2012年10月12日 (金)

日本史上に燦然と輝き、シビれる「弁護士弁論」の備忘録(3)-2 『大阪空港訴訟』 木村保男弁護団長ほか

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( pro.foto )

 
 

((参考過去ログ))

日本史上に燦然と輝き、シビれる「弁護士弁論」の備忘録(3) 『大阪空港訴訟・第一審原告最終準備書面』 木村保男弁護団長ほか7名 1973.6.20

 

 

 関西地方屈指の人口過密地帯にできた国際空港・伊丹空港周辺の上空で、ひっきりなしに飛び交うジェット機の轟音に苦しめられた住民たちは、

(1)午後9時から翌朝7時までの、離着陸禁止
(2)過去の騒音被害の損害賠償
(3)将来の騒音被害の損害賠償

を求めました。

 

 一審の大阪地裁は、(3)は認めませんでしたが、(2)を認め、さらに(1)については、「午後10時から翌朝7時」というふうに、一部認めました。

 しかし、「午後9時から午後10時」について、住民の訴えは認められなかったのです。

 原告や弁護団は、これを「命の1時間」と位置づけ、二審の大阪高裁に望みを託しました。

 まだ、ハワイが「夢の島」と呼ばれていた頃。 私はハワイに行ったことが一度もないので、未だに夢ですが、それはともかく…… 海外旅行なんて一般庶民には無縁で、大金持ちしか行けなかった時代です。

 ある意味で、騒音問題は、資産あるものが資産なきものを虐げて、犠牲にしているという構図が成り立っていたのかもしれません。 ある意味でね。

 それを前提に、弁護団が控訴趣意書で展開した主張の記録をお読みください。

  

 航空会社のポスターを見れば、どれも南の海に全国から観光客を呼び寄せる派手なポスターであり、冬になればスキー客を呼ぶポスターがこれに代わることになる。われわれは、観光を罪悪視するものでは決してない。しかし、日頃航空機公害で苦しんでいる住民たちは、この派手なポスターのなかに、そして、それに誘われて集まる観光客に、今日の航空機需要の伸びの実像を見る思いがし、公共性の名において、この騒音に耐えなければならないことに複雑な思いがするのである。

 しかし、これらの乗客に、せめて一時間の行動予定を繰り上げてほしいと求めることが、全体的、総合的立場から考えて許されないことだとは思えないのである。

 観光客は勿論のこと、ビジネスに空港を使う人も、空港周辺の住民にもう一時間の安らぎをとりもどさせることの重みを考えるならば、一時間行動を繰り上げることができないとはいわないであろうと確信する。

 

 

 二審の裁判官らは、騒音に苦しめられている現場へ実際に足を運ぶ、異例の「検証」を行ったうえで、住民の請求(1)(2)(3)をほぼ全面的に認めるという、奇跡的な結論を示しました。

 もちろん、「命の一時間」も確保され、全日空(ANA)は判決の翌日に運輸局へダイヤ改正を申請したそうです。 午後9時から飛行機を一切離着陸させなくても、伊丹空港では何も混乱は起きませんでした。

 しかし、国側はこの二審判決を不服として上告。

 最高裁では審理が大法廷へ送られました。

 最高裁の裁判官15人が集結する大法廷。より慎重な審理をしようとする姿勢のアピールでもあります。

 もしかすると、住民側を逆転敗訴させる布石かもしれない。

 現場検証をせず、書面審理のみの最高裁判事たちへ、どのようにして被害をリアルに伝えるか、弁護人は頭を悩ませたようです。 

 以下、上告審での弁論要旨の一部です。

 

 

「被上告人らの居住地区の上空には、目に見えないレールが敷設されており、その上をジェット機が飛来するたびに、被上告人らの居住地区は、ガード下を遥かに上まわる騒音地帯に一変するのである。このような被上告人らの居住地区を滑走路代わりに使用している状況は、現在も継続しており、被上告人らは他に類を見ない異常な騒音にさらされ続け、甚大な被害をこうむっているのである」

(いずれも『大阪空港公害裁判記録6』(大阪空港公害訴訟弁護団 著・ 第一法規出版 刊)より)

 

 最高裁は、(2)のみ認め、(1)(3)は認めませんでした。

 それでも、航空各社の自主的な営業努力で、「午後9時から翌朝7時の離着陸禁止」は維持されました。

 

 当時は日本国が相手方だった騒音公害でしたが、現代でも、騒音問題での係争は、特に米軍基地(嘉手納基地や普天間基地、厚木基地など)を相手に行われています。

 まだまだ、この当時の裁判記録は色あせていないのです。

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2012年8月31日 (金)

日本史上に燦然と輝き、シビれる「弁護士弁論」の備忘録(2) 『チャタレー夫人の恋人事件』正木ひろし弁護士

 
 

 今では当たり前のように販売中。

 それどころか映画化もされ、1クリックで翌日にはクロネコヤマトが本やDVDを届けてくれちゃう時代ですが……。

 かつての発禁文書「チャタレー夫人の恋人」をめぐる検挙・裁判の話は、高校1年の現代社会の教科書で触れてあって、それで初めて知ったもんです。

 当時は、男子生徒しかいないクラス(男クラ)に属していたものですから、エロ小説をめぐる検挙・裁判の話だと聞き、教室中がニヤついた雰囲気に包まれたことをよく覚えています。

 しかし、これは表現の自由をめぐる真剣な戦いだったのですよね。正木ひろし弁護士が弁護人に就いていた事実も知りませんでした。
 

 ((参考カテゴリ))
 「らしくない弁護士 正木ひろし」
 

 被告人は翻訳を実施した大物作家の伊藤整、そして版元の小山書店代表。

 最終的に二人は、わいせつ文書頒布罪の共同正犯と認定され、有罪判決(小山被告人に罰金25万円、伊藤被告人に罰金10万円)が言い渡されたわけですが、いったんは一審・東京地裁で伊藤被告人は無罪とされていました。

 「チャタレー夫人の恋人」の日本語訳の出版を企画したのは小山書店であり、伊藤整はその翻訳を依頼された立場。よって伊藤被告人は、わいせつ文書頒布の共犯ではないとされたからです。

 ただし、二審で協力関係が認定され、逆転有罪となりました。

 以下は、いわゆるチャタレー事件をめぐって、一貫して被告人両名の無罪を主張する、最高裁判所・大法廷における正木ひろし弁護人の舌鋒鋭い弁論(抄)です。

 

 

 ……もとより、限りある時間、限りある陣容の上に、極めて限りある経験と知能を持つ者にすぎません故、裁判官又は検察官その他、現在及び将来の一般社会の眼から見たならば、さだめし欠陥の多かったことを指摘されるでありましょうし、また指摘されることによって、われわれは反省の資とし、日本文化のため、捨石の役目を果たすことができると信じているものであります。

 世間では、本件の対象となっている物件が、日本の文化資材であるという意味から「文化裁判」と呼ぶ向きもありますが、実は本件の裁判それ自身が、その運営を通じ、過渡期における日本国民の法律思想、ことに未だハッキリと身についていない民主主義を、既に我等のものとなっている民主憲法と結び付け、それを国民の血肉と化し、日本文化をして、現代世界第一流の文化の一環たらしめるように、そこまで押し上げる働きをさせる意味に於いて、すなわち「文化を向上させる権利」という意味に於いて、「文化裁判」と呼ぶこともできると信ずるものであります。

 ことに敗戦の結果、日本の国土より離脱した朝鮮、台湾、沖縄等の住民は、国籍は日本でなくなった今日も、いまだ日本語を利用し、日本語を通じて日本文化の深い影響の下にあると思いますので、その日本の言論が、いつまでも彼等の信頼を保ち続けることができるかどうかということは、将来に亘って、いよいよ重大となります。

 本件はかように日本語にある文化の輸出の問題にも深い関係があると信じます。なおまた、本件のために出廷した各証人たちが、過去並びに現日本を指導してきた各方面の知名の士であり、或は多数の国民の声を代表する選手として選ばれた有識者でありましたので、将来、この裁判記録が1951年当時の日本の文化の状況を研究する人達のためにも、歴史的好資料となるだろうという意味においても、文化の名に値する裁判だと信じます。

 本件の被告人たちは本件の著作物を日本国民に提供した動機と同じ動機、すなわち、日本文化の向上と、非民主的な一部の官僚的思想打破の目的を以って、本件裁判を迎えたのであります。

