斜めからも立体的に観察していきたい意欲のある方には最適の本だと思っています。特に、これからの法科大学院時代には、今まで以上に法律相互間を「またぐ」「行き来する」視点が要求されるのは間違いのないところでしょう。
 また、せっかくの機会ですから、民法の担保物権(295-398条の22)にも並行して当たってみてくださいね。


 


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2004年9月 2日 (木)

オススメ本(1) 「反社会学講座」

 今日は法律から少し離れて、私が最近読んだお気に入りの本をご紹介します。

反社会学講座
パオロ・マッツァリーノ

発売日 2004/06/20
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 筆者は「イタリア生まれの30代」を名乗っていますが、筆者以外の全ての対象(ときに読み手を含む)をこき下ろして笑いを取ろうとするところとか、ギャグっぽい固有名詞をこまごまと出してくる文体は、なんだかアメリカ人っぽいですね。

 でも、そんな細かいことはどうでもいいんです。「パラサイトシングルが日本を救う」「日本人は勤勉ではない」…など、世間の常識に徹底的に牙を剥いているもくじを眺めているだけでもワクワクしてきます。個人的に一番好きなのは「ふれあい大国ニッポン」の章です。怪しげな統計が笑いを誘います。

 おそらく、この方はタダ者じゃなさそうですね。私は、帯に推薦文を書いておられる大学助教授が、本書の筆者の正体としてクサイと思うんですが、いかがでしょう。だとしたら、関西の笑いなのか?
 そうそう、表紙の絵が吉田戦車先生の手によるのも、ファンとしては嬉しい限りです。

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