 日本文芸家協会、日本ペンクラブ等の文化団体、その他の学術研究団体等が声明書を発したり、或いは個人の資格を以って応援したことは枚挙にいとまがなく、また、自分から進んで本件の弁護人側の証人となったり、有力な資料を提供されたりしたことは、個人伊藤或は個人小山の無罪を要求するといわんよりは、伊藤、小山を有罪にしようとする無知と不正と不合理に対する文化的良心の爆発にすぎなかったのです。
 
 他を責める者は、これもまた責められる位置に立って居ります。我々5人の弁護人、並びに2名の被告人は、本公判に臨むに当って、主任弁護人が第1回の公判廷の冒頭で陳述した如く、一言一行いやしくもせず、法律を尊重し、裁判の神聖を穢すことのないよう、細心の注意を払うと共に、いささかたりとも非論理、非良心、非民主性、無智、無責任等のないよう、出来る限りの努力を払ったつもりであります。

 「戦後文学論争 上巻」(番町書店)より

 

 実態は、不倫の恋を採りあげたフランス作家のエロ小説に関する裁判ではあるのですが、正木ひろしは果敢にも「文化裁判」と名付け、決して卑俗な争いではなく、国民の基本的人権を初めて保障した 戦後の日本国憲法が機能するか否かの試金石であると再定義しました。

 時は昭和26年。大日本帝国の敗戦から6年、日本国憲法が施行されて、まだ4年目という時期です。
 戦前の国家体制を痛烈に批判してきた正木弁護士ですから、ここで敗北し、国民の表現の自由が単なる絵に描いた餅であるとの現実を突きつければ、またあの頃の暗黒政治が復活するとの生々しい恐怖が胸に迫っていたことでしょう。

 
 正木弁護士の弁舌は熱を帯び、さらに壮大な方向へと翼を広げていました。遡って、当該弁論の冒頭部分を採りあげます。

 

 

 (敗戦の事実を指摘、戦前の政治を批判し)……かかる非民主的な政治が、いかに脆弱であり、いかに危険であり、いかに国民を不幸にするかということは、すでにこの敗戦によって、徹底的に全国民の前に証明されたのでありました。新日本は、新憲法とともに始まったのであります。
 この憲法を生かすか、殺すかということは、ただに全日本国民の来るべき運命を決するほか、現世界人類の禍福にも重大な影響を及ぼす可能性のあることは、戦後の国際関係に少しでも注意する者が、等しく感じ、かつ、憂慮するところであろうと思います。
 チャタレー事件は、そのような時機に発生した不思議な使命を持っている事件であります。

 今日、世界を恐怖に陥れている原子爆弾の発明は、世界の学者がニュートン以来の古い物理学体系を捨てて、新しい物理学体系を受け容れた結果といわれていますが、この二つの物理学体系の真偽を決定したのは、1919年、アフリカにおける皆既日食の瞬間に、たまたま太陽付近を通って光る小さな光の光線が、太陽の引力によって僅かながら太陽の方へ引きつけられるや否やという、極めて微妙な実験観測でありました。
 おそらく、アフリカの土人等にとっては、実験者の群れが右往左往している様を見て、ただ一つのお祭り騒ぎとしか映じなかったでありましょうが、世界の物理学者たちは、括目してその結果如何を待ち設けました。

 チャタレー裁判事件は、まことに微細な事件でありますが、現日本において、旧憲法的な考え方が支配するのか、新憲法の精神が支配するかを決定する、最重要なる実験用の星の光だったのであります。

 

……なんだか、脱線したものの修正してうまく着地したように見えますけど、こじつけといえばこじつけなのかな。

 

 古いニュートン物理学を疑い、質量がエネルギーに化けることを見抜いた相対性理論を構築できなければ、原子爆弾が誕生することはなかった。

 

 ……広島と長崎の民間人へ向けて米軍が2発の原爆を投下した被害と記憶が、まだ生々しく残っていたと思われる時期に、まるで「われわれは今、法体系における原子爆弾を発明できるかどうかが試されている!」と、原爆を肯定するかのような発言をする なりふり構わぬ大胆さが印象的です。

 なにしろ、警察の拷問取り調べを証明するため、被疑者の墓を掘り起こすなど、目的達成のために手段を選ばない人ですからね。

 でも、それだけ当時は、原子力エネルギーという新発見が良くも悪くも画期的で、人類の明るい未来を予感させるほどの希望が託されていたともいえるのでしょう。

 原爆を使った米軍はどうしようもないが、原爆の発明そのものは人類文明の躍進なのだと。 技術革新と善悪を切り分けて捉えていたのかもしれません。 これも理性の発動だといえます。

 

 現代における「文化裁判」は、はたしてどんなものでしょうね。

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2011年8月22日 (月)

セピア色の味わい…? 昭和初期の裁判官お言葉集

 ひょんなきっかけで、国会図書館にて戦前の東京朝日新聞の記事をパソコンで検索できることを知りまして、ついでに、戦前(おもに昭和初期)の裁判官のお言葉を拾ってみました。

 なんともいえない味があるんですよね。

 

 

『馬鹿な真似をしちゃいかんぜ』

 1927(昭和2)年10月19日 (東京控訴院・遠藤裁判長)

 若槻禮次郎首相(当時)の官邸へ、白木の三方(神事に使う台)に短刀一口、さらに棺おけ1個をかつぎこんだとして、「暴力行為取締法違反」に問われた某結社(おそらく右翼団体)の「首領」(39歳)に、懲役6月(3年間の執行猶予)を言いわたして。

 

『この種の犯罪は刑法上でも軽い犯罪に属し、路傍で行われた場合にはおそらく起訴もされなかったであろう。場所がたまたま神聖な議場であった故に、ついにこの結果を致したことは遺憾である。法律を曲げることはできぬ。無罪にしえないことは誠に気の毒にたえない。将来この種のことがないように望む』

 1927(昭和2)年12月16日 (東京地裁・垂水裁判長)

 国会議事堂で代議士の演説中に演壇の上に駆け上がって、殴打したり、背後からのどを締め付けたり、演説草稿を破ったりして、演説を妨害した10人の代議士が起訴され、9人に懲役3ヵ月などの有罪判決を言い渡して。

  政治家に対して「無罪にできないのは気の毒」と、権力作用への同情を寄せる本音を裁判官が露わにしたのは、やはり時代性かなと思います。……ただ、一部の代議士には罰金50円の求刑に対して、罰金300円という求刑越え判決を言い渡すなど、判決内容には厳格さも見られました。

 

『刑事訴訟法の規定により、被告人の陳述を聞かずに判決したが、このような異例の裁判をしたことは遺憾である。被告人の父親も心配していることもわかっているだろう。よく周囲を考えなければならぬ』

 1932(昭和7)年8月4日 (東京地裁・藤井裁判長)

 治安維持法違反で起訴された被告人(26歳)が、法廷で不規則発言を繰り返して、ついに退廷命令をくだすに至り、その後、懲役3年の実刑判決を言い渡して。

 

『時間があるから聞こう。ただし、これは裁判所としてでなく、個人として会談しているのだから。ただ、共産党の被告人の場合、もし出所後も運動するでは保釈できないではないか。これは法律でなく常識だ。被告人は妙に意地を張るように見えるが、これは改めるように忠告する』

 1933(昭和8)年9月19日 (東京地裁・西村裁判長)

 5・15事件の判決公判で、なおも被告人が保釈のことや無罪主張をくどくど述べ立てたことを受けて。

 

『他人に金を貸すのに、自分から、しかも役所にご持参するとは、たぐいまれなる親切ぶりだね』

 1931(昭和6)年9月30日 (東京地裁)
 
 福澤桃介が勲3等に叙せられた見返りに、福澤と関係の深い増田次郎(大同電力社長)らから3000円が渡り、賞勲局総裁の天岡直嘉が1000円の小切手を受け取ったとされ、天岡の私設秘書である鴫原亮暢が逮捕された、いわゆる「勲章疑獄事件」。
 鴫原被告人が、「金銭に窮した天岡氏が、元北海道鉄道の渡辺・兵頭両氏にお金の融通を頼んで、私の一存で自分を介して天岡氏に渡した。渡辺・兵頭両氏が1500円ずつを賞勲局へ持ってきたのも、自分に対してのことだ」と供述したことを受けて。

 

 
 

<< 番外編 >>

『裁判長、過分に思うぞよ』 [※被告人の言葉]
 

 1930(昭和5)年2月13日 (東京地裁・大野裁判長)
 
 母親から預かっておつかいに出ていた9歳の女の子が、踏み切りを通りかかった際、持っていた6円を奪って、強盗の疑いで起訴された27歳の男。 朝日新聞紙上に、法廷でのやりとりの一部が記されていた。
 
 裁判長 「住所は」
 被告人 「赤いレンガ造りの大きな家で…… 今、自動車に乗ってきたばかりだ」
 裁判長 「どうして金を盗った」
 被告人 「(女の子は)嫌だ嫌だと言ったが、構わずグイと盗りましたよ」
 裁判長 「あんなことをして、悪いと思はぬか」
 被告人 「とにかく、腹が減ったね」 (傍聴に来ていた女子高生たちを笑わせた)
 
 裁判長 「今回は、このくらいにしておこう」
 被告人 「裁判長、過分に思うぞよ」 (演劇ばりの台詞もどき)

 ⇒ 当該新聞記事は「次回は精神鑑定が行われるだろう」と結んでいる。 昔の新聞って、けっこうな毒舌を平気で吐いている気がする。

 

 

 国会図書館の端末で可能な戦前新聞検索は、[東京朝日新聞]の[見出し]だけなので、他の新聞、しかも記事全文で探せればいいのになと思います。
 本腰を入れてアナログ的に捜索を始めれば、もっとたくさん見つかるかもしれませんが、あくまで個人ブログのネタですので、この程度の精度でご勘弁を……。

 なお、2年以上にわたってお送りしてきた、裁判傍聴記事のメールマガジン『ナマの犯罪法廷!人生と世の中を「感じて」「考える」裁判傍聴録』は、残念ながら諸事情により、先月いっぱいで配信終了させていただきました。 購読してくださった方々、まことにありがとうございます。

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2011年1月17日 (月)

2010年、各地の裁判官の「お言葉」を振り返る

>>> カーマニア判事、ランボルギーニのスピード違反事件を裁く 豪州

 オーストラリア・パース(Perth)の裁判所で、英BBCの人気自動車番組「トップギア(Top Gear)」のファンだという判事が担当して、スピード違反に問われた整備士の男性(53)の裁判が行われた。豪AAP通信などが18日、報じた。

 職場に向かう被告が運転していた鮮やかな黄色の伊ランボルギーニ(Lamborghini)のスポーツカー「ガヤルド(Gallardo)」(2006年型)をパトカーで追跡した警察官は、追跡時にパトカーの速度は時速160キロに達したと法廷で証言した。

 しかしAAP通信によると、マイケル・ウィーラー(Michael Wheeler)判事は、「警察の米フォード(Ford)製ファルコン(Falcon)を悪く言うつもりはないが、正直言って、ファルコンではわたしの車にだって追いつけないのではないか。果たして被告のランボルギーニを追跡することができただろうか?」と指摘し、100~200メートルも引き離された状況で、被告の車の速度を正確に把握するのは不可能だったと結論づけた。

 ウィーラー判事は判決を前に法廷で、自分が熱心なカーマニアで、公判の前日にガヤルドを取り上げた「トップギア」を見ていたことを明らかにした。「私はトップギアのファンで、(2006年型ガヤルドについての)どうでもいい知識を山ほど知っていることを認めなければならない。ガヤルドは2006年にトップギアで『今年のドリームカー』に選ばれ、ジェレミー・クラークソン(Jeremy Clarkson、トップギアの司会者)もその年にガヤルドを買ったんだ」

 ウィーラー判事は被告に訴訟費用として1万8000豪ドル(約150万円)の支払いを命じるとともに、証言に立った警察官にもっと速いパトカーが与えられることを望むと述べた。【2010年11月18日 AFP】

 

 拙著『裁判官の人情お言葉集』では、モータースポーツが大嫌いなイタリアの裁判官をご紹介しましたが、この人なんて、逆に自身がカーマニアであることを法廷で告白しています。

 しかも、すごいスポーツカーなのをウンチク混じりで認めた上で、スピード違反は違反として、オーナーをキッチリ裁く。なかなかステキな方です。

 「そんなパトカーじゃ、私のクルマにも追いつけない」って、マニアックな事実認定の裏で、暗に愛車を自慢してますけど、具体的な車種を言わないところも、控えめで好印象です。

 オーストラリアの判事の給与じゃ、ランボルギーニを買うのは非常に難しいんでしょうね。憧れだけでとどめているのでしょう。

 まぁ、日本の判事なら給与水準が高いので、買おうと思えば買える方もいそうですけど、人目につくのがお嫌いな方がほとんどでしょう。そんな派手なクルマに食指は動かないのかなと。

 
 

>>> 裁判長がストップウオッチ、弁護人に時間厳守指示? 鳥取地裁

 鳥取地裁で15日開かれた殺人未遂事件の裁判員裁判で、最終弁論中の弁護人に大崎良信裁判長がストップウオッチを掲げて示し、予定時間厳守を促すような場面があった。

 訴訟関係者によると、弁論時間は事前協議で20分間と決まっていた。弁護人は証言台の前に立ち弁論していたが、十数分経過したころから、大崎裁判長が無言で、用意していたストップウオッチを持ち上げた。自分の腕時計とストップウオッチを交互に見比べるしぐさも見せた。弁論はほぼ予定時間内に終わった。

 これに先立つ検察側の論告求刑も20分前後だったが、大崎裁判長はこうしたしぐさを見せなかった。

 裁判では昨年10月、長男(40)をおので襲ったとして、殺人未遂罪に問われた鳥取県岩美町の無職、辻薫被告(72)について審理。判決は16日に言い渡される。(2010.7.15 産経新聞)

  法廷内でのストップウオッチの呈示に関する会長声明
  (鳥取県弁護士会から鳥取地裁への抗議文)

 
 集中力を途切れさせないよう、裁判員の負担を軽くするために、審理を長引かせないよう、プロ裁判官が配慮するのはわかるのですが、「ストップウォッチ片手に」ってのは、なんともイヤミですね。100分の1秒単位まで計る気だったのでしょうか。

 法廷にだって、時計ぐらいあります。

 20分で済ませる予定なのに、弁護人が30分以上も弁論をしていたら、裁判長が「あとどれくらいかかります?」「適宜省略してください」などと牽制すればいい話ですよね。

 地元の弁護士会が「弁護人への侮辱」だと怒るのもムリはありません。

 ちなみに、懲役5年の求刑に対して、判決は懲役3年6カ月でした。一般的な量刑相場と言われる「求刑八掛け」よりは少し軽くされたようですね。
 
 

 < 大崎良信判事の略歴 >
 (「全裁判官経歴総覧」「e-hoki裁判官検索」「ヨミダス文書館」より)

 1960年1月3日生まれ (51歳)
 京都府出身 早稲田大学卒
 司法修習42期(1990年任官)
 
 赴任地 … 神戸→大分→和歌山(田辺)→福井(武生)→福岡→大津→鳥取 (最高位:福岡高裁判事)

 ★2009年11月、強姦致傷という重罪の事案で、被告人の反省と謝罪の態度を重くみて(保護観察付き懲役刑ながら)、異例の執行猶予判決を示して話題に。
 「罪を許したということではないし、償いが終わったわけではない。判決理由の一つひとつを心に刻んで忘れないように」「保護観察中は酩酊するまで酒を飲まないこと、できれば酒はやめた方がいい」と説諭。

 
 

【そのほか、昨年の「お言葉」ダイジェスト】

 
「お子さんの良いところを3つ言ってください」
「わたしにも同じ年ごろの子どもがいる。自分も反省しながら、この事件に向き合っている」
「『子どもは親の鏡で、子どもを見ればどういう家庭で育ったか分かる』と言われたことがある。愛情を注ぎ、自信を持って『こんな風に育ちました』と言えますか」
「子どもの言動の裏には、そうせざるを得ない理由があったのでは」
「親が2人とも怒ったら、子どもは逃げ場がない」

 (横浜地裁 香川礼子裁判官)2010/10/07

  11歳の長男を木刀で殴ったとして、傷害の罪に問われた父親と同居女の裁判で。「ウソを付くクセがあったので直したかった」などと、長男の欠点を列挙して自らの行為を正当化する被告人の態度に対して、涙ながらに、子育て中の母親としての経験をアドバイス。 被告人らは答えに詰まったといいます。

 
 

「あなたには運転適性が無いと言わざるをえません」

 (横浜地裁 成川洋司裁判官)2010/09/24

  無免許運転で死亡事故を起こして、刑務所で服役した後、再び無免許運転をして、スピード違反の摘発を逃れようとして、信号無視などを繰り返した26歳の男に対し、懲役5カ月の実刑を言いわたして。
 4年前に起こした死亡事故も、坂道でトラックを停車させて離れていたところ、サイドブレーキの利きが甘く、坂道の下で自転車に乗っていた小学2年生に衝突させたというもの。これがもし無免許じゃなかったら、少々気の毒な事故かもしれませんけど……。
 運転の適性というより、もともと他人のことまで考えが及ばない人なのかもしれません。

 
 

「同じ問題で苦しむ家族に、あなたができることがないか考えてほしい」

 (神戸地裁 東尾龍一裁判長)2010/09/06

  アルコール依存症の長男の世話に苦労し、飲酒しないよう注意したところ、口答えされたため立腹し、タオルで首を絞めて殺害した父親に対し、執行猶予つき懲役3年を言いわたして、被告人に何らかの社会貢献を促す東尾さん、相変わらずさすがですね(「爆笑お言葉集」126ページ)。
 裁判員を経験した女性からも「アルコール依存症の壮絶な闘いを目の当たりにして考えさせられた」とコメント。

 
 

「傍聴人、 証人の答えに、いちいち反応しないように」

 (京都地裁 増田耕児裁判長)2010/05/12

  3人の娘の点滴に、水道水やスポーツドリンクを混入して死亡させたなどとして、傷害致死などの罪に問われた母親の裁判員裁判(第3回公判)。病理鑑定医の証人尋問で、専門的なことを絶え間なく話し続ける証人の説明に、その都度うなずいてみせる傍聴人に対して注意を投げかけた。
 裁判員に対して、まるで証人の説明がすべて正しいかのような先入観が入らないようにするための配慮だと思われます。かといって、その傍聴人が医学の専門家だとは限らないわけですが。 いや、むしろ間違いなく素人だと思いますけど。

 
 

「発達障害でもノーベル賞を取った人だっている。自信を持っていいんだ。自分の障害とうまく付き合う方法を考えてください」

 (東京高裁 矢村宏裁判長)2010/04/26

  JR東京駅のホームで、女性を突き落として電車に接触させ、ケガを負わせたとして殺人未遂罪などに問われた25歳の男に対して、懲役9年を言いわたした一審判決を支持して。
 就職先が見つからない不満から、いったんは自殺を考えたが遂げられず、無差別殺人で死刑になるしかないと思っても躊躇し、最終的に本件の実行に至った、発達障害はあるが大きな影響は無いと犯行動機を認定し、判決文読み上げ後「発達障害はダメじゃない」と説諭。
 ちなみに、ノーベル物理学賞受賞者のアインシュタイン氏や益川敏英氏には発達障害があったといわれています。たしかに、対人関係を築くのが苦手な代わりに、興味を持った事柄に向けられる集中力が尋常でないのが特徴とされています。ですが、同じ発達障害でも社会的に活かせる才能のある人と無い人がいるわけで、この種の説諭が不用意に行われてしまえば、特別な才能を持たない障害者を精神的に追い込むだけではないかとも思います。
 一方で「障害とうまく付き合う方法を考えて」との矢村裁判長の語りかけには、被告人の立場への配慮が見られて、なかなか光っているとの印象を受けました。

 

 

「あなたの診断書にあった病気の一つを私も持っている。それに負けないで、会社の事業を頑張ってほしい」

 (東京地裁 片岡理知裁判官)2010/04/09

  3年間で約1億円を脱税した金属卸会社の社長に対して、有罪判決を言いわたして。
 被告人は複数の心臓病を持っていたことから、自身や弁護人は寛大な判決を求めていたが「体調がよろしくないことを酌んだ判例はあるが、今回はあえて理由に挙げなかった。体が悪いから罪が軽いとは言いがたい」と厳しく指摘。
 しかし、同じ病気を持ったふたりが、裁く側と裁かれる側として法廷で向き合うことに。これも何かの縁なのでしょうか。こういう場合に、もし持病を理由とする減刑をしたなら、裁判官はものすごく批判されるんでしょうね。

 
 

「これは人を殺すことで事態を打開することを認める判決ではありません。特にお孫さんたちには、あなたが許されたわけではないということを伝えてください。これが裁判員の思いです」

 (東京地裁 山口裕之裁判長)2010/04/22

  高額な医療負担に悩んでの自殺未遂により、意識不明で入院中だった息子を刺し殺した67歳の母親に対して、執行猶予つきの懲役3年を言いわたして。
 たしかに執行猶予が付くと、被告人自身や世間から「甘い判決だ」と受け取られがちですので、その油断にクギを刺したかたちでしょう。
 健康保険が適用されずに高額な医療費になっていたことについては、その局面を乗り越えるために手段を尽くす余地があったと指摘した一方で、意識が回復する可能性がほとんど望めない息子を哀れに感じ、死ぬことを望んでいるのではないかと考えた経緯には同情の余地があるとしています。
 裁判員経験者からは「自分がこの立場ならどうしただろうと考えたが、結論は出ず難しかった」「保険制度や医療制度の見直しが必要」とのコメントが出ていたようです。

 
 

「下級審が、最高裁判決に、いささか過剰に反応している」 「法律がみなし弁済の可能性を容認しているのに、司法が極端に要件を厳格に設定して、みなし弁済規定を事実上葬り去るのは異常事態で、司法ファッショと批判されかねない」

 (神戸地裁 社(やしろ)支部 山本善平裁判官)2010/03

  ちょっと難しい話ですが、下級審の裁判官が、他の裁判官が流れている方向性を痛烈に批判して、そうしたトレンドとは異なる判断を示した例です。
 大手の消費者金融から、グレーゾーン金利(出資法違反の犯罪にはならないまでも、民事的には返還義務があるような高金利。2010年6月の改正法施行で、現在ではグレーゾーン金利を取ること自体が違法になっている)で借り入れた女性が、過払い金235万円の返還と利息5%の支払いを求めて提訴しました。
 消費者金融サイドは、貸金業法43条の「みなし弁済」(これも現在は廃止)を主張して応戦しています。
 みなし弁済とは、消費者金融が、返済期間や回数を明記した契約書を渡すなど、十分に説明を行っている場合には、借り手側がグレーゾーン金利での返済を認めて、受け入れたものとして扱う例外規定です。
 このみなし弁済は、最高裁が消費者金融側にとって適用条件を厳しく解釈したため、ほかの下級審(地裁など)も、みなし弁済をほとんど認めない運用をしてきたのです。
 しかし、山本裁判官は「被告のような大手が要件を順守し、みなし弁済の適用を目指したのは当然」として、みなし弁済を適用し、借り手側からのグレーゾーン金利ぶんの返還請求を認めない判断をしました。
 消費者金融も、かつてのような猛威はなく弱体化してきていますので、このようなバランスを取った判断もあっていいと思いますね。
 利息制限法もそうですが、この種の事件では、借り手側有利の法解釈がなされて久しいです。いくら立場の弱い借り手を保護するためとはいえ、立法府の国会が民主的に作った法律を、非民主的機関である司法府の裁判所が、どれだけいじっていいのか。三権分立というデッカイ問題とも絡みます。
 そもそも法案を作る段階で、しっかり考えてほしいのですが、いろんな立場の権力者が、各方面からいろんなことを口出ししてきて、とりまとめが大変なんでしょうね……。

 

 

「一世を風靡したアイドルグループの元メンバーに、このような実刑判決を出さなければならないのは残念。しかし2度も覚せい剤に手を染めた事実は変わらない。服役中と出所後、あなたを取り巻く状況が厳しくとも、負けずに地道に努力して、更生することを期待します」

 (千葉地裁 新井紅亜礼裁判官)2010/03/30

  覚せい剤取締法違反の罪の執行猶予期間中に、再び覚せい剤を使用したとして、「光GENJI」の元メンバー、赤坂晃被告人に対し、懲役1年6カ月の実刑を言いわたして。
 過去の栄光を無理に「取り戻そう」と思うと、余計に挫折感が募って薬物に走ってしまうような気がします。今置かれた現状にどれだけ満足できるか、が問われますね。

 
 

「あなたにとってのゴールデンプランは、まじめに服役し、1日も早く出所すること。余生はいいおじいちゃんとして暮らしてほしい」

 (宇都宮地裁 池本寿美子裁判長)2010/03/19

  暴力団抗争にともなって、道路に向かって拳銃を3発発砲して、銃刀法違反の発射罪に問われた66歳の男に関する裁判員裁判で、懲役6年6カ月の実刑を言いわたして。
 そういえば、この池本裁判官は、足利事件の再審開始(やりなおし裁判)請求を退けたことでも知られます。その後、別の裁判官が請求を認めて、菅家さんは刑務所から釈放、やがて無罪になりました。

 
 

「妻の冥福を祈って、暮らしていってほしいと願います。刑の執行は、あなたの健康状態によります」

 (山形地裁 伊東顕裁判長)2010/03/17

  認知症の妻を絞め殺したとして、殺人罪に問われたものの、一貫して殺意を否認し続けた、過去に町議会議員を務めた経歴を持つ78歳の男の裁判員裁判で、懲役8年の実刑を言い渡して。
 かねてより妻の徘徊グセや服薬拒否に腹を立てていたこと、また犯行時の首の圧迫の度合いに基づき、裁判官と裁判員らが殺意を認定したことにより、被告人が殺意を否認し続けた点が「反省なし」とされました。
 法律上「70歳以上ならば刑の執行を停止できる」のですが……

◆ 刑事訴訟法 第482条(自由刑の裁量的執行停止)
 懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者について左の事由があるときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によって執行を停止することができる。
  1. 刑の執行によって、著しく健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき。
  2. 年齢70年以上であるとき。
  3. 受胎後150日以上であるとき。
  4. 出産後60日を経過しないとき。
  5. 刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずる虞があるとき。
  6. 祖父母又は父母が年齢70年以上又は重病若しくは不具で、他にこれを保護する親族がないとき。
  7. 子又は孫が幼年で、他にこれを保護する親族がないとき。
  8. その他重大な事由があるとき。

 ……判決理由は、本件を起こした刑事責任は重大で、被告人の年齢を考慮しても、なお猶予可能な範囲を超えると指摘したのです。
 ただし、刑務所生活によって健康状態に問題が生じると判断されるときは、懲役刑の執行を停止する余地を残しました。
 先ほどの条文の2号に加えて、1号の趣旨も加味した、異例の説諭ですね。

 

 

「裁判にかかわった全員が、被告人に生まれ変わってほしいと願っています」

 (東京地裁 後藤真理子裁判長)2010/01/28

  歩いていた女性の胸を触り、顔などを殴ってケガを負わせた路上痴漢の事案で、強制わいせつ致傷に問われた22歳の男に関する裁判員裁判。判決公判で執行猶予つきの懲役3年の刑を言いわたして。
 痴漢といえば「電車の中」というイメージが強いでしょうが、迷惑防止条例や強制わいせつ系の裁判を傍聴していると、路上痴漢も意外と多いことがわかります。
 「生まれ変わってほしい」との説諭に対し、被告人は「わかりました」と述べたようです。

 

 
「判決を決める時に降った雨は、長男の涙が雨になったとも思えた」

 (那覇地裁 吉井広幸裁判長)2010/01/28

  知恵遅れの息子を虐待で死亡させ、傷害致死罪に問われた29歳の父親に対し、懲役6年の実刑を言いわたして。
 個人的には3年前、吉井裁判官の法廷を傍聴するために、自費で沖縄まで行ったことが思い出されますが、その期待にたがわぬ詩的な説諭です。(「人情お言葉集」38ページも参照)

 

 

「保険会社から『被害者に会わない方がいい』と言われたとしても、結果はあなたが負うことになる。これまでの選択が胸を張れるものか、よく考えてほしい」

 (和歌山地裁 杉村鎮右裁判官)2010/01/07

  クルマ運転中の前方不注意で、原付に乗っていた男子高校生に大けがを負わせた交通事故。執行猶予つきの懲役1年を言い渡して。
 交通事故の裁判では、被告人が「被害者や遺族のもとへ謝罪に出向いたかどうか」が、情状面で特に重視されます。
 杉村さんの裁判も、やはり3年前、わざわざ徳島まで行って傍聴したものです(「人情お言葉集」128ページも参照)。こうした傍聴旅行をまたやってみたいなぁと思いますね。今は時間的にも経済的にも余裕ないですが。

 

 
「感受性が豊かになるよう、小説やエッセーを読んで人の感情をもっと勉強してほしい」

 (新潟地裁 山田敏彦裁判長)2010/01/13

  酒に酔った状態で、76歳の母親に執拗な暴行を加えて死亡させた息子に対して、心神耗弱状態を認定して刑を減軽した上で、懲役4年6カ月の実刑を言いわたして。
 特に変なことは言っていないのですが、「感情を勉強する」という言い回しが、いかにも裁判官っぽい感じもします。

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2010年7月17日 (土)

韓国の裁判官、乱暴お言葉集!?

>>>【社説】「離婚者は黙っていろ」 暴言吐いた判事

 ソウルのある裁判所に所属する40代後半の判事は今月6日、賃貸物件の保証金返還訴訟に出廷した母子に暴言を繰り返した。離婚歴がある母親(57)が挙手して発言しようとしたところ、判事は「お前は離婚したというのに、何を言いたいんだ。黙っていろ」と失礼な言葉でそれを制止。娘(33)に対しては「カネを早く受け取りたくないのか」などとぞんざいな言葉を連発した。また、裁判の過程で亡くなった父親の名前が登場すると、判事は「さん」という敬称さえ付けなかったという。

 これが「東方礼儀の国」と呼ばれてきた国の法廷風景で、秀才の中の秀才とされる判事の品格だ。娘は「判事が両親にあまりに失礼な態度を取り、苦痛を受け、怒りが込み上げた。これでは納得がいかないことがあっても、判事が怖くて裁判も受けられない」として、国家人権委員会に訴えた。

 判事が暴言を発したケースはこれにとどまらない。69歳の訴訟当事者に「臆面もなく-」などと発言した39歳の判事や「この事件はむちゃくちゃで汚くてやってられない」と発言した判事もいた。ソウル地方弁護士会が今月1日に発表した裁判官評価調査でも、弁護士の30%が判事の暴言や威圧的な態度を問題点として挙げた。

 裁判官倫理綱領は「裁判官は訴訟関係者に親切かつ丁寧に対しなければならない」と定めている。また、その綱領に違反した場合には、懲戒が可能だと定めた裁判官懲戒法に触れるまでもない。

 裁判官の言動が訴訟当事者の信頼を失えば、判決に対する信頼、司法に対する信頼が失われる。しかし、裁判所は国民の委任に基づく司法権を個人の権限と勘違いした判事に対し、ただ口頭で注意を与えただけだった。暴言判事は今後も後を絶たないだろう。 (朝鮮日報日本語版 2010/07/14)

 

 こういうネタを取り上げると、韓国を差別したり卑下したりして一種のカタルシスとするような、水面下で鬱屈した一部の日本人の態度と直結させる向きもあるんでしょうが……。

 記事をよく読むと、韓国の裁判官、みんながみんな暴言を吐くわけではなく、特定の裁判官だと相場は決まっているようですからね。

 だったら、日本の裁判官にも同じようなことがいえるのではないかと。

 全国に3500人ほどいる裁判官のうち、妙な人も明らかに、ごく一部混じってます。

 一昨年に、週刊ダイヤモンドさんで、拙著「裁判官の爆笑お言葉集」のスピンオフ企画(?)として、『裁判官の非常識お言葉集』という原稿を載せていただきましたが……

 

 審理の途中で「こんな裁判をやるのはおかしい」と発言した民事裁判官。

 

「タクシー運転手には、雲助まがいの者や、賭け事などで借財を抱えた者が、まま見受けられる」と、あろうことか判決文に明記してしまった裁判官。 

「暴走族は暴力団の少年部。 犬のウンコですら肥料になるのに、君たちは何の役にも立たない産業廃棄物以下だ」と発言した、家庭裁判所の裁判官。

 週刊誌の名誉毀損裁判で「被告週刊誌の読者が、サラリーマンや自営業者、主婦であることが認められ、特段に知的水準が高いとは言えないことに鑑みると……」という、ファンキーな認定をしてみせた裁判官。

 

 ……自分の書いた記事を改めて読み返してみましたが、いやー、ニッポンの裁判官もなかなかのものです。

 ここまでわかりやすい失言でなくても、明らかに的外れ、思い込みに基づくような前提をもとに話を進めたり、被告人の話を聞かずに自分の言いたいことをダラダラ話したり、逆に手を抜いて質問なしで終わらせたりするような、志の低い裁判官は「まま見受けられ」ます。

 刑事裁判官だと、弁護人にはヨソ行きの丁寧語を使っておきながら、検察官にはフランクにタメ口で話すような人も見かけます。

 同じ刑事部の裁判官と検察官は、毎日顔を合わせていますので、なあなあの仲になっているんでしょう。

 裁判の公平性に対する疑義が、ありありと目に浮かび、哀しくなります。

 

 記事によると、韓国では、弁護士の30%が判事の暴言や威圧的な態度を問題点として挙げたそうですが、日本の弁護士にアンケートを採っても同水準の数字は出るものと想像できます。

 この朝鮮日報の指摘を、決して「対岸の火事」とは思わないことですね。

 「国民の委任に基づく司法権を個人の権限と勘違いした判事」という表現は、言い得て妙です。

 

>>> 裁判所が「法廷での正しい言葉遣い」マニュアル配布

 最近、法廷では裁判官の暴言が問題となっているが、これを受けて裁判所では、裁判官の言葉遣いを正すための対策に乗り出している。

 ソウル中央地裁は15日、改善策を取りまとめ、「法廷での裁判官の正しい言葉遣い」と題するマニュアル形式の冊子として発行し、刑事部の裁判官に配布したことを発表した。

 改善策には▲法廷での正しい言葉遣いの重要性▲言葉・行動・表情の特性▲法廷での言葉遣いの注意点などが細かく記載されている。

 具体的には、「相手の話の腰を折らない」「神経質な態度を取るのは裁判官の品位を落とす」「“(発言者が)話にもならないことを言っている”という先入観は持つべきでない」などだ。

 裁判所の関係者は、「国民が裁判のプロセスに信頼を置くことが急務であり、この点では共通の認識ができている。そのため今回、改善策を取りまとめた」と述べた。

 ソウル家庭裁判所の裁判官らも、先月中旬から6週間の予定で、毎週1回ずつ「他人の話に耳を傾ける方法」「相手の気分を害さずに話をする方法」などのテーマで講習を受けている。(朝鮮日報日本語版 2010/07/16)


 

 暴言対策も、ここまで来ると、やり過ぎというか、やるせなくなるような。

 裁判官も、いちおう選びに選び抜かれた精鋭集団のはずですし、「正しい言葉づかいをしよう」という、まるで3歳児の躾みたいなパンフレットは必要なんでしょうか。

 

 それにしても「神経質な態度を取るのは、裁判官の品位を落とす」というアドバイスは、私の目には興味深く映りますね。

 庶民の話によく耳を傾けてくれる裁判官、細かいところに気を遣ってくれる裁判官も、好感度が高くていいのですが……

 別に法廷はカウンセリング室じゃありませんしねぇ。

 最終判断者たるもの、それだけじゃあ足らんのではないか! というのが、私の意見といいますか、裁判官に期待するイメージです。

 うまく書けませんが、ある程度のカリスマ性というか、オーラというか、些事に動じない、媚びない態度は心がけていてほしいものです。

 締めるべきところはキッチリ締めるような、メリハリがほしいなぁと。

 

 とはいえ、そこにも落とし穴があります。

 今年2月、名古屋地裁の裁判員裁判が終わった後の記者会見で、「裁判員席にずっと座っていると、自分が偉くなったような錯覚に陥りました」と、正直な感想を述べてみせた裁判員がいました。

 一般市民から、このコメントを得られた。それだけでもう、裁判員制度は成功なのかもしれません。 (だからさっさと止めたほうがいいのかもしれません)

 一段高いところに座り、物理的に法廷の隅から隅まで、すべてを見渡せる位置にいられる裁判官。

 そして、裁判の進行を掌握する訴訟指揮権や、裁判の妨害を食い止める法廷警察権を与えられている裁判官。

 そうした物理的視点や法律的権限を、心理的な傲慢に変えてしまうだけの「呪い」が、あの地位には隠されているようです。

 現代受験システムの勝者である裁判官ですから、記憶力や事務処理能力などは抜群に高いのでしょう。

 とはいえ、“頭の良さ”と一口に言っても、いろいろと「ジャンル」ってもんがあります。

 自分自身の言動を客観的に想像、俯瞰して、自己コントロールする能力。 これも頭の良さです。

 接客や営業担当者、お笑い芸人など、他の人間と真剣に向き合う職業人は、この能力を鍛えていなければ、おまんまの食い上げでしょう。

 視点を1つに固定して見ればシリアスな問題でも、俯瞰で見てみれば喜劇だってことは、よくある話で。

 俯瞰・客観視の能力が裁判官に備わっていれば、暴言や失言の心配はありませんが、その有無はは、司法試験や二回試験などでは検証できていないはずです。

 

 まぁ、結局は何だって、バランスが大事だよね!

 ……という、面白くも何ともない結論になってしまうのが無念ですが。

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2010年6月 7日 (月)

世の中には2種類の人間しかいない

「世の中には、2種類の人間しかいない。覚せい剤の味を知っている人間と、知らない人間。いったん覚せい剤の味を知ると、一生意識から消えないの」

 
 覚せい剤・大麻の所持などの罪に問われた20代の男の裁判。 その母親が情状証人として出廷して話をするも、息子に厳しく注意したのか説明があいまいで、ほとんど警察任せにしている様子が見て取れて。
 (大阪地裁 伊藤寛樹裁判官) 2010/06/04

 

 

 要は「覚せい剤は依存性のある薬物である」という事実を言い換えたわけですが、なかなかインパクトがあるお言葉。

 私は初めて聞きましたが、この伊藤裁判官なら、薬物事犯を担当するたびに言っていそうではあります。

 見たところ、痩せ型でメガネを掛けていて、いかにも賢そうな風貌。

 さっき「全裁判官経歴総覧」で調べたところ、1971年12月生まれの、38歳だそうですが、それでも伊藤裁判官は、被告人の母親にも臆せずにタメ口で質問を投げかけ、厳しく覚悟を求めています。

 手続きの進行も、淡々とドライに。

 かといって偉そうとか威圧的だとかいう印象を与えないのは、人徳みたいなもんでしょうか?

 

 やっぱり霞が関とは違う味がありますねぇ。大阪地裁。

 だからといって、大阪に住むわけにはいきませんけど、必ずまた、近いうちに傍聴しに来ます。

 

20100604144911  

■ お知らせ ■

 たった今、連絡をもらったのですが、幻冬舎新書が電子書籍に参入するそうです。

 私が書いたうちでは、『裁判官の“爆笑”“人情”両お言葉集』と、『47都道府県 これマジ!?条例集』の3冊ですね。

 こちらがケータイで読めてしまうと。

 片手の恋人、電子書籍。(← いま浮かんだキャッチフレーズ)

 通勤電車での暇つぶしにどうぞ。

 秋からは、ちまたで話題のアップルiPhone、iPad、アマゾンKindleでも!

 皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 まぁ、原稿を書く側としては、やるべきことは従来と何ら変わらんと思いますが。

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2010年5月15日 (土)

ベテラン裁判長、日替わりの苛立ち

>>> 京都地裁:裁判長怒る 「居眠りする人は出ていって」

 京都地裁で11日にあった点滴水混入事件の裁判員裁判で、難解な医学用語の多用のためか多数の傍聴者らが居眠りを始め、怒った裁判長が“水入り” を宣言した上、「居眠りしたい人は出ていって」とくぎを刺す珍事があった。地裁は再開後、廷内に監視役とみられる職員を配置した。
(※中略)
 昼休みを挟んで午後1時10分に始まった公判で、検察官が死亡した四女の投薬状況や病理鑑定について説明。「β-Dグルカンはいわばカビの残がい」「直接の死因は両側性多発性肺動脈内血栓塞栓(そくせん)症」などの専門用語を連発した。すると約40分後、増田耕兒裁判長が「10分間休廷します」と急に話を遮り、「あちこち居眠りしている」とやや声を荒げた。

 再開後、検察官は「基礎資料の説明でどうしても単調になってしまう。もう少しご容赦を」と釈明。関係者席と傍聴席の間にある扉付近には休廷前までいなかった地裁職員が陣取り、傍聴席の様子に目を光らせた。

 一方、裁判員6人は午後4時半の閉廷まで目をしっかり開けて聞いていた。しかし、四女の主治医への質問はなく、検察側、弁護側、裁判官が病状の変化を詳細に尋ねた。(毎日新聞 2010年5月11日)


 

 入院中の幼い娘3人に打たれた点滴の中に、水道水(スポーツドリンクも混ぜて腐らせたとの見方も)を混入して、1人死亡、2人に傷害を負わせた疑いで起訴された母親の裁判。

 わざと他人を死亡させた「傷害致死」の疑いがある刑事事件であるため、裁判員が召集されるとなりました。

 事件の一部始終を把握するまでのプロセスの中で、医学用語が続出して難解なこともあって、通常は2~3日で終わるところ、本件は9日間という長期日程が組まれ、さらに裁判員にもわかりやすい書き下ろしの医学用語集を配るなどして、特別な対応をしているようです。

 さすがに、平日9日間を裁判に費やせる立場の一般人は多くなく、裁判員候補者のうち、60%以上について辞退が認められたそうです。

 さらに、長丁場の裁判の中で、裁判員への負担が重くなることが予想され、その身に何が起こるかわからないため、補充裁判員(控え)を4人も任命しました。

 ともかく、異例ずくめの裁判員裁判。

 増田裁判長も、集中力を切らさないよう、真剣に審理に臨んでいたのでしょう。裁判長自身も昼下がりで眠く、意識が飛ばないように必死で耐えていたのかもしれません。

 が、遠慮なくグースカ寝ている傍聴人たちをチラホラ眼下にみて、思わずイラッとしたのでしょう。

 私も正直、法廷でメチャクチャ眠くなることはありますが、どうしても我慢できない場合は、自発的に法廷から出て行きます。 傍聴席で寝ていることを裁判長や書記官から注意されるのは恥ずかしいですから。

 洗面台で顔を洗ったり、東京・霞が関の合同庁舎なら、地下にファミリーマートがありますから、そこで眠眠打破を買って飲んで、もう一度エレベーターで法廷に戻ることもあります。

 法廷では眠気覚ましでガムも噛めないので、ちょっと面倒ですね。

 そして、この件に関しては続報が。

 

>>> 裁判員裁判:「首振り」裁判員に予断 裁判長また怒り--京都地裁

 京都地裁で公判が続いている娘3人への点滴水混入事件の裁判員裁判で、前日は傍聴人の居眠りに怒った裁判長が12日、審理中にうなずいたり首を振ったりする傍聴人の態度に苦言を呈し、禁止を命じた。極めて難解な審理の中で、裁判員に予断を与えないよう配慮した措置とみられる。

 裁判関係者によると、検察官や弁護人の言葉に身ぶりで反応を示す傍聴人がおり、午後の公判の冒頭、書記官が「殊更に反応を示さないで」と異例の注意。続いて、増田耕兒裁判長が「首を振ったりうなずいたりしないでください。(裁判員が)気になりますんで」と語気を強めた。(毎日新聞 2010年5月13日)

 

 今度は、傍聴席で知ったかぶりして、しきりに頷く傍聴人にイライラさせられてしまったようです。

 たしかに、たまに見かけますけどね。 法律的な主張が飛び交うたびに、わかったような顔してコクコクと首を縦に揺らす、アピールのうるさいオッサンは傍聴席で珍しくないです。

 あまり聞き慣れない医学的な議論をしっかり把握しようと、増田裁判長も一語一句聞き漏らさず、頭もフル回転状態で対処していたのでしょうね。

 そんな中で傍聴人がお気楽に頷いてたら、「ホントにわかってんだろうな?」と言いたくなってしまいそうです。

 でも、検察官や弁護人など、説明を行っている当の本人たちからすれば、傍聴席からの反応は少し嬉しいものなのかもなぁ……とも思います。

 かつて学習塾講師をやっていた時代のことですが、授業で会心の解説を果たしても無反応・無関心の連中が多い中、最前列でいちいち頷く一部の生徒が、私はかわいくて仕方ありませんでした。

 ま、それとこれとは別ですけどね。

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2010年4月21日 (水)

不二家のペコちゃんは、「子どもたちの夢」か

>>> ペコちゃん連続窃盗で有罪判決=和歌山

 ペコちゃん人形の連続窃盗事件で、8件で人形の持ち出しや売却役を担ったとして窃盗と同未遂罪に問われた大阪府四條畷市、解体作業員池田興應(おきまさ)被告(38)の判決が29日、地裁であった。国分進裁判官は「犯行は計画的で悪質」として懲役3年、執行猶予4年、保護観察付き(求刑・懲役3年)の有罪判決を言い渡した。
 判決によると、池田被告は2008年12月30日~09年2月12日、和歌山や京都など、2府2県の不二家の店頭から、ペコちゃん人形7体(計約40万円相当)を盗み、同1月3日に大阪府岸和田市で1体を盗もうとした。
 国分裁判官は「人形の返還や供託金の支払いなどで実質的な被害が回復されている」などと執行猶予の理由を述べ、「子どもたちの夢を奪うなど、社会的に大きな影響を与えたことを十分認識してください」と説諭した。 (2009年3月30日 読売新聞・大阪)

 

 裁判官のおっしゃたいことも、わかりますけども、

 不二家のペコちゃん人形を盗むことが、「子どもたちの夢を奪う」という、その表現は、だいぶオーバーな気もします。

 今どきは、ピカチュウとかリラックマかな……。

 

 不二家やミルキーの象徴たるペコちゃん人形は、子どもたちというより、むしろレトロモノ好きのマニアに人気かもしれませんね。

 ヤフーオークションを覗けば、不二家の店頭に置いてあるような看板人形は、5~10万円ぐらいの相場で取引されています。

 たとえ中古品でも、それぐらいの立派な資産になるんですね。

 本件では、ペコちゃんを7体も「さらって」いますが、いちおうの被害回復がなされているとのことで、執行猶予がつきました。

 拙著『罪と罰の事典』(小学館)でもご紹介しましたが、2004年の群馬では、小遣い稼ぎ目的で、ペコちゃん2体を盗んだ男に、懲役1年6カ月の実刑が言い渡された例もあります。

 かと思えば、未成年者略取の罪で、懲役数カ月とか、執行猶予が付く事例も多いですね。

 本来は比較すべき問題じゃないことは、重々承知の上で、あえて書きますが、「人間をさらう」ことと、「人形を盗む」こと、量刑のバランスについて考えさせられます。

 

◆ 刑法 第235条(窃盗)
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、 10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

◆ 刑法 第224条(未成年者略取及び誘拐)
 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

 
 

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2010年4月16日 (金)

「私も同じ心臓病」と、裁判官が被告人に説諭

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 いや~、ごぶさたしておりました。

 今月に入って急に押し寄せた繁忙期を、今日なんとか乗り越えることができました。

 「忙しかったクセに、花見には行ったのか」とイヤミを言われそうですが、日本人ですし、花見ぐらい行かせてくださいな。

 桜はもう散っちゃいましたが、今日の異様な寒さをキッカケに、もう一度桜が咲いてほしいと願い……… って、さすがに無理か。

 

 先日、書籍の出版企画がボツになったとお伝えしましたが、にもかかわらず、なんでこんなに次々と時間が取られて、忙しくなってしまったのやら。

 でも、私に声を掛けてくださった多くの皆さんを、ガッカリさせまいと、時間を割いて尽力してまいりました。

 出版不況が長引く昨今ですけれども、自分の働きが業界の景気を上向かせるわずかな一助になることを願ってやみません。

 それにしても、

 自分のブログを、更新どころかコメントチェックすらやる余裕がなかったことは、あまりよろしい傾向とも思えません。 コメントをくださった方には申し訳ない。

 では、ひさびさに、裁判官の最新お言葉のご紹介。

 

>>> 裁判官「私も心臓病、頑張って」 有罪判決の被告励ます

(前略) 3年間で約9400万円を脱税したとして、法人税法違反罪に問われた東京の金属卸販売会社長(54)と同社の公判。片岡理知(まさとも)裁判官は社長に懲役1年執行猶予3年(求刑懲役1年)、同社に罰金2千万円(同罰金2800万円)を言い渡した。複数の心臓疾患を理由に寛大な判決を求めていた社長に、片岡裁判官は「体調がよろしくないことを酌んだ判例はあるが、今回はあえて(減刑の理由に)挙げなかった。体が悪いから罪が軽いとは言い難い」と指摘。「あなたの診断書にあった病気の一つを私も持っている。それに負けないで、会社の事業を頑張ってほしい」と語りかけた。

 言い渡し後、社長の弁護人は「被告の更生を真に願った言葉。被告も真摯(しんし)に受け止めていた」と話した。(2010年4月10日10時45分 アサヒ.コム)


 

 片岡裁判官は、司法修習が54期ということで、わりと若手ですよね。

 若くして心臓に疾患があるということですから、身体的なハンディを背負っている裁判官だという見方もできるでしょうか。 ご本人は否定なさるかもしれませんが。

 ただいま、ちょっと出掛けですので、ウチに帰ったら資料で生年月日を調べてみます。

 ( ※4月18日追記 … 片岡裁判官の生年月日は、1974年11月19日。 現在、満35歳です。 )

 

 自分の過去や取り巻く環境をさらけ出して、被告人に説諭する「カミングアウト型」の裁判官としては、室橋雅仁裁判官(東京地裁刑事12部)が有名ですが、

 今回の説諭をみると、片岡さんも同系統なのかなと。

 ただ、東京地裁刑事8部という、経済犯罪(脱税など)を主に裁くところに所属してらっしゃいますので、セコい刑事事件を積極的に観る傾向のある私としては、あんまり片岡さんの裁判を傍聴した記憶がない……。

 これから、刑事8部にも注目してみようと思います。

 そして、今後、何も特筆すべきことがない日には、私のパソコンの中に溜まっている「最新お言葉ストック」を、少しずつ小出しにさせていただこうかなと、

 そんな心づもりでおります。

 ……こんな宣言をしても、私の性格上、また集中的に忙しくなったら忘れちゃうかもしれませんが。

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2008年2月11日 (月)

「キモイ恋ごころ」を、法はどこまで規制できるか?

>>> ドイツの男、性器の画像を携帯で送信して有罪に

 ドイツで自身の性器を写した画像を携帯電話で知らない女性に送りつけた男(21)が、裁判で有罪判決を受けた。当局者らが6日に明らかにした。

 同国東部ゾンデルスハウゼンの法廷で、裁判長は「それを見たときは全員が少し笑った」と語った。

 裁判所によると、被害女性は、画像が添付されたメッセージの送り主を警察に通報。当局は、男が別の複数の女性にも同様の画像を送った可能性を示す証拠を確認した。

 男には150ユーロ(約2万3000円)の罰金が科せられた。男は動機について明らかにしていないが、反省を示しているという。

 [ベルリン 2008年2月6日 ロイター]


 

 このお言葉は、有罪判決より、だいぶキツいっすねぇ。

 さらに… 女性の裁判長が言うと、より効果的といえましょう。

 さらに「全員があざ笑った」「物笑いにした」などの感想を浴びせると、さらに再犯のおそれは低下するかね?

 いや! それで逆に興奮するタイプの人もいるのか……。 難しいのぉ。 そのへんは被告人質問などを工夫して見極めないといけませんかねー。 わたしゃ、ブログになに書いとんだ。

 

 うーむ…… ところで、こういう類の事件が日本で起こると、どうなるんでしょうか?

 

◆ 刑法 第174条(公然わいせつ)
 公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

 

 ここにいう「公然と」とは、不特定多数の人たちを相手にする場合をいいますから、特定の人に対して、わいせつ画像を送った場合は該当しないことになります。

 「それはおかしい!」と思う人もいるかもしれませんが、国民の代表者である国会議員たちが、話し合いの結果として可決した条文にそう書いてあるんですから、仕方がないのです。 法治国家って、そういうモンなんです。

 どうしても問題が生じる場合には、裁判所や刑事法学者が、条文に書いてある意味の拡張について考えていく「法解釈」の出番なんですけどね。

 では、ストーカー規制法ですとか、各都道府県等の迷惑防止条例による規制はどうでしょうか。

 いずれも「懲役6カ月~1カ月」または「罰金50万円~1万円」の範囲が法定刑です。 迷惑防止条例の法定刑に関しては、東京都のモノしか調べてませんが(手抜き)。

 法定刑は同じなんですけども、ただ、両者は機能がビミョーに違うんですね。

 迷惑防止条例における、つきまといの構成要件は「専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で」という始まりとなっています。

 一方、ストーカー規制法のつきまとい行為は「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」とありますね。

 迷惑防止条例は「いやがらせ目的」、ストーカー規制法は「恋愛がらみ目的」というふうに、使い分けられているのです。

 そして、(詳しい説明は、またの機会にさせてもらいますが) 恋愛がらみのストーカー規制法のほうが、犯罪として取り締まるための条件が、より厳しくなっているといえます。

 なぜなら、プライバシーのなかへ、国家がモロに踏み込む場面だからです。

 

子曰く、

人の恋路をジャマするヤツは、馬に蹴られて死んじまえ。


 

 ……おなじみ「論語」より引用させていただきましたが、今に孔子のバチが当たりますが、私たちの恋愛感情に対して国家の規制を発動させる場面は、できるだけ抑制してもらわなければ困ります。

 だって、憧れの女の子が住んでるマンションがね、見える公園に寄ってね、なんとなくボーッと座ってるとか。 暗くなっても部屋の明かりが付かないので、懲りて帰るとか。 留守電に「あのー、今度おもしろそうな映画があるので…… 今度時間があれば観に行かないかなと、思って電話しました」って身勝手に吹き込むとか。

 ……やったことないスか? 皆さん! わたしゃ、キモイっスか?

 いーや! オレは誰にも謝らん。 たしかに極めてヘタクソだったのは認めるが。

 異性の目から見て、ちょっと「キモイ」言動があったからといって、いちいち110番に通報するような風潮がはびこれば、まぁ、潔癖な人々にとってはキレイキレイな理想郷なんでしょうが、そんなもん、究極につまらん、生き甲斐の欠落した社会だと断言します。

 そのことを前提に、条文をご覧ください。

 

 

◆ ストーカー行為等の規制等に関する法律 第2条(定義)
1 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
  一  つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
  二  その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  三  面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
  四  著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
  五  電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。
  六  汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
  七  その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  八  その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。
2  この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。

 

◆ 東京都 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 第5条の2 (つきまとい行為等の禁止)
 何人も、正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、不安を覚えさせるような行為であつて、次の各号のいずれかに掲げるもの(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第二条第一項に規定するつきまとい等及び同条第二項に規定するストーカー行為を除く。)を反復して行つてはならない。この場合において、第一号及び第二号に掲げる行為については、身体の安全、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下この項において「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限るものとする。
  一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
  二 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
  三 連続して電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。
  四 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
2 警視総監又は警察署長は、前項の規定に違反する行為により被害を受けた者又はその保護者から、当該違反行為の再発の防止を図るため、援助を受けたい旨の申出があつたときは、東京都公安委員会規則で定めるところにより、当該申出をした者に対し、必要な援助を行うことができる。
3 本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

 


 いずれも「電話をかけて」とか「ファクシミリ」としか書かれてませんねぇ。 メールはどうよ。

 もし、「『電話をかけて』には、メールを出す行為をも含むんだぜ」などという勝手な類推解釈をほどこして取り締まることが起これば、ふつうに生活している国民にとって不意打ちとなり、気軽にメールなんて出せなくなります。

 「じゃあ、チャットは? 手旗信号は? 気になるあのコに毎晩送ってる熱いテレパシーは?(←キモイ) どれぐらいの頻度までゆるされるの?」と、余計な心配をさせられ、日常生活が萎縮させられる可能性が無きにしもあらず、なのです。

 この熱い想いを強権的に取り締まりたければ、あらかじめ、ちゃんと書いとけ。

 というより、条文に書けるもんなら書いてみろ、コラ。

 ……これを難しいコトバで「罪刑法定主義」と呼びます。

 

 

◆ 奈良県 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 第10条 (電話等による嫌がらせ行為等の禁止)
 何人も、正当な理由がないのに、電話その他の電気通信の手段、文書又は図画により、他人に対し、反復して、虚偽の事項、卑わいな事項等を告げ、粗野若しくは乱暴な言語を用いて、又は電話で何も告げず、著しく不安又は迷惑を覚えさせるような行為をしてはならない。

 

 あっ、しまったぁ! 奈良県には、まんまと書かれてしまったぁぁ!

 この条文にいう「電気通信の手段」の文言は、まさしく電子メールの添付ファイルも含む!

 一方で、手旗信号やテレパシーは含まないと読み取れます。

 また、添付されたわいせつ画像は、「卑猥な事項等」に含む趣旨なのでしょう。 で、それを送信するのは「告げ」に含むってことでOKなんですかね? そうなんですかね?

 ただ、「反復して」という要件も付いてますね。 1回のみの送信だった場合、「間違いメールだった」という言い訳がありうるのを考慮してのことでしょうか?

 ともかく、失笑しまうような下半身の写メを1回送られただけじゃ、警察は動いてくれないみたいですけど、いちおう交番で相談しておくのは構わないかも。

 こういう条文が備えてある迷惑防止条例って、奈良以外の都道府県にもあるんですかねぇ? だれか、し・ら・べ・て

 

 

 そんな他力本願はともかくとして、本日、東京よりもずっと寒かろう、日本海側の豪雪地帯、富山市に向かいます。

 こないだ「来週、富山に行くけん。さむそー!」と、実家の母にメールしたら、いきなり電話かかってきて、「あんた富士山行くと? ちょっと大丈夫ね?」と……。

 相変わらずお元気そうで、なによりでございます。母上さま。

 

 シロートが、真冬の富士山に登ったら、

  ……いくら楽観的に見積もっても、死にます。

 

 わたしゃ、肉親すらネタにしてますぜ。 ふふふふふ

 

 この母親の遺伝子を受け継いでいるので、きっと私が弁護士になってたら……、つまらんミスを連発してたんでしょうなぁ。 それを思えば、結果オーライだったのかも。

 半面、このオッチョコチョイの女性から育てられて影響を受けているからこそ、少しは他人様に「おもしろいですね」と言ってもらえるコトが書けるのかなぁ……とも思ってます。

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